糖尿病の食事療法

結論

糖尿病の改善には食事療法が最も重要とされています

特に、
糖質(炭水化物)のコントロール
食後高血糖(グルコーススパイク)の抑制
が重要なポイントです。

はじめに

糖尿病の治療には、

  1. 食事療法
  2. 運動療法
  3. 薬物療法

の3つがありますが、

日本糖尿病学会厚生労働省も明確に述べているように、

まずは食事療法と運動療法が基本なのです。

しかし、

糖尿病患者の半数が「食事管理」に苦しんでいるとの実態も報告されています。

しかし、糖尿病の食事療法はコツさえ理解すればそんなに難しいことではないのです。

この章では、

  • どうして糖尿病では食事療法が必要なのか
  • 糖尿病の食事療法はどうすれば良いのか

をできるだけ簡単にご説明したいと思います。

 

 

糖尿病の食事療法とは|なぜ食事療法が必要なのか?

■ 糖尿病の治療は、食事療法、運動療法、薬物療法の3つ
■ 血糖値が高いといわれたらまずは食事療法から始める
■ 治療薬を飲んでいても食事療法を併用した方が良い

病気であれば  「医師の診察を受けて薬を服用」  というのが一般的な流れですが、

日本糖尿病学会の「糖尿病治療ガイド」では、

糖尿病治療の土台はまず食事療法と運動療法であり、

薬は食事療法と運動療法で十分にコントロールできないときに使われる。

としています。

 

厚生労働省でも、

糖尿病の治療では食事療法と運動療法を基本とし、それらで改善が見られない場合に薬物療法を導入する。

としさらに、

米国糖尿病学会(ADA)でも、

糖尿病の診断後には食事療法と運動療法と同時に、あるいはすぐに薬物療法をおこなう

としており、

糖尿病の治療において食事療法は欠かせない治療法の一つなのです。

 

糖尿病食事療法|食事療法はなぜ必要なのか?

■ 食後高血糖を防ぐには食事療法が最も効果的なのです

糖尿病では血中の糖が高くなる病気ですが、

特に食後の血糖値が高くなる食後高血糖(グルコーススパイク)が体に悪影響を与えるのです。

 

健康な人では、食後の血糖値は緩やかに上がりやがて下降するのですが、

糖尿病や糖尿病予備軍の人では、急激に上昇し、急降下するスパイクのような変動をするため、グルコーススパイクと呼ばれているのです。

 

糖尿病の予防はグルコーススパイクを抑えること

 

日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン 2024」でもグルコーススパイクを抑えることが重要だとして、

食後2時間の血糖値 を140mg/dL未満」に抑えること

を推奨しています。

 

グルコーススパイクは体に様々な悪影響を及ぼす

グルコーススパイクは、

  • 酸化ストレスの爆発的増加
  • 血管内皮機能の障害

などを引き起こし、

  1. 筋梗塞、脳梗塞、動脈硬化の誘因
  2. 糖尿病合併症を引き起こす

など、

あなたの健康に悪い影響をあたえる可能性があるのです。

 グルコーススパイクの悪影響とは ⇒ グルコーススパイクは心筋梗塞や認知症の原因

 

糖尿病食事療法|なぜ糖質制限が効果的なのか?

■ 炭水化物の摂取を減らす糖質制限は食後高血糖を防ぐからです

糖尿病の治療では、食事療法、運動療法、薬物療法のいずれでも血糖値を下げることを目標としています。

血糖の主な由来は、

  1. 食事で摂取(食事由来)
  2. 肝臓のグリコーゲンの分解(空腹時や運動時)
  3. 糖新生(それでも糖が不足したとき)

の3つですが、食事後の急激な血糖上昇であるグルコーススパイクは食事に起因しているのです。

 

食事に含まれる炭水化物は、体内で分解されブドウ糖になり小腸から吸収されて血糖値が上がるのです。

健康な人では直ぐに膵臓からインスリンが分泌され細胞に取り込まれ血糖値が定に保たれますが、

糖尿病や糖尿病予備軍などインスリンの働きに問題がある人ではグルコーススパイクがみられるのです。

  血糖値はどうして上がるのか ⇒ 炭水化物は血糖値を上げる

 

糖質制限とは炭水化物の摂取を減らすこと

従来の糖尿病の食事療法では、

摂取カロリーを制限する「カロリー制限」が主流でしたが、

2008年に発表されたDIRECT試験(DiRECT: Diabetes Remission Clinical Trial)において、

  • 低脂肪食
  • 地中海食
  • 低炭水化物食(糖質制限)

の3つの食事療法を比較したところ、

オリーブオイル、ナッツ、魚、野菜を中心とした地中海食では約46%で糖尿病が寛解したことが判明したのです。

  DIRECT試験で何が分かったのか ⇒ DIRECT試験は糖尿病食事療法の原点

 

さらに、

低炭水化物食(糖質制限食)でも、

  1. 短期間での強力な減量効果
  2. 脂質代謝の劇的な改善
  3. インスリン感受性の改善が良好

という点で非常に高く評価されたのです。

 糖質を摂りすぎるとどうなる? ⇒ 炭水化物の摂りすぎは糖尿病のリスクが上がる

 

それらのことから、

グルコーススパイクなど血糖値の上昇を抑える最も直接的な対策として、

糖質(炭水化物)の摂取量を減らす糖質制限が注目されるようになったのです。

Dietary carbohydrate (amount and type) in the prevention and management of diabetes

     糖質制限でグルコーススパイクが抑えられる ⇒ Diabetes Care, 2004

 

食後高血糖は糖質制限で下がるのか?

