糖尿病の運動療法も週2回で良い
今日もご覧になっていただきありがとうございます。
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた けんぞう です。
糖尿病治療薬の開発を行っていた私が言うのも何ですが、
糖尿病の治療では食事療法と運動療法が基本なのです。
今日も科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝えいたします。
はじめに
運動は健康や肥満防止に良いことは誰でも知っています。
でも、継続して運動を続けることはなかなか大変ですよね。
しかし、
週にたった1~2回の運動でも、
- 全ての死因による死亡率が下がる
- 心血管疾患による死亡率が下がる
- がんによる死亡率が下がる
という可能性があるというのです。
糖尿病でも立っている時間が長いだけで血糖値が下がるというのです。
運動はジムに行って汗を流すだけではないのです。
これなら忙しいあなたにもできるのではないでしょうか?
週2回の運動で死亡率が低下する
イギリスのラフバラ大学の研究グループは、
週に1~2回の運動で全ての原因による死亡率を低下させる可能性がある
と、JAMA Internal Medicine誌に発表しました。
Association of “Weekend Warrior” and Other Leisure Time Physical Activity Patterns With Risks for All-Cause, Cardiovascular Disease, and Cancer Mortality.
Conclusions and Relevance :
Weekend warrior and other leisure time physical activity patterns characterized by 1 or 2 sessions per week may be sufficient to reduce all-cause, CVD, and cancer mortality risks regardless of adherence to prevailing physical activity guidelines.
詳しく見る ⇒ 原著論文
この研究は、1994~2012年にイギリスとスコットランドにおける健康調査に参加した40歳以上の男女のデータを解析し分かったものです。
運動の回数や量は、自己申告によって、
- 運動しない群 : 中~強い運動を全くしない
- 運動が不十分な群 : 中程度を週150分以下、強い運動を週75分以下
- 週末に運動する群 : 週末に1~2回運動、中程度の運動を週150分以上か強い運動を75分以上
- 定期的に運動する群 : 週3回以上、中程度週150分以上または強い運動を75分以上
という4群に分けました。
研究の対象になったのは、6万3,591人で、
追跡期間中に8,802人が死亡。
内訳は、
- 心血管疾患による死亡 : 2,780人
- がんによる死亡 : 2,526人
でした。
研究グループはこの4群におけるハザード比を計算しています。
ハザード比とは、アウトカム(この場合は死亡)が発生する割合を示す相対的な指標ですが、ここでは信頼限界を省いて下記に紹介します。
その結果、
全死因死亡率については、
運動しない群に比べて、
- 運動が不十分な群 : 34%減少
- 週末に運動する群 : 30%減少
- 定期的に運動する群 : 35%減少
心血管疾患による死亡率については、
運動してない群に比べて、
- 運動が不十分な群 : 40%減少
- 週末に運動する群 : 40%減少
- 定期的に運動する群 : 39%減少
がんによる死亡率については、
運動しない群に比べて、
- 運動が不十分な群 : 17%減少
- 週末に運動する群 : 18%減少
- 定期的に運動する群 : 21%減少
という結果が得られたのです。
研究グループの代表であるGary O’Donovan氏は、
週に1~2回程度の運動をするだけでも心疾患やがんなどの全ての死亡率を低下させる可能性がある
と結論しているのです。
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糖尿病の運動は20分のウォーキングでも良い
糖尿病の治療の基本は、
- 食事療法
- 運動療法
です。
適度な運動を続けることで、高血圧や高血糖、高コレステロールなどを改善でき、
上に紹介したように、週1~2回程度の運動で死亡率をも低下させることができるのです。
糖尿病に関しては、
- ウォーキングなどの活発な運動を週に150分以上行うのが理想的
- それが無理ならば1日20分のウォーキングでも効果がある
との研究報告があります。
Lack of exercise responsible for twice as many deaths as obesity
A brisk 20 minute walk each day could be enough to reduce an individual’s risk of early death, according to new research published today. The study of over 334,000 European men and women found that twice as many deaths may be attributable to lack of physical activity compared with the number of deaths attributable to obesity, but that just a modest increase in physical activity could have significant health benefits.
くわしく読む ⇒ 原著論文
この研究は、ヨーロッパの334,000を超す人をを対象に調査したもので、
肥満など生活習慣病による死亡者が増えているが、運動不足による死亡が2倍で、
毎日20分のウオーキングが肥満などに伴う死亡を低下させる
ことが分かったというのです。
研究グループは、
週に150分にまで増やすことが理想的
だとしています。
毎日20分のウォーキングだけでも、全く何も行わない場合に比べ死亡率に大きな差が出るのです。
1日に20分のウオーキングとはサラリーマンであれば決して無理なことではありません。
- 電車やバスを使わずなるべく歩いて通勤する
- エレベータやエスカレータを使わず階段を使う
といった簡単なことで10分のウォーキングは達成できるのです。
研究グループは、
10分のウォーキングから開始し、それを20分に増やす、、
ということを薦めています。
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糖尿病で必要な運動の種類と運動量
糖尿病の運動療法と行っても難しいことではないことがお分かりいただけたでしょうか?
以前に紹介したように、
ということが分かっており、座る時間を短くするだけでも効果があるのです。
体重60kgの人が、100kcalを消費する運動量は、糖尿病の運動療法で必要な運動の種類と運動量でもお話ししましたように、下記のような関係です。
100kcalとは、ご飯茶碗で半分です。
100kcalを消費する運動量は運動量は、
運動の種類 | 継続時間 |
普通歩行、自転車エルゴメータ、ウエイトトレーニング、ボーリング、バレーボール | 32分 |
速歩、自転車、アクアビクス、卓球、太極拳 | 24分 |
早い歩行く、ソフトボール、野球 | 19分 |
ジョギングと歩行の組み合わせ、ジャズダンス、バスケットボール | 16分 |
ということで、
100kcalを消費するには、
- ウオーキング20分
- ジョギング10分
が必要なのです。
糖尿病の運動療法では、
ウオーキングであれば1日約1万歩が目安ともいわれますが、
消費エネルギーに換算すれば1600~240kcalに相当するのです。
ウオーキングであれば、
- 1回、15~30分間、朝夕2回
ということになります。
毎日でなくても良いですが、最低でも1週間に2回以上は実行して下さい。
糖尿病では糖質制限などの食事療法も大事ですが、運動療法も不可欠なのです。
今回ご紹介した研究論文でも、
運動習慣のない人は、少しの時間でも良いので今すぐ運動をはじめるべきです
と強調しています。
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