臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた けんぞう です。
糖尿病治療薬の開発を行っていた私が言うのも何ですが、
糖尿病の治療では食事療法と運動療法が基本なのです。
今日も科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝へします。
はじめに
1週間に卵を1個も食べない人はいないでしょう。
卵は栄養価でも価格の上でも優等生。
そして、最近明らかになったのは、
卵を週に4個食べれば糖尿病を防ぐことができる!
ということです。
こんな簡単なことなら今日からでも直ぐできることですが、
卵を食べれば糖尿病の予防に効果的
だとはどうしてなのでしょう、、、
卵はどうして糖尿病を予防できるのか?
卵はどの家庭にもいつも置いてある食材で、卵と牛乳は冷蔵庫に常にストックしてあるものの上位に入る食品です。
卵の食べ過ぎはコレステロールを増加させるから食べ過ぎは良くない、
といわれていることから食べ過ぎには注意を払っている人が多いのですが、
血糖値が気になるあなたにとって素晴らしい研究結果が、
American Journal of Clinical Nutritionという世界的にも権威のある栄養学雑誌に先月報告されました。
詳しく読む ⇒ 卵は糖尿病のリスクを下げる
Egg consumption and risk of incident type 2 diabetes in men: the Kuopio Ischaemic Heart Disease Risk Factor Study.
Results: During an average follow-up of 19.3 y, 432 men developed T2D. After adjustment for potential confounders, those in the highest vs. the lowest egg intake quartile had a 38% (95% CI: 18%, 53%; P-trend across quartiles <0.001) lower risk of incident T2D. Analyses with metabolic risk markers also suggested an inverse association with fasting plasma glucose and serum C-reactive protein but not with serum insulin. The associations between cholesterol intake and risk of T2D, plasma glucose, serum insulin, and C-reactive protein were mainly nonsignificant, especially after accounting for egg consumption.
卵が糖尿病のリスクを低下させるというのです。
ゆで卵にスクランブルエック、目玉焼き、オムレツ、茶碗蒸し、、、卵は朝食にも夕食にも欠かせない、大人も子供も好きな食材ですが、
なんと2型糖尿病を防ぐ効果があるのだというのです。
研究成果を発表したのは、フィンランドの東フィンランド大学の研究グループですが、
研究では、
42〜60歳の男性2,332人について20年間にわたって食生活習慣を追跡調査したのです。
研究チームは、1980年代に心臓病のリスクを調べる研究に参加した42~60歳の2,332人の男性について、
その後20年間食習慣について追跡調査したところ、この中の432人が2型糖尿病と診断されました。
糖尿病になった人と糖尿病にならなかった人の食習慣を比較したところ、
1週間に約4個の卵を食べていた男性は、週に1個だけの男性より、2型糖尿病のリスクが38%低い
ということが分かったのだそうです。
研究チームは、
卵を習慣的に食べることにより2型糖尿病のリスクを3分の1に減らせ、血糖値を下げることができる
と結論しています。
この論文を読んでみましたが、今回の報告では卵のどのような成分が、
どのようなメカニズムで糖尿病のリスクを低下させたのかについては言及していませんので、
その点については今後の研究成果を待たなければならないようです。
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卵を食べるとコレステロールが上がるはウソ
- 卵はコレステロールが多いから食べ過ぎに注意!
- 卵を食べ過ぎるとコレステロールが溜まる!!
こんな風に信じている人は非常に多いのですが、
コレはウソです。
卵にはコレステロールが多いから要注意だという間違った常識があります。
コレステロールは細胞膜やホルモンを作る上で私たちの体には欠かせない材料でコレステロールの摂取を制限する必要はありません。
卵はコレステロールが多いので食べ過ぎは体に悪いというウソの常識を流したのは、ロシアの科学者だと言われています。
その実験では、草食動物であるウサギに鶏卵など大量の動物性蛋白質を与えたところ血中のコレステロール濃度が異常に高くなり、コレステロールの過剰摂取は血中のコレステロールを上昇させると結論したのです。
この報告に端を発し、「卵の食べ過ぎは健康に良くない」と考えられるようになってしまったのですが、草食動物であるウサギの結果を人間に当てはめるは無理があるのです。
卵をたくさん食べていけないのは、
- 血中コレステロール濃度が病的に高い人
- アレルギー体質の人
だけです。
