妊娠糖尿病は食事療法より授乳
今日もご覧になっていただきありがとうございます。
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた けんぞう です。
糖尿病治療薬の開発を行っていた私が言うのも何ですが、
糖尿病の治療では食事療法と運動療法が基本なのです。
今日も科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝えいたします。
はじめに
妊娠糖尿病は妊婦の10%位で見られます。
妊娠糖尿病の怖い点は、
貴女だけでなく貴女の赤ちゃんへも影響があることはもちろんですが、
分娩後も気を付けないと貴女が本当の糖尿病になってしまうことです。
分娩後に気を付けることは食事ですが、
食事療法よりももっと良い方法があるのです。
それは、母乳の授乳です!
妊娠糖尿病は分娩後の管理が重要
妊娠糖尿病とは妊娠中に発症する高血糖です。
糖尿病の罹病者は年々増加していますが、妊娠糖尿病も同じで、妊婦の12%が妊娠糖尿病になると言われています。
妊娠中の高血糖は貴女の赤ちゃんへの影響が大きいことから、医者の指示に従って血糖値をコントロールする必要があります。
詳しく見る ⇒ 妊娠糖尿病は胎児への影響が心配です
妊娠糖尿病は高確率で糖尿病になる
妊娠中に妊娠糖尿病になった人は、分娩後3~6ヵ月時点の検査で5.4%が糖尿病と診断され、25%の人で何らかの耐糖能異常が見られると報告されています。
その他の報告でも、妊娠糖尿病の人が分娩後1年以内に2.6~38%が糖尿病と診断され、産後5~16年には17~63%が糖尿病になると言われ、妊娠糖尿病になった人が糖尿病になる確率は非常に高いのです。
さらに、
糖尿病に限らず、妊娠糖尿病になった人が分娩後11年経過後(平均年齢40.6歳)にメタボリックシンドロームを発症率は27.2%と、正常妊婦の8.2%に比べて非常に高い確率でメタボリックシンドロームになるのです。
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妊娠糖尿病の食事療法
分娩後には赤ちゃんに気をとられて自分自身の健康管理や栄養管理を忘れがちですが、妊娠糖尿病になった人は、産後も定期的に耐糖能の検査を受けたり、食事や運動に気をつけていく必要があるのです。
糖尿病の治療の基本は、
- 食事療法
- 運動療法
です。
1日に摂取すべきカロリー量は、体重や活動量などで異なりますが、一般的に、妊娠中は妊娠前より1日につき300カロリー程度増やす必要がありますが、「赤ちゃんのため」との言い訳でついつい食べ過ぎてしまう傾向にあり、妊娠糖尿病の引き金になってしまいます。
また、妊娠糖尿病を防ぐには大量に食べることをせず、定期的な3回の食事と、数回の間食で必要エネルギーを摂るようにすることで、食後高血糖を抑え妊娠糖尿病の予防になるのです。
分娩後の食事療法
分娩後には妊娠糖尿病だった人もそうでなかった人も摂取エネルギーには気を配る必要があります。
特に、授乳している人は「授乳しているから」との言い訳で食べ過ぎる傾向にあります。
授乳期間中は、授乳するためにエネルギーを補うため食べる量を増やす必要がありますが、食べ過ぎに注意です。
母乳の場合は、
乳児の月齢や体重、体調などによって異なりますが、平均すると生後6ヵ月間は1日800 ml程度を飲むそうですが、母乳800mlのための必要なカロリー数は概ね500 kcalといわれています。
従って、
完全母乳で育児している期間は、貴女が必要なカロリー数に加えて500kcalが必要だということです
授乳に必要なカロリーは500kcal
成人女性の平均必要エネルギー量は1,800kcal程度ですから、500kcalは約1食分と言うことになります。
500kcalとはどんな食事になるのでしょうか?
外食で調べてみましたから、参考にしてください。
- やよい軒 : 鉄火丼(味噌汁付) 490Kcal
- すき屋 : 鉄火丼 並盛 510Kcal
- なか卯 : 親子丼 ミニ 456Kcal
- すき家 : 牛丼 ミニ 508Kcal
- サイゼリア : キャベツのペペロンチーノ 527Kcal
- ジョイフル : ミートソースボロニア風 463Kcal
500kcalって意外と量が少ないのです。
食べ過ぎに注意です。
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妊娠糖尿病には授乳が有効
妊娠糖尿病の人は、分娩後にも適切な食事療法を行わなければ将来的に糖尿病になる確率が非常に高いのですが、
妊娠糖尿病でも授乳を行うと糖尿病発症のリスクが低下する
という研究成果が発表されました。
原文を見る ⇒ ⇒ Breastfeeding May Reduce Risk of T2DM for Women With GDM
この研究を行ったのは、アメリカのカイザー・パーマネンテ北カリフォルニア病院の研究グループです。
研究では、
- 妊娠糖尿病と診断された959人の女性
- 出産後2年間にわたって追跡調査
を行ったのですが、
- 追跡期間中に、12%(113人)が2型糖尿病を発症
したのですが、
糖尿病を発症と授乳状況の関係を調べたところ、
- 完全母乳で育児した女性の糖尿病発症リスクは粉ミルクを使用した母親より54%低下
- 粉ミルクと母乳の混合栄養でも粉ミルクだけの母親より糖尿病の発症リスクが1/3以下に低下
授乳期間と糖尿病発症のリスクについては
- 授乳期間が10ヵ月以上だと2ヵ月未満より糖尿病リスクが57%低下
- 授乳期間が2~10ヵ月未満でも糖尿病発症のリスクは半減
まとめますと、
- 授乳を2カ月以上行うと出産後の糖尿病発症リスクが低下する
- 授乳期間が長くなるほど糖尿病発症リスクが低下する
ということが明らかになったのです。
母乳は糖尿病予防のためにも長い方が良い
仕事が忙しい、母乳が出ないなどの理由で母乳で育てたいと思っていてもできないヒトもおられるのですが、母乳の授乳率と期間はどの程度なのでしょうか。
少し古いデータではありますが、厚労省の平成17年の栄養調査によりますと、
分娩後2ヵ月時点で、
- 母乳だけ : 41.4%
- 母乳と人工栄養 : 45.7%
- 人工栄養 : 12.8%
と母乳だけで育児されている方と、母乳と人工栄養で育てている方は87%と高率です。
しかし、6ヵ月になると、人工栄養だけのかたが40%を占めるようになり、上の研究報告のように10ヵ月以上母乳を与えておられる比率はどの程度なのでしょう。
WHOでは2歳以上まで母乳を奨励
世界保健機構であるWHOの「乳幼児の栄養法」のガイドラインでは、
- 母乳を、子供の要求に応じて2歳以上まで頻繁に与えましょう
- 母乳による育児を補完食とともに2歳以上まで続けましょう
- 子どもの要求に応じて、子供が求めるたびに授乳しましょう
と、子供の要求に応じて24ヵ月以上まで母乳を与えることを奨励しています。
母乳の栄養や健康効果については、
- 母乳はどんな補完食よりも質の高い栄養素を含んでいる
- 母乳は乳児を守ってくれる防御因子も与え続けることができる
- 母乳は病気の時の重要なエネルギー源と栄養源になる
として、母乳による育児は乳児の急性の病気のリスク、慢性の病気のリスクを低減させると2歳以上までの母乳育児を奨励しています。
母乳による授乳は貴女の糖尿病のリスクを低減します
母乳による授乳は赤ちゃんの健康を守ります
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