製薬会社で20年以上、新薬の研究開発に携わった経験をもとに、科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝えしています。
糖尿病治療では、日本糖尿病学会や厚生労働省も示しているように、食事療法と運動療法が基本です。
はじめに
大豆は「畑の肉」といわれるほどタンパク質が豊富で、食物繊維やイソフラボンなども含む栄養価の高い食品です。
最近の研究では、
・大豆をよく食べる人は糖尿病のリスクが低い
・空腹時血糖やインスリン抵抗性の改善に役立つ可能性がある
が報告されています。
大豆は糖尿病にどのような健康効果が期待できるのかを詳しく解説します。
豆類をよく食べる人は糖尿病のリスクが低い
スペインの研究グループは、豆類の摂取と糖尿病発症との関係を調べています。
研究グループは、
・糖尿病ではないが心血管疾患のリスクが高い3,300人以上を、
・約4年間追跡し、
・豆類の摂取量と糖尿病発症との関係
を調べました。
豆類とは、一般的なレンズ豆、ひよこ豆、乾燥大豆、エンドウ豆などです。
その結果、
豆類を多く食べていた人では糖尿病の発症が少ないという
ことが明らかになったのです。
詳しくは、
- 1週間に豆類を3.35人前以上食べる人は、1.5人前以下の人より糖尿病発症率が35%低い
- レンズ豆をよく食べる人でも糖尿病発症率が低い
という結果でした。
さらに、パン、米、卵などの一部を豆類に置き換えた場合にも、糖尿病リスクが低くなる可能性が示されました。
豆類は良質な植物性タンパク質を含み、食物繊維、マグネシウム、カリウムなども摂ることができます。また、食後血糖値が比較的上がりにくい食品が多いことも特徴です。
ここで注目したいのは、
・大豆だけではなく「豆類」全体を調べた研究
・パンなどの主食と豆類を置き換えても効果があった
ということです。
大豆に絞った研究では糖尿病リスクが17%低い
では、大豆についてはどうでしょうか。
2023年に発表されたシステマティックレビュー・メタ解析では、
大豆摂取と糖尿病や心血管疾患との関係を調べた29論文が解析されました。
糖尿病の発症は16,521例、追跡期間は2.5~24年です。
その結果、
大豆摂取量が最も多い人では、最も少ない人に比べて2型糖尿病のリスクが17%低い
という結果が明らかになりました。
原著論文 ⇒ 2023年 大豆と2型糖尿病のメタ解析
この観察研究では「大豆を食べたから糖尿病が17%減った」との因果関係まで証明することはできません。
大豆を多く食べる人では、食事や運動など他の生活習慣も違っている可能性があるからです。
2026年の61試験では大豆と血糖値の関係を比較
さらに、2026年には、大豆と血糖管理について新しいネットワークメタ解析結果が発表されています。
この研究では、61件のランダム化比較試験、合計4,744人を対象に、
大豆、大豆タンパク質、イソフラボンなどの違いによって、血糖値やインスリン感受性への作用が異なるかを比較しています。
その結果、丸ごとの大豆(whole soy)は、
- 空腹時血糖
- 空腹時インスリン
- HOMA-IR(インスリン抵抗性の指標)
の改善で最も効果があったと評価されました。
しかし、
HbA1cについては、どの大豆製品や成分でも有意な改善が確認されなかったのです。
原著論文 ⇒ 2026年 61件の臨床試験を解析した研究
つまり、大豆には血糖やインスリン抵抗性に良い影響を与える可能性がありますが、
糖尿病治療薬のように「食べればHbA1cが下がる」とまではいかないのです。
なぜ大豆は糖尿病に良いのか?
残念ながら、大豆を食べてもHbA1cの改善にまでは至らなかったのですが、
大豆にはどのような健康効果があるのでしょう?
① 大豆には良質のタンパク質が豊富
大豆は「畑の肉」と呼ばれるように、植物性食品の中では良質なタンパク質を多く含んでいます。
大豆の35%はタンパク質なのです。
白米やパンなど糖質中心の食事に、豆腐、納豆、蒸し大豆などを組み合わせることで、食事全体のバランスを整えやすくなります。
② 大豆には大量の食物繊維が含まれる
大豆や豆類には食物繊維が含まれます。
大豆の成分の17%は食物繊維です。
糖尿病や糖尿病予備軍の人では、食後に急激に血糖値が上がらないGI値が60以下の食品が奨励されていますが、
大豆や大豆製品はGI値が低いのです。
| 大豆・大豆製品の種類 | GI値(目安) |
|---|---|
| 大豆(ゆで・乾燥など) | 30前後 |
| 豆腐 | 30〜42程度 |
| 豆乳 | 23〜25程度 |
| 枝豆 | 30 |
大豆のような食物繊維を含む食品を一緒に食べることで、糖質の消化・吸収が緩やかになり、食後血糖値の急上昇を抑えるのに役立ちます。
👉 ベジファーストより大豆ファースト(最終章で説明しています)
③ 大豆には女性の味方のイソフラボンが含まれている
大豆にはイソフラボンが含まれています。
イソフラボンは女性ホルモンのエストロゲンと似た構造をもち、糖代謝、脂質代謝、インスリン感受性などとの関係が研究されています。
特に日本人女性を対象とした研究では、肥満女性や閉経後女性で大豆製品・イソフラボン摂取と糖尿病発症との関係がみられています。
④ 大豆のβコングリシニンは内臓脂肪を減らす
東京大学の研究グループは、大豆タンパク質の一つであるβコングリシニンについて研究し、
βコングリシニンの摂取によってFGF21の遺伝子発現や血中濃度が増加し、糖・脂質代謝に関係する可能性を明らかにしています。
さらに、βコングリシニンには血中の中性脂肪や内臓脂肪を減らす働きがあることも分かっています。
納豆、インゲン豆、小豆にも同じ健康効果がある
大豆以外の豆類や大豆製品についても糖代謝や健康に効果があるとの多くの研究成果が明らかになっています。
納豆は大豆を発酵させた食品で、タンパク質や食物繊維を摂ることができます。納豆と食後血糖値については、納豆は血糖値を下げるで紹介しています。
インゲン豆については、糖質の消化に関係する酵素に作用する成分が研究されており、インゲン豆の血糖低下作用で詳しく紹介しています。
また、小豆にはポリフェノールが含まれ、抗酸化成分の面からも研究されています。詳しくはあずきと糖尿病の研究をご覧ください。
大豆ダイエットや大豆ファーストがお薦め
大豆や豆類はタンパク質と食物繊維を摂ることができ、満腹感を得やすい食品です。
主食の一部を豆腐や蒸し大豆などに置き換える方法については「大豆ダイエット」で詳しく紹介しています。
また、
食後高血糖を上げないためには、食物繊維が多い野菜から食べるベジファーストが奨励されていますが、
食事の最初に蒸し大豆や豆腐などを食べてから主食を食べる「大豆ファースト」の方が効果があるようなのです。
まとめ
大豆や豆類は、糖尿病の食事に取り入れやすい食品です。
豆類の糖尿病に関する研究では、
・大豆摂取量が多い人で糖尿病リスクが17%低い
・大豆はインスリン抵抗性を改善する
などの効果が明らかになっています。
大豆は「糖尿病を治す食品」ではありませんが、
生活習慣病である肥満や糖尿病を改善するには是非取り入れたい食品であることは間違いありません。
日本食で昔からいわれる「まごわやさしい」の「ま」は豆類です。毎日の食事に上手に豆類をプラスしてみてはいかがでしょうか。











