糖尿病は認知症のリスクを高める|血糖値と脳の深い関係

糖尿病は、血管や腎臓、目だけの病気ではありません。

近年では、  

  糖尿病や高血糖が認知症のリスクとも深く関係している

ことが分かってきています。

 

もし貴方が、

  • 血糖値が高い
  • HbA1cが高い
  • 糖尿病予備群である
  • 食後高血糖がある
  • 肥満やメタボがある

このような状態では、将来の認知機能低下にも注意が必要です。

 

✔ 糖尿病と認知症で分かってきたこと

  • 糖尿病では認知症リスクが高くなる
  • HbA1cが高い人ほど認知機能が低下しやすい
  • 糖尿病予備群でも認知機能低下が始まる可能性がある
  • 高血糖は脳血管障害にも関係する
  • 血糖管理により認知症リスクを下げられる可能性がある

 

今回は、糖尿病と認知症の関係について、これまで紹介してきた論文や研究報告をもとに分かりやすく整理します。

 #本記事は20年来糖尿病の治療薬開発に従事してきた医学博士けんそうが執筆しています

 

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糖尿病では認知症のリスクが高くなる

糖尿病と認知症は、全く別の病気のように思えます。

しかし、多くの研究で、

糖尿病では認知症のリスクが高くなることが報告されています。

 

認知症には幾つかの種類がありますが、代表的なのは、

  • アルツハイマー病
  • 脳血管性認知症

ですが、

糖尿病は、この両方に深く関係しているのです。

 

脳血管性認知症と糖尿病

脳血管性認知症は、脳梗塞や脳卒中などによって脳の血流が低下し、  脳細胞が死滅して認知機能が低下する認知症です。

 

糖尿病は血管の病気です。

高血糖が続くと血管壁が傷つき、脳梗塞や脳卒中が起こりやすくなるのです。

脳梗塞などに至らずとも、脳の血流が悪くなったり、小さな梗塞や出血が積み重なったりすると、認知機能の低下につながります。

 

糖尿病性合併症が怖い

 

アルツハイマー病と糖尿病

アルツハイマーはアミロイドβなどの異常な蛋白が脳細胞に蓄積して脳細胞を死滅させることが大きな原因ですが、

アルツハイマー病についても、糖尿病との関係が注目されています。

 

アルツハイマー病は、

「脳の糖尿病」と表現されることもあります。

脳細胞が正常に働くためには、大量のブドウ糖が必要ですが、

アルツハイマー病では脳がブドウ糖を取り込むために必要なインスリンの効き目が悪くなる「インスリン抵抗性」が増していることが明らかになったからです。

糖尿病で血糖値が高いと認知症になるリスクが高い

 

 

血糖値が高いと脳に何が起こるのか?

血糖値が高い状態が続くと、体の中ではさまざまな変化が起こります。

特に重要なのは、

  • 血管障害
  • 酸化ストレス
  • 慢性炎症
  • インスリン抵抗性

です。

これらは、脳にも悪影響を及ぼします。

 

脳は非常に多くのエネルギーを使う臓器です。

そのため、血流や糖代謝の乱れは、脳機能に大きく影響します。

高血糖が続くと、脳の細い血管が傷つき、必要な酸素や栄養が届きにくくなります。

さらに、インスリン抵抗性が悪化すると、脳内での糖利用や神経細胞の働きにも影響が出る可能性があります。

 

つまり、

糖尿病は「血糖値が高いだけ」の病気ではなく、血管・神経・脳にも影響する全身の病気なのです。

 

HbA1cが高い人ほど認知機能が低下しやすい

血糖値と認知機能の関係を見るうえで重要なのが、HbA1cです。

 

HbA1cは、過去1〜2か月程度の血糖状態を反映する指標です。

健康診断での空腹時血糖値とは異なり、長期間の血糖コントロール状態を知ることができる指標です。

 

最近の研究では、

糖尿病の人だけに限らず、

HbA1cが高めの糖尿病予備群でも認知機能が低下しやすい

ことが明らかになっています。

 

これは非常に重要なことです。

なぜなら、

糖尿病と認知症のリスクは、

「糖尿病になってから急に高くなる」のではなく、

糖尿病予備群の段階から認知症のリスクが高まっている可能性があるからです。

 

つまり、

健康診断で「まだ糖尿病ではありませんがHbA1cが高めです」と言われた場合にも既に認知症の注意が必要だということです。

 

  👉 HbA1cが高いと認知症のリスクが高い

 

食後高血糖と血糖変動も脳に影響する可能性がある

近年では、空腹時血糖やHbA1cだけでなく、

食後高血糖(グルコーススパイク)

が重要視されています。

食後高血糖ともいわれるグルコーススパイクは、食後に血糖値が急上昇する状態のことです。

健康診断の「空腹時血糖」やHbA1cでは見つかりにくいため、見逃されやすいのが特徴です。

 

血糖値が急上昇・急下降する血糖変動は、血管への負担を大きくすると考えられています。

脳の血管も例外ではありません。

そのため、認知症を考えるうえでも、

これからは単に「血糖値が高いか低いか」だけではなく、 

 血糖値がどのように変動しているか

を見ることが重要になってきます。

 

 👉 グルコーススパイクとは何か?

