糖尿病を治療すれば乳がんの予後が良い

糖尿病はそれ自体で死に至ることはありません。

しかし、糖尿病合併症が起こると、足切断、失明、人工透析などの危険があるだけでなく、

糖尿病になるとがんになりやすいことが多くの疫学調査で明らかになっています。

今回紹介する論文は、

糖尿病を治療すると乳がんの予後がよい

というものですが、

安心してはいけません。

糖尿病を併発した乳がんでは、

  • 乳がんが治りにくい
  • 乳がんの進行が早い

というリスクもあるのです。

 

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糖尿病を治療すると乳がんの予後がよい

糖尿病を合併する乳がん患者は、糖尿病でない乳がん患者よりも治療後の予後が悪いといわれているのですが、

肝臓からの糖新生を抑制する血糖低下薬であるメトホルミンの治療により乳がんの予後が改善するとの研究報告が出されました。

 

メトホルミンとは、肝臓での糖新生を抑制することなどによって血糖を低下させる糖尿病治療薬で、

  • メトグルコ(大日本製薬)
  • グリコラン(日本製薬)
  • メトネルビス(三和化学)
  • メデット(アステラス)

などで販売されていますから、糖尿病の患者では服用している方も多いはずです。

 

Impact of Diabetes, Insulin, and Metformin Use on the Outcome of Patients With Human Epidermal Growth Factor Receptor 2-Positive Primary Breast Cancer: Analysis From the ALTTO Phase III Randomized Trial.

     詳しく読む ⇒ 原著論文

 

この研究では、

糖尿病を併発する乳がん患者について、メトホルミンによる糖尿病治療の影響が乳がんの予後にどのような影響を与えるかを検討したのです。

対象となった乳がん患者の内訳は、

  1. 糖尿病を併発しない乳がん患者 7,935人
  2. 糖尿病を併発する乳がん患者   446人 

で、

糖尿病を併発する乳がん患者では、

  1. メトホルミンの治療あり 260人
  2. メトホルミンの治療なし 186人

として、メトホルミン治療が乳がんの予後に与える影響を調べたのです。

 

その結果、

  • 糖尿病でメトホルミン治療をしなかった患者では、

    糖尿病でない乳がん患者に比べて無増悪生存期間も生存期間も短い

  • 糖尿病でもメトホルミンで治療をした患者では、

    糖尿病を併発していない乳がん患者と変わらない

ことが分かったのです。

 


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糖尿病では乳がんが治りにくい

上の論文では、

糖尿病を併発した患者で糖尿病の治療をしないと乳がんの予後が悪いということが分かったのですが、

そもそも、

糖尿病を併発する乳がん患者では乳がんが治りにくいことが分かっています。

 

糖尿病を併発する乳がん患者の予後について調べた研究があります。

Diabetes mellitus and prognosis in women with breast cancer: A systematic review and meta-analysis. Medicine (Baltimore). 

  詳しく読む ⇒ 原著論文

 

この研究では、

糖尿病と乳がんの予後について調べた17本の研究論文を精査し、48,315人の乳がん患者の予後をメタ解析したのです。

 

その結果、

糖尿病で乳がんの患者は、糖尿病でない乳がん患者に比べ、

  1. 生存期間が短い
  2. がんが進行せず安定した期間が短い

ということが分かったのです。

 

研究グループは、

糖尿病は乳がん患者の生存期間やがんの悪化と関係していることが明らかになった

と述べています。

 

今回の研究結果から、糖尿病がどうしてがんの悪化に関与しているのかは明らかでありませんが、

他の研究から、

糖尿病とがんの悪化については、

  1. 糖尿病による高インスリン血症
  2. インスリン様成長因子(IGF)の増加
  3. 高血糖状態がもらたす酸化ストレスや炎症
  4. 性ホルモン

などの要因が、

乳がんの進行を早め生存期間を短くしているのではないかと考えられています。

糖尿病でなりやすいがん」でも書きましたように、

  1. インスリンやインスリン様成長因子(IGF)はがん細胞の増殖を促進する
  2. がん細胞はグルコースによって成長し増大する

ということから、高血糖がつづく糖尿病ではがんの進行が早いといわれているのです。

 


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糖尿病患者はがんになりやすい

厚生労働省の2014年の国民健康・栄養調査によると、

糖尿病が強く疑われる人は、

  • 男性で15.5%
  • 女性で9.8%

にも達しており、

糖尿病の患者数は316万6,000人と2011年の270万から46万6,000人も増加して過去最高となっています。

 

糖尿病によ高血糖が続くと、合併症を併発して死亡に至のですが、

国立がん研究センターの調査では、

糖尿病患者はがんになる危険性が、

  • 男性で1.27倍も高い
  • 女性で1.21倍も高い

として、

糖尿病患者の20~30%はがんになる可能性がある

としています。

男性では、

  • 肝臓がん
  • 腎がん
  • 膵臓がん
  • 結腸がん
  • 胃がん

 

女性では、

  • 胃がん
  • 肝臓がん
  • 卵巣がん

のリスクが高くなることが多くの疫学調査から明らかになっていますが、

今回ご紹介したように、

糖尿病患者では乳がんの予後が悪く死に至る例が多いのです。

さらに、

 

糖尿病の女性では乳がんが進行した段階で発見される傾向がある

という研究論文もあるのです。

この研究はカナダのウィメンズカレッジ病院の研究グループが発表したものですが、

 

The association between diabetes and breast cancer stage at diagnosis: a population-based study

 詳しく読む ⇒ 原著論文

 

カナダのオンタリオ州で2007~2012年に新たに侵襲性乳がんと診断された患者において、

糖尿病患者と非糖尿病患者を比較したところ、

糖尿病患者では非糖尿病患者より、より進行した乳がんの段階で発見されたというのです。

研究グループでは、糖尿病はがんによる死亡率を高める原因となるかもしれないと述べています。

 

乳がんは早期発見すれば完治することが可能です。

定期的な乳がん検診によって早期発見に努めて下さい。

そして、

糖尿病や血糖値が高い糖尿病予備群では乳がんに充分に注意を払って下さい。

しかし、

血糖値を下げれば糖尿病のリスクも乳がんのリスクも下がるのです。

 

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