糖尿病の食事療法

製薬会社で20年以上、新薬の研究開発に携わった経験をもとに、科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝えしています。
糖尿病治療では、日本糖尿病学会や厚生労働省も示しているように、食事療法と運動療法が基本です。

はじめに

糖尿病の食事療法といえば、カロリー制限や糖質制限を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。

2026年10月2日、米国糖尿病学会(ADA)と欧州糖尿病学会(EASD)が、2型糖尿病の管理について4年ぶりに新しい合同レポートを発表しました。

今回の改訂では、薬物療法、食事療法、運動や睡眠など、幅広い内容が取り上げられています。

今回は、その中から食事療法に注目して、何が変わったのか、糖尿病患者はどうすればよいのかを紹介します。

新しい指針に登場した5つの食事法

2026年版の合同レポートでは、食事療法を説明する図に、次の5つの食事法が示されました。

食事法 どんな方法?
地中海食 野菜、豆類、魚、オリーブオイル、ナッツなどを中心にした食事
エネルギー制限食 摂取カロリーを減らして体重減少を目指す食事
間欠的断食 食べる時間帯や日を制限する食事法
ケトン産生食 糖質を大幅に減らし、体内でケトン体が作られる状態を目指す食事
糖質制限食 ご飯、パン、麺類、砂糖などから摂取する糖質の量を減らす食事

合同レポートでは、患者の健康状態、食事の好み、文化的背景、継続のしやすさなどを考慮して、食事療法を個別に決めることが重要だとしています。

糖尿病の食事療法

今まで提案されていた食事法は、
・カロリー制限
・糖質制限
・地中海食
・DASH食
の4つでしたが、

糖尿病の食事療法で最もオススメの食事療法

・DASH食(高血圧を予防・改善するための食事療法)がなくなって、
・間欠的断食
・ケトン産生食
の2つが加わったことになります。

👉 糖尿病の食事療法

地中海食と糖質制限食にはどんな効果がある?

地中海食と糖質制限食は、どちらも2型糖尿病の食事療法として取り上げられていますが、期待される効果には違いがあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

地中海食

地中海食は地中海沿岸地域の伝統的な食事スタイルをベースにした、科学的根拠に基づく健康的な食事法で、魚介類や植物・果物を中心にし、バターなどの動物性脂肪の代わりにオリーブオイルを使う食事法ですが、

今回のレポートでは、
「体重が大きく減少しなくても血糖管理や心血管系に有益な効果がある」ことが紹介されています。

特に、動脈硬化性心血管疾患のある2型糖尿病患者には、実践可能で本人が受け入れられる場合、地中海食を優先的に検討するよう推奨しています。

👉 糖尿病でお薦めの地中海食とは

糖質制限食

糖質制限食については皆さんよくご存じだと思いますが、ご飯、麺類、パンなどの炭水化物の摂取量を制限する食事法です。

糖質制限食については、糖尿病で過体重や肥満のある人において、「短期的に血糖管理や体重を改善し、血糖を下げる薬の必要量を減らす効果」が報告されています。

一方、糖質をどの程度減らすかについては、患者の状態に合わせた検討が必要とされています。

👉 糖質制限食とは

間欠的断食も選択肢に加わった

間欠的断食とは最近話題になっている、16:8ダイエット、オートファジーダイエットなどとも呼ばれている食事法ですが、

食事を取る時間を1日の中の一定の時間帯に限る方法や、週のうち2日だけ摂取カロリーを大きく減らす「5:2方式」などがあります。

合同レポートでは、間欠的断食によってHbA1cや体重が改善した研究が紹介されています。

例えば、5:2方式を用いた16週間の研究では、メトホルミンまたはSGLT2阻害薬による治療と比較して、HbA1cと体重の減少が大きかったことが報告されていますが、長期的な効果や安全性については、さらに研究が必要と述べています。

👉 16時間ダイエット(8時間ダイエット)とは

#インスリンや血糖低下薬を服用している人では低血糖を起こすことがありますので、主治医と相談してから始める必要があります。

新しく加わったケトン産生食とは?

今回の合同レポートでは、ケトン産生食が新たに加わりました。

ケトン産生食とは、糖質を大幅に制限してケトン体が作られる状態を目指す食事法で、
糖質(炭水化物)を極度に制限し、その代わりに脂質を多く摂取することで、体内で「ケトン体」を多く作り出し、エネルギー源とする食事法です。

一般には「ケトジェニックダイエット」などとして、体重の減量やインスリン感受性の改善を目的に適用されています。

合同レポートでは短期的な血糖値やインスリン感受性の改善が報告されている一方、低血糖やケトアシドーシスのリスクにも言及しています。特にSGLT2阻害薬を使用している場合には注意が必要としています。

#血中にケトン体が急激に増加すると血液が酸性に傾く「ケトアシドーシス」を引き起こしたり、吐き気・倦怠感などの症状が出ることがあり、医師や管理栄養士の指導のもとで行う必要があります。

どの食事法が最適なのかは患者一人一人による

今回の合同レポートが示したのは、糖尿病患者全員に共通する一つの理想的な食事法があるわけではないということです。

食事療法では、食べ物の質と量の両方を重視し、患者それぞれの状態に合った、続けられる食事を選ぶことが推奨されています。

例えば、
・体重を減らす必要がある人では摂取カロリーを調整する
・心血管疾患のある人では地中海食を検討する
ことなどが、今回のレポートに示されていますが、

北里大学病院の山田氏は、
日本では地中海食をそのまま実践することが食文化の違いから難しい面もあると指摘し、日本人の食生活に合った方法を考える必要性を述べています。

現在の食事療法をすぐに変更するということではなく、自分の体重、血糖値、使用している薬などを踏まえて、どのような食事法が適しているかを主治医や管理栄養士と相談することが、今回の指針に沿った取り組みになります。

まとめ

2026年のADA/EASD合同レポートでは、5つの食事法を取り上げましたが、

5つのうちどれが最も優れているかではなく、あなたの健康状態や生活に合った食事法を選び、継続することが重要なのです。

👉 糖尿病の食事について詳しく見る

参考文献

1. Management of type 2 diabetes, 2026. A consensus report by the ADA and EASD. Diabetologia. 2026.

2. Management of Hyperglycemia in Type 2 Diabetes, 2022. A Consensus Report by the ADA and EASD. Diabetes Care. 2022.

3. 山田悟.【速報解説】ADA/EASD 2型糖尿病管理指針が4年ぶり改訂.Medical Tribune.2026年10月7日.