大豆コングリシニンは肥満や糖尿病に良い
今日もご覧になっていただきありがとうございます。
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた けんぞう です。
糖尿病治療薬の開発を行っていた私が言うのも何ですが、
糖尿病の治療では食事療法と運動療法が基本なのです。
今日も科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝えいたします。
はじめに
今日は非常に興味深い論文を見つけたのでご紹介しましょう。
東京大学の研究グループは、
大豆は肥満や糖尿病に良いという研究報告をしています。
大豆に含まれるβコングリシニンという成分には、
肥満や糖代謝の改善に効果があるというのです。
あなたは豆を食べていますか?
大豆コングリシンは肥満や糖尿病を改善する
大豆は体に良いと言うことは昔からいわれていますが、東京大学の研究グループは、大豆の肥満や糖代謝改善の作用機序を解明したと発表しました。
Single ingestion of soy β-conglycinin induces increased postprandial circulating FGF21 levels exerting beneficial health effects.
Scientific reports. 2016
東京大学大学院農学生命科学研究科の佐藤隆一郎氏らの研究グループは、
大豆に含まれるβコングリシニンが脂肪分解を促すFGF21の分泌を促進する
ということを、マウスを用いた実験で明らかにしました。
実験では、
- 大豆βコングリシニンを20%含む高脂肪食をマウスに9週間摂取させたところ、
βコングリシニンを含まない餌を与えマウスに比べ、
- 体重増加が有意に抑制
- 脂肪組織の重量や肝臓中のトリグリセライド(TG)量が減少
- 血糖値や血中インスリン濃度が低下
することが認められたというのです。
そこで、βコングリシニンのこうした効果の機序を調べるため、βコングリシニン投与したマウスの肝臓における遺伝子発現変動を解析したところ、
βコングリシニンを摂食するとFGF21の遺伝子発現が著明に上昇し血中濃度も有意に増加する
ということが明らかになったのです。
FGF21は、fibroblast growth factor 21といわれ、成長ホルモン様の作用を有し糖や脂質の代謝に関与しています。
FGF21は、インスリン産生や、インスリンを分泌するβ細胞量や機能を維持したり、インスリン抵抗性の改善作用もあるといわれています。
研究グループは、βコングリシニンの効果はFGF21を介したものであり、肥満予防や脂質・糖代謝の改善をもたらすβコングリシニンの作用機序が解明されたことは、生活習慣病予防でのさらなる活用が期待される、と述べています。
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糖尿病や肥満に効果がある大豆コングリシンとは
大豆は、畑の肉といわれるほど蛋白質が豊富に含まれている食材です。
大豆には、重量の約3分の1の蛋白質が含まれています。
その内、
- 40% : グリシニン
- 20% : βコングリシニン
- 40% : リポプロテインなどの膜タンパク質
と、βコングリシニンは大豆蛋白質の20%を占め、グリシンに次いでたくさん含まれています。
大豆は健康に良い
アメリカのFDA(米国食品医薬品局)は、1999年に、
1日に25gの大豆蛋白質を食べると心臓疾患を防ぐことができる
という食品表示を認めたことから、大豆の健康効果が広く知られるようになりました。
これは、大豆蛋白質にはコレステロール低下作用があるからなのですが、日本でも、大豆のコレステロール低減効果については多くの研究がなされ、コレステロール以外の健康効果がある可能性が示唆されていました。
その結果、約20年前位に、ネズミを用いた実験において、
βコングリシニンが中性脂肪を下げる
ということが判明したのです。
それまでは、大豆に最も多く含まれるグリシニンがコレステロール低下作用を持つと信じられいたのですが、大豆の蛋白質成分を分画する技術により、コレステロール低下作用を持つ成分はβコングリシニンだということが分かったのです。
βコングリシニンの中性脂肪低下作用は、ヒトにおいても証明されています。
中性脂肪が150mg/dl以上の126人を、無作為二重盲検法という、誰がどちらを食べているか分からないように2群に分け、
- βコングリシニンが5g含まれる干菓子
- カゼインが5g含まれる干菓子
を毎日、12週間に亘って食べてもらったところ、
βコングリシニン群では、
- 最初の4週間で中性脂肪値が11.7%低下
- 12週間目には13.5%低下
したそうです。
さらに、中性脂肪がより高いヒトほど低下率が大きかったそうです。
また、同様な試験において、βコングリシニンには内臓脂肪減少効果も確認されています。
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βコングリシニンを5g食べるには
上の臨床試験では、βコングリシニンを毎日5g摂取しています。
また、FDAは1日25gの大豆蛋白を摂取するように推奨していますが、大豆25gにはβコングリシニンが5g含まれているのです。
大豆25gは結構の量で毎日となると結構大変かも知れません。
βコングリシニン5gを大豆製品に換算すると、
- 豆腐では2丁半~3丁
- 豆乳では約1リットル
ですから、食品から毎日5gを摂取するのは困難かも知れませんが、5gを食べないと効果が全くない訳ではありません。
毎日大豆製品を積極的に摂ればβコングリシニンの効果を期待できるのです。
また、βコングリシニンは機能性食品としても承認されていますから、特に肥満や血糖値が高いヒトではサプリメントを利用することも可能です。
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