糖尿病ではフレイルや要介護が多い

高齢の女性の糖尿病患者では半数がフレイルに該当するそうです。

サルコペニアの人も19%と一般の高齢者より高率です。

高齢の女性糖尿病患者はフレイルやサルコペニアによる要介護者が多いのです。

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女性の糖尿病患者ではフレイルが多い

京都大学の東佳穂氏らは、第59回日本糖尿病学会年次学術集会(5月19~21日、京都市)で、

60~80歳の高齢糖尿病患者では、

  1. 患者の1/3はフレイル状態
  2. 女性患者では約50%がフレイル
  3. 女性患者では19.2%がサルコペニア

だったということを発表しました。

京都大学病院に外来通院中で、認知機能の低下がない60~80歳の糖尿病患者121例(男性78例、女性43例)を対象に、厚生労働省の基本チェックリストを用いて評価したところ、

  1. 患者の33.1%は要介護となるリスクが高いフレイルの状態
  2. 女性では51.2%がフレイルで男性の23.1%より有意に高率
  3. 女性の32.5%で運動機能低下があり男性の9.0%より有意に高率
  4. 栄養状態低下は0.8%(男性1.3%、女性0%)で低い

という結果が得られたのです。

また、19.2%(男性19.2%、女性16.3%)でサルコペニアが認められ、男女差はなかったが、判定基準の1つである握力の低下がは22.3%(男性21.8%、女性23.3%)に認められたそうです。

60~80歳の高齢糖尿病患者の1/3が要介護になるリスクが高いフレイル状態で、女性に限ると約50%に達し、サルコペニアも19.2%と一般高齢者よりも2倍以上高率だったことから、研究グループの代表者である東氏は、高齢糖尿病患者に対するフレイルの予防対策の必要性があると述べています。

フレイルとは何か

日本老年医学会は、フレイルとは健常な状態と日常生活でサポートが必要な状態である要介護状態の中間の状態だとしています。

  健康な状態 → フレイル → 要介護状態

高齢者では、健常な状態から、フレイルの時期を経て要介護状態に至るのです。

フレイルは英語ではfrailtyと書き、日本語訳としては、虚弱、脆弱などなどが使われますが、2014年5月、日本老年医学会は、「フレイル」として統一を提唱しました。

 

日本老年医学会では、フレイルを下記の様に定義しています。

フレイルの定義

  1. 体重減少 : ダイエットなどに関係ない体重減少が年間4.5kgか、5%以上の減少
  2. 疲れやすさ : 何をするのも面倒、新しく始めることができない、と週に3~4日以上感じる
  3. 活動量低下 :  1週間の活動量が男性では383Kcal未満、女性では270Kcal未満
  4. 歩行速度の低下 :  標準より20%以上歩行速度が低下
  5. 筋力低下 :  標準より20%以上低下

上の5項目で3項目以上該当すればフレイル。1~2つが該当すればプレフレイル。

フレイルになると、どんな状態になるのか?

フレイルの状態に至ると、

  • 7年間の死亡率が健常な人に比べて約3倍
  • 身体能力の低下が約2倍

という報告があります。

フレイルの状態になると、様々なストレスに弱い状態になっています。

具体的には、通常な人では風邪に罹患すると発熱している時にはふらついたり、ぼーっとしたりしますが、薬を飲んだり充分睡眠をとればやがて自然に回復します。

フレイル状態の人が風邪を引くと、

  • ふらつきがひどく転倒する
  • ぼーっとを超して意識混濁する

という状態になったりしてしまい、入院をしたりすると、自分が何処にいるのかが分からない「せん妄」状態になってしまうこともあります。

フレイルの状態になると、通常の人では何でもないようなことが大きなストレスとなり、様々な負の連鎖が起こりやすい状態になっているのです。

フレイルの状態ではこれらのストレスに上手く対応しないと容易に要介護状態に至ってしまう可能性があるのです。


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サルコペニアとは何か

高齢の糖尿病女性患者では19.2%がサルコペニアだということですが、サルコペニアとは何だかお分かりですか?

サルコペニアとは、加齢によって体の筋肉量が著しく減少することをいいます。

サルコペニアという言葉は、ギリシア語で「肉」を表すsarx(sarco:サルコ)と、「喪失」を表すpenia(ペニア)を組み合わせた造語で、筋肉の喪失という意味です。
加齢に伴う筋肉量の減少は、高齢者の歩行や運動機能などの身体機能に大きく関連しており、老齢医学では重要な指標になっています。

 

私達の筋肉量は、個人差がありますが、加齢に伴って減少し、およそ40歳を境にして徐々に減少していきます。

減少速度も個人差がありますが、加齢によって加速し、60歳を過ぎると年間で5%もの筋肉量が減少すると言われています。

筋力の低下に伴って、転倒、口腔機能の低下、認知機能の低下、尿失禁、筋肉の衰弱、歩行障害や関節障害など、高齢社の生活にマイナスの影響を及ぼす種々の症状が発現してしまいます。

サルコペニアでは、歩行障害、転倒といった要支援や要介護状態の大きなきっかけを作ることになってしまいます。

サルコペニアは糖尿病を悪化させる

高齢の糖尿病患者、特に女性の糖尿病患者ではサルコペニアが多いとの事実が明らかになったのですが、サルコペニアは糖尿病を悪化させる大きな原因になります。

筋肉は身体の運動を行うの際に必要ですが、体の糖代謝の大半を占める臓器です。
すなわち、筋肉は血糖を最も多く消費する臓器なのです。

筋肉が減ることにより、血糖の種被量が減り、血糖値が益々下がらなくなります。

また、筋肉のインスリン感受性が悪化すれば、インスリンの効果が弱くなり、血糖値はさらに下がりにくくなってしまいます、、、。

フレイルやサルコペニアを防いで糖尿病を改善

フレイルやサルコペニアは糖尿病を悪化させ、要介護へと進んでしまいます。

しかし、フレイルやサルコペニアは予防も回復も可能なのです。

フレイルやサルコペニアを予防する

フレイルやサルコペニアを予防、回復するには、

  1. 栄養の摂取
  2. 運動の励行

です。

フレイルの状態をできるだけ早期に発見し、早期に対応することで、要介護に至るのを防いで健康寿命を延ばすためにさまざまな研究が行われ、厚生労働省もフレイル対策を政策に取り入れ、「高齢者の低栄養防止・重症化予防等の推進」に10.7億円の予算を計上しています。

日本糖尿病協会は、東京都健康長寿医療センターの荒木厚部長の監修による「フレイルを予防する」という小冊子を発刊(https://www.diabetes.co.jp/data/booklet6.pdf)していますが、

その中で、

 レジスタンス運動を行い、食事に気を付け、フレイルを防ぐ

と述べています。

レジスタンス運動とは、「筋肉に負荷をかけて筋力を強くする筋力トレーニング」で、水中歩行、自転車こぎ、スクワットなどの運動です。

食事では、筋肉を増やすために良質の蛋白質も必要です。腎機能障害により蛋白質の摂取を制限されている方を除いては肉などの蛋白質も摂ることが必要なのです。

 

高齢の糖尿病患者ではフレイルやサルコペニアが多いことが明らかです。

フレイルやサルコペニアを放置すれば介護が必要な生活になってしまいます。

フレイルやサルコペニアは食事と運動で防ぐことが可能なのです。


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