卵1個に含まれるコレステロールは200~250mg程度で、健康な人であれば毎食1個づつ、1日に3個を毎日食べ続けても、健康上に全く問題はないのです。
2015年5月1日に日本動脈硬化学会でも食事によるコレステロールの摂取が血中コレステロール濃度に直接影響を与えるものではないという声明を出しています。
詳しく読む ⇒ 日本動脈硬化学会のコレステロール摂取に関する声明
一点だけ注意すべきことは、
卵にはビタミンHの吸収を妨げるアビシンという物質が含まれるのですが、半熟程度の加熱処理で破壊されますので、
生卵を1日3個も4個も食べなければ問題は無いのです。
糖尿病患者でも卵の食べ過ぎは問題ない
それでも心配なあなたには、昨年発表された論文をご紹介しましょう。
糖尿病患者が週に12個の卵を食べても大丈夫
これは、2014の第50回欧州糖尿病学会(EASD2014、9月16~19日、ウィーン)で、シドニー大学の研究グループのNicholas Fuller氏が発表した報告です。
糖尿病患者140人を、
- 朝食時に2個の卵を週に6日で12個食べるグループ
- 卵を週に2個未満しか食べないグループ
(卵の代替蛋白として同じカロリーの動物性蛋白を摂食)
の2つのグループに分け、
3ヵ月後の脂質プロファイルを比較したところ
- 両群に有意な差は認められない
- 卵を多く摂取した群でHDL-コレステロール(HDL-C)値が改善
という、卵をたくさん食べた方が好ましいという結果が得られたのです。
Fuller氏は、
- 卵をたくさん摂取しても2型糖尿病患者の脂質プロファイルには悪影響を及ぼさない
- 糖尿病患者の食事療法の一部に加えても安全である
- たくさん卵を食べると大きな満腹感を感じることができる可能がある
と考察しています。
卵の摂取と食事による総コレステロール摂取量に関するガイドライン
これは各国で異なっています。
オーストラリア
卵は飽和脂肪酸が少ない食材の1つだとして、健康的な人も2型糖尿病患者も、週に最大6個まで卵を摂取することを推奨している。
アメリカ
食事性コレステロールを1日300mg未満に抑えるよう推奨(卵1個は約200mg程度)しているのだが、2型糖尿病患者に対しては、低脂肪・高炭水化物食の代替として週4個未満の卵を摂取することを含む地中海食を推奨。
イギリス
卵の摂取量には言及していないが食事の飽和脂肪酸を減らすことを推奨。
糖尿病患者はたくさん卵を食べるべきなのです
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卵は高血糖の人に良い食材
厚生労働省によると、糖尿病が強く疑われる人は890万人。
糖尿病の可能性を否定できない人は1,320万人もいるのことです。
さらに、この数は増加傾向にあり、世界を見ても先進国を中心に糖尿病患者は増え続けているのです。
ダイエットやコレステロール値抑制などのために、卵や乳製品の摂食を控える人が多いのですが、卵も乳製品も栄養価の高く、私達の体に必要な栄養素をもれなく含んでいるのです。
糖質制限をおこなっている人などは卵や乳製品を積極的に摂ってください。
卵は完全栄養食
私達の体は蛋白質で構成されていますが、蛋白質は20種類のアミノ酸で作られます。
その中で、私達の体の中で作ることが出来ず、食物から摂らなければならない8種類のアミノ酸は、必須アミノ酸といわれます。
小学校や中学校で、「アメフリヒトイロバス」という頭文字で覚えたことを思い出しませんか?
卵は、この必須アミノ酸を偏りなくバランス良く含んでいるのです。
卵黄は鳥の赤ちゃんが育つための栄養素なのですから、ある意味では当然のことなのですが、食品でこれだけ完全にバランス良く含んでいるものは卵以外にありません。
卵には、必須アミノ酸だけではなく、私たちの体に必要なあらゆる栄養素が含まれています。
卵2個に含まれる蛋白質は、成人が1日に必要な蛋白質の約26%が含まれています。
卵の健康効果
卵には私達の体に必要な栄養素がぎっしり詰まっているのですが、様々な良い効果も現します。
1)アルツハイマー病の予防
卵に含まれるレシチンにはコリンと呼ばれる成分が含まれているのですが、コリンには脳を活性化する作用が有り、アルツハイマー病や痴呆などの脳の老化に伴う疾患の防止があることが分かってきました。動物にコリンを多く与えたところ学習能力が25%もアップしたという研究もあります 。
2)生活習慣病の予防
コリンにはメタボリックシンドロームで問題になる中性脂肪量を調節する働きがあります。また、血圧を低下させ、高血圧や高コレステロール血症、脂肪肝などの予防や改善が期待されます。
3)抗酸化作用
活性酸素は生活習慣病や老化の原因ですが、卵にふくまれるメチオニンという必須アミノ酸は体の老廃物や毒素の排泄さようがあります。また、卵に含まれるビタミンA、B6、Eなどビタミン群は活性酸素の発生を抑える働きがあります。
4)免疫力の強化
風邪薬には塩化リゾチーム配合」と書かれたものが多いですが、塩化リゾチームは、卵にリゾチームという酵素からつくられたもので、リゾチームには風邪の原因となる細菌などを溶かす働作用があることから、免疫力を高め風邪などに効果があります。
5)美肌効果
肌の潤いや肌のもちもち感は肌のコラーゲンによるものですが、その主原料はアミノ酸で、卵にはアミノ酸がふんだんに含まれ、加齢とともに低下するコラーゲンの働きは助けます。
糖尿病では糖質制限などの炭水化物の摂りすぎを防ぐ食事療法が効果的です
糖質制限食では栄養バランスが偏りがちになってしまいます
そんなときには良質の蛋白質を含む卵が効果的です
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