食後に血糖値が上がります。

炭水化物が多い白米を食べれば血糖値はグンと上がりますが、
蛋白質である焼き肉を食べても血糖値はほとんど変化しません。

 

  血糖値を上げるのはどちら ⇒ おにぎりとステーキのどちらが血糖値を上げる?

 

食後高血糖(グルコーススパイク)は炭水化物の摂取の影響が大きいのです。
糖尿病患者ではインスリン分泌や糖を体内に取り込むインスリン感受性が悪くなっているために食後の糖を処理できなくなっているからなのです。

 

米国糖尿病学会ADAが毎年発行するガイドライン『Standards of Care in Diabetes (2026年版)』でも、

炭水化物の総摂取量が、食後血糖の応答を予測する最も重要な因子である

としています。

Effects of different proportion of carbohydrate in breakfast on postprandial glucose excursion in normal glucose tolerance and impaired glucose regulation subjects

    食後高血糖はどうして起こるのか ⇒ Diabetes Technol Ther . 2013 Jul;15(7):569-74.

 

糖尿病食事療法|食事療法で食べて良い物と悪い物があるの?

■ 食事療法では特に食べて悪いものはないが内容と量に注意する必要がある

食べ物は、三大栄養素である、

  1. 炭水化物(ご飯、パンなど)
  2. 蛋白質(肉、魚など)
  3. 脂質(バター、脂など)

に分けられます。

糖尿病の食事療法では基本的に食べて悪い物や禁止されている食品はありませんが、

できるだけ、

  • 血糖値を上げる炭水化物を減らす
  • 血糖値を上げにくい炭水化物を食べる

ことによりより大きな効果が期待されるのです。

GI値の低い炭水化物を食べる方が良い

食後の血糖値を上げるの主に炭水化物ですが、
GI値の小さい炭水化物では血糖値の上昇が穏やかです。

 

GI値(グリセミック・インデックス)とは、

1981年にトロント大学のデヴィッド・ジェンキンズ博士らによって提唱されたもので、

ブドウ糖を摂取した時の血糖値の上昇度を「100」とし、
それぞれの食品がどれくらい血糖値を上げるかを相対的な数値で表したものです。

豆類や果物もGI値が高い

一般的に、GI値の大きさによって食品は3つのグループに分けられ、

GI値の小さい食品ほど血糖値を上げにくいのです。

GI値とは糖に変わる早さ

  GI値と食後高血糖の関係は ⇒ 糖尿病の血糖値はGI値の影響が大きい

 

ですから、糖尿病の食事療法ではGI値の小さい炭水化物を摂るようにすることがコツなのです。

白米を玄米や麦ご飯に変える、パンなら全粒粉を選ぶといった選択が効果的なのです。

 

  GI値の小さい炭水化物を食べるとどうなる? ⇒ 玄米糖尿病には玄米や全粒穀物・全粒粉が良い

 

  • 主食である白米やパンを少なくして野菜や肉魚をしっかり食べる
  • 主食の白米やパンを玄米や全粒粉パンに替える

という工夫です。

 

 糖尿病の食事療法|食べる回数と食べる順番は血糖値に関係ある?

■ 1日3回きちんと食べる 
■ 食べる順番を守る(野菜から食べる)

食べる回数は1日三回が理想的です

「制限」という言葉から、

  • 食事の量を制限する
  • 食事の回数を制限する

と連想してしまうかもしれませんが、

 

糖尿病の食事療法では、
・1日3回(朝食、昼食、夕食)を規則正しく
・バランスの良い食事内容

が推奨されているのです。

 

1日3回の食事よりも、1日2回、1回と食事回数が少ないほど食後の血糖値が高くなることが知られており、

日本糖尿病学会でも、

1日3食を時間を決めて規則正しく食べることで安定した血糖値の管理が期待できる

としています。

 

少し古い話になりますが、

堀江貴文さんが長野刑務所に1年9ヵ月収監されましたが、

低カロリーでGI値が低い「獄中麦メシ」を規則正しく3回食べることによって、

1年9ヵ月で95kgから65kgへ30kgの減量に成功したそうです。

 

  堀江さんの体重激減の理由は? ⇒ 堀江貴文やカルロスゴーンは刑務所で減量

 