 

アルツハイマー病とインスリン抵抗性

アルツハイマー病では、脳内に異常な蛋白質であるアミロイドβやタウ蛋白が蓄積し、脳細胞にダメージを与えることが知られています。

 

糖尿病とアルツハイマーの関係で注目されているのが、

インスリン抵抗性です。

 

インスリン抵抗性とは、インスリンが効きにくくなる状態です。

インスリンが効きにくくなると、血糖値が下がりにくくなるため、膵臓はさらに多くのインスリンを分泌しようとします。

この状態が長く続くと、糖代謝だけでなく、脳にも悪影響を及ぼす可能性があります。

 

分泌されたインスリンはインスリン分解酵素によって分解されますが、

最近の研究で、

インスリン分解酵素はアミロイドβの分解にも関係することが明らかになっています。

高血糖状態で高インスリン状態が続くと、

インスリン分解酵素はアミロイドβの分解にまで手が回らなくなると言うのです。

アルツハイマー病は脳の糖尿病といわれる理由を知っていますか

このあたりは少し専門的ですが、一般向けには、

「糖尿病やインスリン抵抗性は、脳の老化にも関係する可能性がある」

と理解すると分かりやすいと思います。

 

  👉 アルツハイマー病とインスリン分解酵素

 


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糖尿病は脳の血流にも影響する

糖尿病は、高血糖が血管壁を傷害する病気ですから、当然、脳の血管や血流にも影響が出ます。

高血糖状態が続くと、脳の血管壁が傷つき、脳の血管でも動脈硬化が進みやすくなります。

そして、脳梗塞や脳卒中へと進行し、脳血管性認知症とも深く関係します。

さらに、

糖尿病では、血管の傷害だけだけなく、脳の血流調節能力をも低下させ、認知機能や日常の生活動作の低下に関わっている可能性も報告されています。

つまり、糖尿病による認知機能低下は、アルツハイマー病だけで説明できるものではありません。

  • 脳血管障害
  • 脳血流低下
  • インスリン抵抗性
  • 慢性炎症
  • 酸化ストレス

など、複数の要因が重なって惹起されると推察されています。

  👉 糖尿病では2年で脳機能が衰える?

 

肥満やメタボも認知症のリスクに関係する

糖尿病と認知症の関係を考えるうえで、肥満も重要な因子です。

 

肥満は糖尿病の大きなリスク因子ですが、それだけではありません。

中年期の肥満は、将来の認知症リスクとも関係すると報告されています。

肥満では、

  • インスリン抵抗性
  • 慢性炎症
  • 脂質異常
  • 高血圧

などが起こりやすくなります。

これらはいずれも、糖尿病や血管障害、認知症リスクと深く関係しており、肥満は糖尿病を介して、あるいは肥満そのものが認知症に関連していると考えられているのです。

 

 👉 肥満は糖尿病だけでなく認知症のリスクも高める

 

つまり、認知症予防を考えるうえでも、体重管理や食事療法、運動療法は非常に重要なのです。

 

血糖値を下げれば認知症のリスクも下がるのか?

ここで重要なのは、糖尿病と認知症の関係は「怖い話」で終わらないという点です。

 

最近の研究では、

糖尿病患者において、 

 適切な血糖管理の期間が長いほど認知症リスクが低い

ことが明らかになっています。

 

これは非常に大きな意味があります。

もちろん、血糖値を下げれば認知症を完全に防げるという意味ではありませんが、

糖尿病であっても、血糖値を適切に管理することで、将来の認知症リスクを下げられるということです。

 👉 糖尿病でも血糖値を下げれば認知症リスクが下がる?

 

糖尿病であっても、適切な血糖管理をおこなえば、

  • 失明(網膜の血行障害)
  • 人工透析(腎機能低下)
  • 足切断(神経障害)

などの重篤な糖尿病合併症を遠ざけ、

認知症のリスクを下げることもできるのです。

 

認知症予防で重要なのは「血糖値」だけではない

認知症予防というと、脳トレやサプリメントを思い浮かべる人も多いかもしれません。

しかし、糖尿病との関係から見ると、もっと基本的な生活習慣が重要です。

  • 食後高血糖を防ぐ
  • HbA1cを適正に保つ
  • 肥満を防ぐ
  • 適度に運動する
  • 睡眠を整える
  • 高血圧や脂質異常も管理する

これらはすべて、糖尿病対策であると同時に、脳を守る生活習慣でもあります。

特に最近では、睡眠不足や睡眠障害も血糖変動と関係することが分かってきています。

血糖値、睡眠、運動、肥満、血管障害は、それぞれ別々ではなく、互いにつながっていると考えられています。

 

  👉 睡眠不足は食後高血糖を悪化させる

 

糖尿病患者では認知機能の低下が自己管理にも影響する

糖尿病と認知症の関係で、もう一つ重要な問題があります。

それは、「認知機能が低下すると糖尿病の自己管理が難しくなる」ということです。

たとえば、

  • 薬を飲み忘れる
  • インスリン注射を忘れる
  • 食事管理が難しくなる
  • 低血糖に気づきにくくなる

といった問題が起こります。

 

その結果、血糖コントロールがさらに悪化し、認知機能にも悪影響を及ぼすという悪循環が起こる可能性があるのです。

身近に高齢の糖尿病患者がおられる場合には、認知機能のチェックも重要です。

 

 👉 糖尿病患者の自己管理と認知機能

 

まとめ|血糖管理は脳を守る対策でもある

糖尿病は、血糖値が上がるだけの病気ではありません。

高血糖やインスリン抵抗性の悪化は、

血管、神経、腎臓、目だけでなく、脳にも影響する可能性があるのです。

特に、

  • HbA1cが高い
  • 食後高血糖がある
  • 肥満がある
  • 睡眠不足が続いている
  • 運動不足である

という人は、将来の認知機能低下にも注意が必要です。

認知症予防のために特別なことを始める前に、まずは血糖管理を見直すことが大切です。

 

 

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療を目的としたものではありません。認知症や糖尿病が心配な場合には、医療機関へご相談ください。

 

最終更新日:2026年5月 初掲載日:2019年1月

 

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