玉ねぎのケルセチンは糖尿病に良いのか?
今日もご覧になっていただきありがとうございます。
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた けんぞう です。
糖尿病治療薬の開発を行っていた私が言うのも何ですが、
糖尿病の治療では食事療法と運動療法が基本なのです。
今日も科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝えいたします。
はじめに
野菜を食べていますか?
野菜や果物をたくさん食べる人は、
- 肥満
- 糖尿病
- 心臓病
- がん
などになりにくいとして、
1日当たり350g以上の摂取をすすめています。
先日10月29日に放送されたTBS「名医のTHE太鼓判」の特集は“50代からの血管若返りSP”では、
医師団が太鼓判を押す、血管の若返りに最適な食材の食べ合わせ
が紹介されました。
登場した食材は、『天日干しの玉ねぎ』で、
年齢と共にしなやかさを失い硬くなっていく血管。
この血管の「しなやかさ」の指標となる血管年齢を、玉ねぎで若返らせる!
として、玉ねぎは血管を若返らせて心筋梗塞や脳卒中などを予防する効果があるというのです。
玉ねぎの健康効果については、酢玉ねぎは糖尿病に効果がない?でも紹介しましたが、
- タマネギ健康法にダマされるな!
- 体験談だけでエビデンスなし!!
として週間誌で話題になったことがあります。
読者からお質問もありましたので、
玉ねぎの糖尿病に対する健康効果についてお話ししたいと思います。
玉ねぎの硫酸アリルとケルセチンが健康に良い
玉ねぎは健康に良いとして、健康雑誌やテレビなどのメディアにしばしば取り上げられます。
玉ねぎには「血液をサラサラにする効果がある」として話題になるのですが、
それは、
玉ねぎには硫酸アリルという成分が含まれているからです。
硫酸アリルは、玉ねぎ、ニラ、ニンニクなどに多く含まれあの共通した匂いの正体が硫化アリルなのです。
硫酸アリルには血液をサラサラにして動脈硬化を予防する効果があるのです。
その他にも、硫化アリルには、
- 血栓防止作用効果
- 動脈硬化防止効果
- 食欲増進効果
- 新陳代謝亢進効果
- 免疫力亢進効果
などが期待できることから、
高血圧や糖尿病、がん予防などの効果が見込まれているのです。
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玉ねぎのケルセチンの健康効果
TBS「名医のTHE太鼓判」では、
- 玉ねぎは1週間くらい天日干しにしましょう
- 玉ねぎは白色より緑色になったのを食べましょう
とすすめていました。
玉ねぎにはケルセチンという成分も含まれているのですが、
玉ねぎに紫外線を当てるとケルセチンが増えるのです。
緑色に変わったのはケルセチンが増えたからなのです。
酢玉ねぎは糖尿病に効果がない?でも紹介しましたが、
ケルセチンはポリフェノールの一種で抗酸化作用があるのです。
ワインが糖尿病に良いと言われるのも赤ワインには抗酸化作用の強いポリフェノールが含まれているからです。
酸化作用の強い活性酸素は糖尿病を悪化させる原因だからです。
ケルセチンは活性酸素を除去することから、血管内皮の機能が高まり、血管年齢の若返りが期待できるというわけなのです。
玉ねぎに含まれるケルセチンの量は玉ねぎの品種によって差はありますが、
- 赤玉ねぎ
- 黄玉ねぎ
- 白玉ねぎ
の順ですが、。
ケルセチンが最も多く含まれるのは玉ねぎの皮なのです。
玉ねぎのケルセチンを効率的に摂るには、
- 玉ねぎを日光に当てる
- 玉ねぎは繊維に直角に切る
- 玉ねぎは空気に触れさせる
と紹介していましたが、
硫酸アリルは、
- 水にさらすと溶け出す
- 加熱をすると失活する
という性質があることから、
硫酸アリルとケルセチンを効率よく摂るには、
水にさらしたり、加熱調理をすることなく生で食べるのが良さそうでう。
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玉ねぎは糖尿病に良いのか?
玉ねぎのケルセチンには抗酸化作用があることから、
- 高血圧に良い
- 糖尿病に良い
といわれています。
特に、
スライスした玉ねぎを酢に漬けた「酢玉ねぎ」は糖尿病に良いと健康雑誌などで良く取り上げられています。
しかし、
酢玉ねぎは糖尿病に効果がない?でも書きましたように、
「体験談」だけでエビデンスがない
というのが真相のようでした。
そこで今回、さらにケルセチンの糖尿病に対する効果についてのエビデンスを探してみました。
その結果、
「ケルセチンの生活習慣病予防機能」
という論文が見つかりました。
詳しく見る ⇒ 論文を読む
この論文は、食品総合研究所の食品機能研究領域 機能性評価技術ユニット長である小堀 真珠子氏が書いたものです。
ケルセチンの糖尿病改善効果
18ページからなる長い論文ですが、
その中に、糖尿病モデル動物においてケルセチンの糖尿病改善効果を調べた実験成績が記載されています。
この実験では、
- 実験的に糖尿病を起こさせたマウスに、
- ケルセチン含む飼料を2週間食べさせ、
- 血糖値やインスリンの分泌量を調べた
のです。
その結果、
ケルセチンを含む飼料を2週間与えたところ、
- 血糖値が低下した
- インスリン濃度が上昇した
ということで、糖尿病が改善したというのです。
ケルセチンには糖尿病改善効果があると言うことが実証されたのです。
しかし、
問題があるのです。
ケルセチンを含む飼料を2週間食べたマウスの血中のケルセチン濃度は約20μM でしたが、
人間が玉ねぎ200~300gを1週間食べ続けた時の血中濃度は 0.08~1.88μM程度であることから、
マウスで糖尿病が改善したケルセチンの血中濃度を維持するためには、
玉ねぎを毎日2.5~62.5kgを食べなければならない
ということになってしまうのです。
書きましたように、
東京大学の上正広教授は、
ケルセチンには、
- 血圧を低下させる作用
- 脂肪を燃焼させる作用
はあるが、
玉ねぎに含まれるケルセチンはごく微量であり、
玉ねぎを食べただけで効果が出るとは考えられない。
と述べていますし、
小内クリニックの小内亨院長も、
ケルセチンには、
- 動脈硬化予防効果
- 血圧降下効果
があるとるす論文はあるが、
これはケルセチンの効果であって玉ねぎの効果ではない。
ということに尽きると思われます。
犬には玉ねぎを食べさせていけないといわれますが、犬には硫化アリルを分解する酵素がないため、玉ねぎ中毒といわれる溶血性貧血を起こすからです。
サルでも玉ねぎを過剰に与えると障害を起こるといわれています。
人間においても生玉ねぎの過剰摂食では、
- 腹痛
- 下痢
- 嘔吐
を起こすといわれています。
酢玉ねぎなどの民間療法を試みるのもかまいませんが、
それをメインにするのではなく、
食事療法の副次的なサポートという程度にしてください。
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