食べる順番も大事:野菜から食べるのがコツ

さらにグルコーススパイクはちょっとした食べ方の工夫で抑制することが可能です。

皆さんも聞いたことがあるかと思いますが、

野菜から食べるベジファーストです。

野菜(ベジタブル)や海藻、きのこなどの食物繊維から先に食べることで糖の吸収を緩やかにすることができるのです。

 

「食べる順番と血糖値」を調べた研究論文があります。

 Eating order diet reduced the postprandial glucose and glycated hemoglobin levels in Japanese patients with type 2 diabetes

    科学的根拠を確認する ⇒ 原著論文

日本の糖尿病患者を対象に、野菜を先に食べる(ベジファースト)を2年間継続したとき、

野菜の食物繊維が糖の吸収スピードを遅らせることで、

  • グルコーススパイクが有意に改善
  • HbA1cも低下した

したことが実証されているのです。

 

食事療法|食事療法による血糖値の変化を自分で確認できる?

■血糖値の変化は自分でも調べることができます

血糖値は、通常、医院で採血をして調べるものとお思いでしょうか、自分で調べることも可能なのです。

アボット社が販売しているフリースタイルリブレは医療現場でも使われている非観血的血糖測定デバイスです。

 

再びフリースタイル・リブレを購入して食後高血糖の測定を開始

 

糖尿病患者であれば一部保険適応になりますが、誰でも8,000程度でAmazonでも購入できます。

私も、何を食べるとどれだけ血糖値が上がるかを調べたことがあります。

 

  自分で血糖値の変化を調べる ⇒ フリースタイルリブレで食後血糖値を測定

私の場合には、カレーライスを食べたときに一番食後血糖値が上り、天丼でも食後血糖値が急上昇しました。

白米を玄米カレーライスにした時には食後血糖値はそれほど上がりませんでした。

 

食後30分以内に軽い運動をすればグルコーススパイクを抑えることができると報告されていますが、

Advice to walk after meals is more effective for lowering postprandial glycaemia in type 2 diabetes than advice to walk at any time: a randomised crossover study

   食後の運動でグルコーススパイクが低下する ⇒ 原著論文

 

自分で確認したところ確かに食後高血糖の上昇が抑制されました。

   食後の運動は本当に効果があった ⇒ 食後の運動で食後の血糖値が下がった

 

最近では血糖値を測定できるスマートウオッチも出ていますが、精度的にまだ問題があるようですが、

「実際に何をどれだけ食べると血糖値はどう変化するか」を調べることによって食事療法のモチベーションが上がりますよね。

 

糖尿病の食事療法|まとめ

糖尿病の食事療法では、

・糖質のコントロール
・食後高血糖の抑制
・継続

が重要です。

特に、グルコーススパイクを抑えることが、合併症予防において重要とされています。

血糖値が高くても体にはほとんど異常を感じないことが多いのですが、

高血糖状態が長く続くと、微細な血管が障害され、

  1. 糖尿病性神経障害
  2. 糖尿病網膜症
  3. 糖尿病性腎症

という合併症が引き起こされるのです。

  • 糖尿病が原因で下肢の切断に至る人は年間約1万人以上、
  • 糖尿病が原因で失明する人は、日本国内で年間約3,000人〜5,000人
  • 糖尿病が原因で人工透析を始める人は年間約1.4万〜1.5万人

もいるのです。

糖尿病の食事療法はけっして難しいものではありませんが、「継続」が必要です。

 

本サイトの主な情報源

このサイトでは主に以下の情報源から情報を収集しています

政府機関関係

厚生労働省 公式サイト(糖尿病対策)

e-ヘルスネット(糖尿病)

糖尿病情報センター

学会関係

日本糖尿病学会

日本糖尿病協会

日本糖尿病医療学学会

米国糖尿病学会 (American Diabetes Association )

欧州糖尿病学会 (European Association for the Study of Diabetes )

医療・科学ニュースサイト関係

糖尿病リソースガイド

糖尿病ネットワーク

Diabetes Daily 

Healio – Endocrine Today

Medscape Diabetes & Endocrinology

文献検索関係

メディカルオンライン

J-STAGE

PubMed 

 

本サイトの運営者情報

本サイトは、糖尿病に関する情報を科学的根拠に基づいて解説することを目的としています。

サイト運営者のけんぞうは、現在は臨床からは離れていますが、政府機関や民間の研究所にて糖尿病治療薬の研究開発に従事してきました。

確かに近年では糖尿病に有効な治療薬も見出されていますが、生活習慣病である糖尿病では食事療法は欠かせないのです。

しかし、糖尿病患者の多くが食事療法を疎かにしたり、食事管理に苦しんでいるということから、

糖尿病の食事療法に関する本サイトを立ち上げました。

糖尿病の食事療法は仕組みさえ理解すればそんなに難しいことではないということを分かって貰えれば幸いです。

 

最終更新日:2026年3月

サブコンテンツ

このページの先頭へ