日本糖尿病学会が勧める糖尿病の食事療法

今日もご覧になっていただきありがとうございます。

臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた けんぞう です。

糖尿病治療薬の開発を行っていた私が言うのも何ですが、

日本糖尿病学会厚生労働省も述べるように、

糖尿病の治療では食事療法と運動療法が基本なのです。

今日も科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝えいたします。

 

はじめに

先日は、「カロリー制限」と「糖質制限」のどちらが良いかという話をしました。

日本糖尿病学会では、

現時点では糖質制限食は根拠が不足しているとしてカロリー制限を推奨しているのです。

しかし、日本糖尿病学会の理事長である門脇孝氏は、

 糖質制限には反対ではなく糖質量40%の緩やかな糖質制限は推奨できる

と述べており、

  • 門脇氏自身は糖質制限を実践
  • 院長を務めていた東大付属病院では40%の糖質制限を実践

しているのです。

では、日本糖尿病学会の食事療法に対する考えとはどのようなものなのでしょうか?

 

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日本糖尿病学会の食事療法に関する考え方

日本糖尿病学会は、2013年3月に、

日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言
 ~糖尿病における食事療法の現状と課題~

というものを出し、

これが日本糖尿病学会の食事療法に関する考えの中核になっているのです。

  詳しく読む ⇒ 日本糖尿病学会の提言

 

この提案書は7,000文字を超す長いものです。

しかし、糖尿病の食事療法を理解するためには是非とも読んでおいていただきたいのです。

今日はこれを簡単に骨子をご説明したいと思います。

 


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糖尿病の原因は食生活の変化

近年の糖尿病患者の増加の原因は、

  1. 戦後の生活習慣の変化
  2.  身体活動度の低下
  3. 脂質を中心とする栄養摂取のバランスの崩れ

にあるとしています。

特に、

2型糖尿病の増加は、経済成長に伴う食習慣の変化が肥満を増加させ糖尿病患者が増加したことは明白で、

2型糖尿病の予防と治療では活習慣の是正が最も重要である

としているのです。

国民健康栄養調査では、1960年代以降、総エネルギー摂取量は減少し、2010 年には平均1,840kcalであるが、

 

炭水化物の摂取量が減少し脂質の摂取量が増加し、

2010年では、炭水化物と脂 質のエネルギー比率は59.4%と25.9%となっている。

 

糖尿病における食事療法の必要性

糖尿病における食事療法の目的は、

摂取エネルギーの適正化によって肥満を解消し糖尿病の種々 の病態を是正すること

としています。

高血糖を解消することだけでなく、糖尿病合併症を予防することも重要なのです。

そのためには、

総エネルギ ーを調整して合併症に対する配慮の上で三大栄養素のバランスを図ることが大事だとしているのです。

 


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糖尿病の食事療法における栄養バランス

諸外国における 三大栄養素のバランスは、

摂取エネルギーに対して、

  1. 炭水化物 : 45~60%
  2. 脂質 : 25~35%
  3. 蛋白質 : 10~20%

とされていたが、

最近では、

  1. 炭水化物の最低必要量のみを定めるもの
  2. 特に一定の数値を示もの

のようなガイドラインも見られるようになってきている、

 

と述べています。

これは、2011年にアメリカ糖尿病学会が「糖質制限」を糖尿病の食事療法の選択肢として推奨したことを指しているものと思われます。

 

そして、

脂質や蛋白質の推奨摂取比率の関係から、

 糖尿病で推奨される炭水化物の摂取比率は50~60%であり、

この値は日本人の一 般的な栄養素摂取比率に合致している

としています。

 

糖質制限食は現時点では根拠が不足している

肥満者における食事療法では、

  1. 脂質を制限すべきか
  2. 炭水化物を制限すべきか

について、欧米では長年にわたって多くの検証がおこなわれてきた。

しかし、

いずれの研究においても観察期間が短く、 脱落例が多いなどの問題点が多く、

 摂取エネルギーが過剰でも炭水化物を制限す れば減量効果がある

という考え方は短絡的である

としているのです。

 

ただし、2008 年に報告された、

  • 低脂肪食
  • 低炭水化物食
  • 地中海食

を比較したDIRECT試験では、炭水化物摂取量は40%と従来の研究に比較して緩やかで、脱落率も 20%を下回ったと認めています。

 

アメリカ糖尿病学会は 2013 年に、

糖尿病の食事法として

  • 糖質制限食
  • 低脂肪食
  • 地中海食

を推奨したのですが、

日本糖尿病学会では、

糖質制限食は、

  1. 肥満者の減量を図るためには短期間(2 年間まで)では有効であるかもしれないが、
  2. 病態によって最適の栄養摂取比率が異なるので、
  3. エネルギー摂取量の制限を優先すべきだ、

と述べているのです。

 

日本人においては、

日本人の一 般的な栄養素摂取比率からみても、

 糖尿病で推奨される炭水化物の摂取比率は50~60%であり、

 

糖質制限食については、

日本人の糖尿病の病態の変化や今日の食に対する価値観の多様性を踏まえて、 我が国における新たなエビデンスを構築していかなければならない。

と、やや難解な解釈を示しています。

 

 

日本糖尿病学会の糖尿病・食事療法の考え方は、

  1. 肥満の解消は糖尿病の予防・治療で重要
  2. 体重の適正化のためには運動療法と積極的な食事療法を指導すべきである
  3. 食事療法では摂取ネルギー の制限を最優先とする
  4. 炭水化物の極端な制限は安全性などのエビデンスが不足しており現時点では 薦められない

というのが結論なのです。

まあ、無難な考え方ですが、

疑問に思うのは、「炭水化物の極端な制限」という点です。

 

先日、「糖尿病の食事療法はカロリー制限か糖質制限か?」でお伝えしましたように、

 

日本糖尿病学会の理事長である門脇孝氏は、

 糖質制限には反対ではない、糖質量40%の緩やかな糖質制限は推奨できる

との見解を表明していますし、

門脇氏は2015年まで病院長を務めていた東大附属病院では、

 東京大学医学部附属病院では40%の糖質制限を実践

しているということです。

 

われわれは何にしたがったら良いのでしょう、、、

あすは、糖尿病の食事療法を大きく変えることになったDIRECT試験についてお話ししましょう。

 

 

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