糖尿病と認知症の関係
以前、NHKテレビで、
「炭水化物の食べ過ぎは脳内がインスリン過剰になりアルツハイマー病を招く」という放送があったんですが、
このサイトを読んでおられる方から、
「糖尿病とアルツハイマー病は関係があるのですか?」
という質問があったのですが、
今回は、
「糖尿病とアルツハイマー病の関係」について調べてみました。
ためしてガッテンでの放送内容
調べてみますと、「ためしてガッテン」で糖尿病とアルツハイマー病について取り上げられたのは今から5年ほど前のようです。
2015年1月に、大阪大学の森下竜一氏が、「アルツハイマーは脳の老尿病だった」
という本を出されて話題になったのですが、今から5年も前に同じような話題が取り上げられていたのですね、、、。
NHKアーカイブを調べてみますと、
放送内容は、「炭水化物の食べ過ぎによる脳の中の過剰なインスリンがアルツハイマー病を招く」ということのようです。
タイトルからは、「インスリンがアルツハイマー病の原因」という意外性でアピールしたようですが、本当の原因は、「インスリン抵抗性」だということが分かってきています。
アルツハイマー病の原因
アルツハイマー病の原因は、
- アミロイドβという蛋白質が脳内に蓄積されて脳神経細胞を壊してしまう
- 脳神経細胞内のタウ蛋白質が脳内に溜まり脳神経細胞を萎縮させてしまう
ということで間違いないようなのですが、
- なぜ、アミロイドβ蛋白質が蓄積されるのか?
- なぜ、タウ蛋白質が脳神経細胞内に溜まるのか?
ということが明確になっていないことから、
なかなか有効な治療薬が開発されないのです。
ためしてガッテンでは、
2つのメカニズムにインスリンが関わっていて、
「インスリン分解酵素がアミロイドβをするのだが脳内に過剰なインスリンがあればインスリン分解を優先するのでアミロイドβの分解がストップするという仮説がある」と紹介したようです。
また、
「脳中のインスリン抵抗性が増加するとグリコーゲン合成酵素キナーゼ3(GSK3)を過剰に活性化させ、タウ蛋白を変性させアミロイドβの蓄積も促進する」ということも紹介しています。
要するに、
「過剰なインスリンがアルツハイマー病の原因の可能性がある」ということで、
「炭水化物の摂りすぎがアルツハイマー病を引き起こしているのではない」のですから、
誤解のないようにする必要がありますが、
糖尿病とアルツハイマー病は密接な関係にある
ということは間違いありません。
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糖尿病とアルツハイマー病の関係
残念ながら、2型糖尿病とアルツハイマー病との関係は完全には解明されていません。
認知症を引き起こす疾病は200~300もありますが、
認知症の大半は、
- アルツハイマー病
- 脳梗塞などを原因とする脳血管性認知症
です。
糖尿病と認知症の関係
糖尿病は高血糖の持続により全身の血管が傷害される病気で、その結果、合併症が引き起こされることが問題です。
糖尿病の三大合併症としては、
- 糖尿病性神経障害
- 糖尿病性網膜症
- 糖尿病性腎症
が上げられますが、いずれも血管障害に起因する合併症です。
詳しく見る >>> 糖尿病で自覚症状がでたら手遅れ
当然、脳の血管も傷害され、痴呆症を誘引する原因になることは容易に想像がつきます。
糖尿病患者は痴呆症になりやすい
ということは多くの疫学調査の結果から間違いないことなのですが、
最も有名な研究は、2011年に九州大学の研究者グループがおこなった「久山町スタディ」です。
この調査では、
糖尿病患者は糖尿病でないヒトより2倍も認知症になりやすい
という結果が得られています。
海外の疫学調査でも、「糖尿病のコントロールの程度と認知症との関連」を裏付ける研究など多くの成績があり、「糖尿病が認知症との関係がある」ことはもはや間違いのないことです。
糖尿病はなぜアルツハイマー病を引き起こすのか
早朝空腹時の血糖値がそれほど高くなくても血中インスリン濃度が高いとアルツハイマー病の発病リスクが高くなるといわれています。
このことは、
糖尿病におけるアルツハイマー病の発症は、インスリン抵抗性と関係があることを示唆しています。
さらに、高血糖は炎症と活性酸素を増加させることから、アルツハイマー病のリスク因子でもあります。
糖尿病とアルツハイマー病は密接な関係にあることが分かってきましたが、残念ながらその因果関係は完全には解明されていません。
- インスリン分解酵素のアミロイドβ分解が低下
- 高血糖が終末糖化産物(AGEs)を増やしアミロイドβ沈着や、タウ形成に関与
- 高血糖が脳内活性酸素を増加させる
などによると推察されています。
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インスリン分解酵素を増やす
糖尿病とアルツハイマー病の発症の関係は間違いなく関連性があるようです。
しかし、その原因は明確でありませんが、「インスリン分解酵素」が関与していることが明らかになっています。
インスリン分解酵素の一つに、ネプルライシンという酵素があります。
マウスを用いた実験では、脳内にネプリライシンを注射することによりアルツハイマー病が改善することが明らかになっています。
しかし残念ながら、ネプリライシンは体内で作られる酵素で、食品や薬として摂取することは出来ないのです、、、、
ネプリライシンは加齢により産生が減少し、60歳を過ぎた頃から体内で生産量が減少することが知られています、、、。
しかし、有酸素運動がネプリライシンの効果を増大することが分かっています。
1日1時間程度のウオーキングが効果的なのです。
アルツハイマー病に良いとされている食品は、
- 青魚(サバ、いわし、ブリ、サンマ)
- お茶(カテキン)
- ビタミンE(植物油、魚卵、ナッツ類)
- ざくろ、赤ワイン
- うこん(ターメリック)
などです。
青魚の油に多いEPAやDHAは、脳に必要な油脂としてサプリメントも多く販売されていますが、脳に必要なだけでなく、血中脂質のコレステロール低下作用もあり、血圧を下げて血管をも保護します。
アルツハイマー病の患者は飽和脂肪酸の多い肉食中心の食生活の傾向が強いことは各国の研究で指摘されているのです。
野菜や果物を多く摂ることもアルツハイマー病を予防する効果があります。
青魚に加えて豆類や緑葉の野菜、ナッツ類、オリーブオイル、精白度の低い穀類、それに赤ワインの、地中海型食生活が痴呆症にも糖尿病にも良いのです。
さらに、インドには痴呆症が少ないのですが、これにはインド料理で使うターメリックが影響していると言われています。
糖尿病と認知症は密接な関係にあるのです。
糖尿病の予防はアルツハイマー病の予防でもあるのです。
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