糖尿病に良い脂肪をご存じですか
今日もご覧になっていただきありがとうございます。
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた けんぞう です。
糖尿病治療薬の開発を行っていた私が言うのも何ですが、
糖尿病の治療では食事療法と運動療法が基本なのです。
今日も科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝えいたします。
はじめに
DHAやEPAなどの脂肪酸は動脈硬化予防や認知症予の効果があることが知られています。
糖尿病によい脂肪をご存じですか?
糖尿病に良い脂肪をたくさん摂れば糖尿病のリスクを50%も低下することが報告されています。
糖尿病に良い脂肪と悪い脂肪がある
魚に多く含まれる多価不飽和脂肪酸、特にドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコタペンタエン酸(EPA)は、動脈硬化予防、がん抑制、認知症予防などの効果があると言われています。
さらに海外では、糖尿病の発症には糖質だけでなく、脂質も関係しているという研究も報告されています。
脂肪と脂質
脂質という言葉がよく使われますが、脂肪と脂質はどう違うのか、ちょっと整理してみましょう。
脂肪とは動植物に含まれる栄養素で、炭水化物(糖質)、蛋白質とともに三大栄養素の一つです。
これに対して脂質とは生体の構成成分の一つで、中性脂肪やコレステロールが含まれます。
健康増進法という、国民の健康維持と現代病予防を目的として制定された法律では、栄養成分の表示は脂肪ではなく脂質となっています
少々ややこしいのですが、元をたどれば同じですから、余り言葉の違いを気にする必要はありません。
さて、脂質はいくつかに分類されます。
魚や植物に含まれる脂質は不飽和脂肪酸と言われますが、その中の青魚に含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)は、動脈硬化抑制などの作用があることは良く知られています。
リノール酸やリノレン酸は糖尿病に良い
国立国際医療センター・臨床研究センターの疫学予防部の研究グループは、
植物油のリノール酸やオレイン酸を多く摂取している人は糖代謝異常の割合が約50%低い
という研究報告をしています。
Plant oils were associated with low prevalence of impaired glucose metabolism in Japanese workers.
PLoS One. 2013 May 31;8(5):e64758.
詳しく見る ⇒ 原著論文(英文)
研究グループは、
欧米では摂取する脂質の種類と糖尿病についての多くの研究がなされているが、
日本人は、リノール酸やEPA,DHAが豊富に含まれる魚を日常的に摂取しているが、日本人を対象にした「脂質の種類と糖尿病」を調べた研究はなされていないとして、
摂取する脂肪酸と糖代謝異常との関連について疫学的研究を行ったのです。
この研究では、
- 18~69歳の循環器疾患、肝疾患、腎疾患のない1,065名
- 簡易型自記式食歴法質問票により食事内容を評価
そして、
- 糖代謝異常の有無
との関連を調べたのです。
糖代謝異常としては、
- 糖尿病の既往
- 糖尿病の薬の服用
- 空腹時血糖値110㎎/dl以上
- ヘモグロビンA1c(NGSP値)6.0%以上
のいずれかに該当する人としています。
その結果は、
脂質の摂取量とその脂質の由来によって、
- 魚油パターン
- 肉脂パターン
- 植物油パターン
の3群に分けて、糖代謝異常 との関連を調べたところ、
植物油の摂取量が多い人では糖代謝異常が50%少ない
ことが判明したのです。
植物由来の脂質の摂取量が多い人は少ないヒトに比べて、糖尿病や糖尿病予備軍の比率が50%少なかったのです。
さらに、
各脂肪酸の摂取量と糖代謝異常を調べたところ、
リノール酸とオレイン酸の摂取量が多い人では糖代謝異常が少ない
ことが分かりました。
魚に多く含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコタペンタエン酸(EPA)の摂取量と糖代謝異常とについては統計学的に意味のある関連は無かったとしています。
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リノール酸やオレイン酸は糖尿病に良い
今回の国立国際医療センター・臨床研究センターの疫学予防部の研究グループの研究から、
オレイン酸やリノール酸の摂取は糖尿病の発症を抑制する
ということが明らかになりました。
欧米における研究でも、リノール酸の摂取量が多いほど糖尿病のリスクが低下することが報告されています。
また、植物油の摂取が多いと糖代謝異常が少ないという結果も、糖尿病にはオリーブオイルを使った地中海食が良いという多くの報告と一致している結果です。
一方、動脈硬化にはEPAやDHAが良いと言われていますが、今回の研究グループの成績では、糖尿病とは有意な関連が認められませんでした。
これについては、
アジアで行われた疫学調査では、EPAやDHAの摂取が糖尿病のリスクを低下するとの成績が得られており、摂取する魚の種類や調理方法の違いが有るためでは無いかと考察しています。
EPAやDHAなどのオメガ3脂肪酸(n-3脂肪酸)には、動脈硬化予防、がん抑制、認知症予防などの効果があることは多くの研究で報告されていますので、
今回明らかになった、
- 植物油は糖代謝異常を50%低減する
- リノール酸やオレイン酸は糖尿病のリスクを低減する
ということと合わせて考えても、糖尿病の予防には積極的に摂るべきだと思われます。
各脂質と健康効果については既に、「糖尿病予防の脂質の量と質」でもお知らせしたように、下記の一覧表を参考にしてください。
リノール酸やオレイン酸を多く含む植物油といえば、
- ベニバナ油
- 大豆油
- オリーブ油
- アーモンド油
- 菜種油
などが相当します。
名称 | 成分 | 食品 | 作用 |
---|---|---|---|
オメガ6脂肪酸 | リノール酸 リノレン酸 アラキドン酸 |
ベニバナ油、大豆油 母乳、月見草油 体内合成、魚油 |
コレステロール低下
摂り過ぎはDHLを減少 |
オメガ3脂肪酸 | リノレン酸 EPA DHA |
エゴマ、シソ油 青魚 青魚 |
動脈硬化予防、がん抑制、認知症予防 |
一価不飽和脂肪酸 | オレイン酸 | オリーブ油 アーモンド油 菜種油 |
LDLコレステロールを減少 HDLコレステロールを増加 |
さらに、
でもお知らせしたように、クルミにはオメガ3脂肪酸が豊富に含まれ、糖尿病のリスクを下げることが知られていますから、ちょっと小腹が空いたときなどにはクルミをつまんではいかがでしょうか。
- 調理にはオリーブ油などの植物油
- おやつにはクルミ
これで糖尿病のリスクを下げることができます。
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