運動量が多いほど糖尿病網膜症のリスクが低下する

今日もご覧になっていただきありありがとうございます。

臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた けんぞう です。

糖尿病治療薬の開発を行っていた私が言うのも何ですが、

日本糖尿病学会厚生労働省も述べるように、

糖尿病の治療では食事療法と運動療法が基本なのです。

今日も科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝えいたします。

 

はじめに

糖尿病網膜症は糖尿病の合併症ですが糖尿病網膜症の患者は年々増加しています。

国内の糖尿病網膜症の患者は毎年3,000人ずつ増加し糖尿病網膜症の患者総数は約 300万人だといわれています。

そして、毎年3,000 人が糖尿病網膜症で失明しているのです。

糖尿病網膜症の治療技術の進歩により失明を回避できる割合も上がっているのですが、糖尿病網膜症は中途失明原因の第1位を占めています。

若い時期に糖尿病を発症すると糖尿病網膜症のリスクが約 2倍高くなるのですが、

奈良県立大学の研究グループは、

身体活動量が高いほど糖尿病網膜症のリスクが低下したという研究報告を発表しました。

あなたは運動をしていますか?

 

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糖尿病網膜症とは

国内の視覚障害による身体障害者手帳の発行数は約 40 万人に上り、

毎年2万人の新規発行患者がいるのですが、そのうち糖尿病網膜症による失明者は約3,000人もいるのです。

やや古い資料ですが、厚生労働省糖尿病調査研究班による平成2年の合併症調査では、

50~60歳代の糖尿病患者の38.3%が網膜症を合併している

ことが判明しており約 300 万人が糖尿病網膜症を発症していると推定されているのです。

糖尿病網膜症のリスクを下げるには運動量を上げる

糖尿病網膜症は網膜の毛細血管の障害が原因

糖尿病網膜症は高血糖により網膜の血管に障害が起きることによって発症します。

網膜には細かい血管が密集していますが、血糖値が高い状態が続くと、

  • 血管壁がもろくなる
  • 血管の透過性が亢進する
  • 血管が破れたり閉塞したりする

ことによって、網膜への酸素や栄養の供給が不足し網膜の破壊がもたらされる疾患なのです。

 詳しく知りたい ⇒ 糖尿病網膜症の予防法

 

若い糖尿病患者ほど網膜症になりやすい

日本眼科医会の報告では、

糖尿病患者を8 年間にわたって追跡し糖尿病網膜症の発症を調べたところ、

糖尿病の罹病期間が6~15年の患者では、

  • 65 歳以上では糖尿病網膜症の発症が 27%
  • 40 歳未満では糖尿病網膜症の発症が 54%

で、

糖尿病網膜症のリスクげるには運動をすれば良い

若い時期に糖尿病を発症した人では2倍も糖尿病網膜症になりやすいと報告しています。

糖尿病患者の1/3は眼科を受診していない

さらに、平成14年度の厚生労働省の糖尿病実態調査によると、

糖尿病患者で眼科を受診して眼底検査を受けた人の割合は、

  • 男性  69.0%
  • 女性  70.8%

であり、約30%の糖尿病患者は眼科を受診していないことが分かっています。

さらに、

眼科を初診した糖尿病患者のうち、

初診5年後に眼科を再診した患者は43.8%

で、半数以上の患者が眼科受診を中断しているのです。

 


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運動量が多いほど糖尿病網膜症の発症が少ない

糖尿病網膜症の発症は糖尿病との罹病期間とも関係があり、糖尿病の罹病期間が長くなれば長いほど糖尿病網膜症を発症しやすくなるのですが、

糖尿病発症から15 年で約40%に糖尿病網膜症が発症する

といわれています。

糖尿病網膜症を発症するまでの期間は糖尿病発症後1~20年以上と幅広いのですが、平均すると15 年で約40%の糖尿病患者に発症するのです。

 

良県立医科大学の研究グループは、

運動量が多い人ほど糖尿病網膜症の発症リスクが低下する

という研究報告を発表しました。

Higher levels of physical activity are independently associated with a lower incidence of diabetic retinopathy in Japanese patients with type 2 diabetes: A prospective cohort study, Diabetes Distress and Care Registry at Tenri (DDCRT15).

   詳しく読む ⇒ 原著論文

この研究は、日本人の2型糖尿病患者を対象とした大規模研究により分かったものですが、

 

研究グループは、

奈良県の天理よろづ相談所病院で受診する網膜症を発症していない

  • 糖尿病患者 : 1,814人(平均年齢は65.5歳)

を対象に、

  • 身体活動量により5群に分類し
  • 2年間追跡した

のです。

 

その結果、

  • 追跡期間中に184人(10.1%)が糖尿病網膜症を発症

したのですが、

運動習慣がある群では運動習慣のない群より糖尿病網膜症の発症が有意に低い

ということが判明したのです。

 

これまでの研究で、

  1. 身体活動量が増えると心血管疾患の発症が低下する
  2. 2型糖尿病患者における身体活動量の減少は死亡率が上昇する

ということなどが分かっていたのですが、

糖尿病において運動量が減ると細小血管合併症の1つである糖尿病網膜症の発症リスクが増加することが明らかになったのです。

 


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糖尿病網膜症は網膜の毛細血管の傷害によるのですが、網膜の毛細血管の傷害は糖尿病予備群のときから始まっています

そして、糖尿病網膜症では初期にはほとんど自覚症状がないため眼科の受診が遅れ、糖尿病が発覚したときには糖尿病網膜症が重症化している場合も少なくないのです。

 

さらに、

眼科を初診した糖尿病患者うち、5年後に再度眼科を受診していた患者は43.8%で、半数以上の糖尿病患者は眼科受診を中断しているのです。

糖尿病網膜症を防ぐには、糖尿病と診断されたら定期的に眼科を受診し眼底検査を行うことが重要なのです。

 

糖尿病網膜症を予防するためには血糖値を下げることですが、

運動は糖尿病を改善すると同時に糖尿病網膜症をも予防するのです。

 

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