高血糖やダイエットにはカロリー制限より糖質制限
今日もご覧になっていただきありがとうございます。
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた けんぞう です。
糖尿病治療薬の開発を行っていた私が言うのも何ですが、
糖尿病の治療では食事療法と運動療法が基本なのです。
今日も科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝えいたします。
目次
はじめに
高血糖やダイエットにはカロリー制限と糖質制限のどちらが効果的なのでしょう。
あなたは高血糖やダイエットのためにカロリー制限と糖質制限のどちらを行っていますか?
高血糖やダイエットにはカロリー制限より糖質制限が効果があったと報告されています。
肥満症でカロリー制限と糖質制限のダイエット効果を比較
2015年10月に行われた、第36回日本肥満学会において、 新潟労災病院 ・消化器内科 の前川 智氏らの研究グループは、
肥満患者の食事療法における 糖質制限食とカロリー制限食 の有用性の比較検討
と題した研究発表を行っています
研究の背景は、
生活習慣病と言われる肥満症や糖尿病においては、食事療法が最も重要であることは疑いのないことであるが、
日本では肥満症や糖尿病の食事療法ではカ ロリー制限の食事療法が行われている。
日本のカロリー制限食では、
- 摂取エネ ルギー量を標準体重 と身体活動量 によって算出
- 摂取エネルギーの三大栄養 素のバランスも規定
する食事法である。
アメリカやヨーロッパでも
- 以前は、カロリー制限食が唯一無二の食事療法だった
- 体重や血糖コントロールが不十分な場合も多く 薬物療法を必要とすることが多い
- 欧米では肥満症,糖尿病の食事療法として糖質制限食が 普及しつつある
として、
肥満症において糖質制限食と従来のカロリー制限食を比較検討す ることにした
というのです。
全ての発表内容は下記のサイトで公開されていますが、長いので要約してご紹介しましょう。
http://www.slideshare.net/niigatarofuku/ 362015109-54207122 (スペースは削除して下さい)
糖質制限による食事法は
糖質制限についてはこのサイトでも何回も説明しましたので、ご理解いただけたかと思いますが、前川 智氏らの研究グループの糖質制限食の定義を見てみましょう。
糖質制限食とは糖質を一定以下に制限するもの の蛋白質と脂質には制限を設けない食事療法
としています。
糖質制限食は、2008年にイスラエルにおける臨床試験において、
- 体重減少
- 血糖コントロール
の両方で有効性が示されたのが初めです。
その後、世界各国で糖質制限食の有効性を示した研究成果が発表され、
欧米では糖質制限食が肥満症や糖尿病の食事療法として普及しつつある
のです。
しかし残念ながら、日本では、
- 糖質制限食の有効性を示す報告が非常に少ない上に、
- 2015年に血糖コントロールに有効との論文が発表されたが、
- 肥満症における糖質制 限食の有効性を示す論文は無い
として、前川 智氏らの研究グループは、
肥満症における糖質制限食の有効性を検討する ために
糖質制限食と従来のカロリー制限食を比較検討
す ることにしたというのです。
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カロリー制限食と糖質制限食の内容
前川 智氏らの研究グループは、
- 2012年4月~2016年3月に新潟労災病院の肥満外来を受診した患者
- BMIが25~ 40Kg/m2、HbA1cが5.0~8.0%
- 糖尿病や 脂質異常症の薬物療法をしていない
ことに該当する60名の患者、
- 外来でカロリー制限食の指導を行う(20名)
- 外来で糖質制限食の指導を行う(19名)
- 糖質制限食の教育入院(1週間)後に外来で糖質制限食の指導を行う(21名)
の3群に分け、1年間に亘ってカロリー制限と糖質制限の効果の比較を行ったのです。
カロリー制限食と糖質制限食
カロリー制限食と糖質制限食の外来群では、6ヵ月までは月1回、それ以降は3ヵ月に1回の外来受診を行って、医師と栄養士による栄養指導を行っています。
カロリー制限食
カロリー制限食では、標準体重と身体活動量から摂取エ ネルギー量を算出し、三大栄養素のバランス は、
- 糖質は摂取エネルギーの50~60%
- 蛋白質は50~80g
- 残りを脂質(25%以下)
としています。
糖質制限食
糖質制限食では1日の糖質摂取量を120g以下に制限するのみで蛋白質、脂質の摂取量は制限をしない
という、言うなれば、ご飯や麺類などは制限するが肉や魚は食べ放題ということです。
糖質制限食の教育入院では、食事内容は同じですが、糖質制限食の理解度チェックの30問正誤テストや医師や栄養士との面談により糖質制限の重要性を教育したそうです。
なお、1日の糖質摂取量を120g以下ということは、
白米のご飯1膳(150g)には約55gの糖質が含まれますから、
ご飯を茶碗半分に1日3回食べると糖質量は合計は82.5gで、その他にまだ50gくらい糖質をとって良いと言うことになります。
これは、このサイトでもご紹介している、スタンダード糖質制限食と同じです。
カロリー制限と糖質制限のダイエット効果の比較
さて、上記のカロリ-制限と糖質制限の体重やその他のパラメーターに対する効果です。
各食事療法を始めてからの体重変化は下記の図に示したとうりで、いずれの食事療法群でも開始直後から減少を示しています。
しかし、図からも明らかなように12ヵ月か月後の体重減少は、
- カロリー制限群 : 4.6±2.9kg減少
- 糖質制限群 : 8.5±5.0kg減少
- 糖質制限入院群 : 13.0±7.0kg減少
と、糖質制限、糖質制限入院群での減少はカロリー制限群よりも有意に減少したのです。
BMIについても、下記の様に、糖質制限、糖質制限入院群での減少がカロリー制限群よりも有意な低下が見られています。
さらに、腹囲についても同様な結果が得られたと報告しています。
さらには、内臓脂肪値、皮下脂肪値中性脂肪、HDL-コレステロール、に おいても糖質制限群の方がカロリー制限よりも有意な減少が認められたそうです。
糖質制限は血糖値をも下げる
空腹時血糖値については、カロリー制限群ではほとんど変化しなかったのに比べ、糖質制限、糖質制限食入院群では食事療法開始後から有意な低下が見られています。
過去3ヵ月間の血糖値の変化を示すHbA1cについても空腹時血糖値の変化と同様な減少を示したと報告しています。
研究グループの代表者である前川 智氏は、
肥満症の食事療法において 糖質制限食がカロリー制限食よりも有意に 体重減少効果を示すことが示唆された
と結論しています。
さらに注目すべきことは、今回、前川 智氏らの研究グループが行ったカロリー制限食は、日本糖尿病学会が糖尿病の食事療法として推奨している食事療法なのです。
日本糖尿病学会が糖尿病の食事療法として推奨している食事療法では血糖値が下がらなかった、、、ということは非常に衝撃的なことです。
今回の、前川智氏らの研究から、
- 糖質制限はカロリー制限よりもダイエット効果が明らか
- 糖質制限は血糖値も低下させる
ということが明らかになりました。
あなたは、どちらを選びますか?
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