糖尿病を呼気で診断|東京医科歯科大

糖尿病では血糖値が高くなり、糖は尿へも排泄されます。

尿糖が検出されれば糖尿病の可能性が高いのですが診断には血液検査が必要です。

糖尿病の確定診断には、空腹時血糖値やHbA1c値の測定、さらにはブドウ糖負荷試験を行う必要があります。

しかし、採血せずに呼気で糖尿病を診断する技術の開発が進んでいます。

呼気で糖尿病を診断する|東京医科歯科大

東京医科歯科大学、生体材料工学研究所の三林浩二教授らの研究グループは、糖尿病患者の呼気の中に含まれる微量成分を検出し、糖尿病の進行度の評価につながる技術を開発し、

2016年9月14日に札幌で開催された日本分析化学会第65年会で発表しました。

アセトン用バイオスニファ(気相用バイオセンサ)と呼気計測応用による非侵襲代謝評価

鈴木 卓磨1 ・ 簡 伯任1 ・ 辻井 誠人1 ・ 叶 明1 ・ 當麻 浩司2 ・ 荒川 貴博2 ・ ○三林 浩二1,2
医科歯科大院1 ・ 医科歯科大生材研2

アセトン臭は糖尿病のサイン

糖尿病は余り顕著な自覚症状がない病気ですが、

初期症状としては、

  1. 喉が渇く
  2. 尿量が多い
  3. 独特の口臭がする

などがあると言われています。

「独特の口臭」とは、アセトン臭といわれる臭いです。

アセトンとは、化学薬品の有機溶媒と言われるもので、アセトン臭とは果物の腐ったような甘酸っぱい臭いです。

 

血糖尿病ではインスリンが不足するため、糖を分解してエネルギーを作ることができなくなるので、脂肪や蛋白質をエネルギー源として利用するようになります。

脂肪や蛋白質が分解されるときに副産物としてケトン体という物質が作られ、ケトン体にアセトンが含まれるために、糖尿病患者の口臭や体臭はアセトン臭がするのです。

 

東京医科歯科大学、生体材料工学研究所の三林浩二教授らの研究グループは、糖尿病患者の呼気中のアセトンを検出し、診断する技術を開発中です。

 

呼気中のアセトンとセンサー中の酵素との化学反応を利用して、20~5,300ppb(ppbは10億分の1)の濃度アセトンを検出する技術により、採血すること無しに糖尿病の進行度を調べることができるようになるいというのです。

 

東京医科歯科大が開発した糖尿病の呼気診断法とは

 

原理はやや難しく、私も十分説明できないのですが、2級アルコール脱水素酵素がアセトンと反応すると、ある蛍光物質がが減少し蛍光が弱まることに着目し、蛍光強度の減少度合いでアセトン濃度を推定する仕組みだということです。

 

糖尿病患者以外でも、空腹時や運動後には呼気のアセトン濃度が高くなることから、

健康な20~80歳代男女100人において、

 空腹時(食後10~20時経過)の呼気を測定したところ、食後5時間未満の健常人の呼気のアセトン濃度に比べ1.6倍高いこと、

さらに、

 自転車のペダル踏み30分後に呼気のアセトン濃度が30%上昇し、その後1時間半程度で運動前の値に戻るとを確認した、

ということから、実用化の目処がついたと判断されます。

東京医科歯科大は1型糖尿病でも検証

2016年2月14日の日本経済新聞では、

東京医科歯科大学の研究グループが、呼気中のアセトンの検出によって子供の1型糖尿病jの検出し、学校での歯科検診の際に呼気検査を行うことにより、世界で年間に9万人の子供が発症するという1型糖尿病の早期発見や早期治療が可能になると報じています。

 詳しく見る ⇒ http://www.tmd.ac.jp/i-mde/www/inst/PDF/160214-Nikkei-Acetone%20sniffer.pdf

呼気によ診断できる可能性のある疾患は糖尿病だけでなく、

  • 糖尿病 : アセトン
  • 食道癌 :アセトアルデヒド
  • 慢性気管支炎 : 胃酸か炭素
  • 気管支喘息 : 一酸化窒素
  • 肝硬変 : アンモニア
  • 高脂血症 : イソプレン


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呼気による糖尿病の診断が、、、

東京医科歯科大学の呼気による糖尿病診断の実用化もそれほど遠いことではなさそうですが、

糖尿病の呼気診断技術を開発しているのは東京医科歯科大学の研究グループだけではありません。

国立研究開発法人である物質・材料研究機構のグループやNTTドコモはも、呼気による糖尿病診断技術の開発を進めています。

 詳しく見る ⇒ 糖尿病を呼気で診断する

物質・材料研究機構の呼気による糖尿病診断技術

国立研究開発法人:物質・材料研究機構は、大阪大学、京セラ、NEC、住友精化、スイスの精密機器メーカーと共同で、呼気による糖尿病診断のかいはつをすすめています。

この研究グループでは、既に、呼気の中の含有物質を高精度で解析するセンサーの開発に成功しています。

この小センサーは、数ミリ四方の非常に小さな大きさで、センサーの中の特殊な「膜」が呼気中の含有物質を検知することができるのです。

このセンサーを、スマートフォンに搭載、あるいはパソコンなどに接続することにより、解析結果をグラフや数値で表示することができるのです。

センサーの価格は数百円程度で量産することが可能だそうです。

6年後には呼気で糖尿病を診断できるようになる

今後は、がんや糖尿病患者の呼気に含まれる物質の検出や解析に関するデータ収集や精度の向上を図りるそうですが、厚労省の医療機器の承認などに6年を要すると見積もっており、実用化は2022年としています。

研究グループでは、将来的には、センサーをスマートフォンなどに搭載し、個人でも手軽に糖尿病などの疾患をチェックできるようになれば、早期発見に大きく寄与でき、疾患の重篤化の予防にもつながり、医療費削減にも寄与できると期待しているのです。

NTTドコモの呼気による糖尿病診断技術

NTTドコモは、呼気アセトン計測装置を開発中で、「バイオチップ携帯」の実用化を目指しています。

NTTドコモは、呼気中のアセトンの測定により生活習慣病や糖尿病の検出を可能とし、さらに、スルフォラファンなどへの搭載した「バイオチップ携帯」の実用化を目標に開発を進めているのです。

 

ドコモは呼気で糖尿病を診断する機器を開発した「

 

 

すでに、株)スマートサービステクノロジーズと九州大学、福岡県産業・科学技術振興財団などの共同研究グループが開発・製造した、「ネットワークヘルスキオスク」に、このドコモの呼気計測装置を実装することで締結しており、実用化も間近の段階で、

2016年3月31日から中国・上海市で、「ネットワークヘルスキオスク」の有用性を検証するために実証実験を開始しました。

 

呼気による糖尿病診断技術の開発が加速しており、数年後には呼気で糖尿病を診断できるようになると予測されます。

呼気による糖尿病の診断が可能になれば、

  1. 糖尿病の早期発見
  2. 血糖値のモニタリング
  3. 糖尿病の病状判定

が個人レベルでも簡単にできるようになると思われます。

しかし、、、

呼気による糖尿病の診断ができても、あなたの糖尿病は治りません

糖尿病を改善するのはあなたの食事療法です。

日本糖尿病学会が推奨している糖尿病の治療は

  1. 食事療法
  2. 運動療法

が基本なのです。

頑張って食事療法に取り組んでみませんか?


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