今日もご覧になっていただきありがとうございます。
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた けんぞう です。
糖尿病治療薬の開発を行っていた私が言うのも何ですが、
糖尿病の治療では食事療法と運動療法が基本なのです。
今日も科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝へします。
はじめに
高血糖の原因は炭水化物の摂りすぎが原因です。
最近の研究でも、「低炭水化物食」は血糖値や脂質を下げ、糖尿病治療薬の服用量まで減少することが明らかになったのです。
あなたは炭水化物を摂り過ぎていませんか?
炭水化物の量を少し減らすだけで、血糖値は驚くほど改善します。
低炭水化物食は糖尿病薬の用量を減らす
アメリカの糖尿病学会では、2013年に糖尿病の食事療法を見直し、従来までの「カロリー制限」から「糖質制限」の方に舵をを切り直しました。
詳しく見る ⇒ 糖尿病の食事法は糖質制限がベスト
国内で、「炭水化物制限」や「糖質ゼロ」などの食事法を提唱している本がたくさん出ていますが、「糖質制限」には賛否両論があるようです。
海外でも炭水化物制限についてさまざまな研究がおこなわれていますが、この度、オーストラリアの研究グループが興味深い研究成果を発表したのでご紹介しましょう。
この研究では、糖尿病患者を対象に、1年間に亘って、「低炭水化物食」と「高炭水化物食」を比べたところ、低炭水化物食にすると、脂質や血糖値の安定性が高まって、糖尿病薬の用量を減らすとが分かったのです。
Comparison of low- and high-carbohydrate diets for type 2 diabetes management: a randomized trial.
詳しく見る ⇒ Am J Clin Nutr. 2015 Jul 29.
「低炭水化物食」と「高炭水化物食」を比較
研究グループは、1医療施設の糖尿病患者を対象に、1年間に亘ってに糖尿病に及ぼす「低炭水化物食」と「高炭水化物食」の影響を調べました。
対象患者は、
- 糖尿病で肥満の115人
- 平均年齢 : 58歳
- BMI : 平均35 (日本では25以上で肥満と診断)
- HbA1c : 7.3% (日本では6.5%以上で糖尿病と診断)
- 糖尿病歴 : 8年
これらの患者に、1年間に亘って炭水化物量の異なる食事を摂らせたのです。ま
低炭水化物食 : 低カロリーで炭水化物を減らした食事
カロリーのうち
炭水化物 14%
蛋白質 28%
脂質 58%
飽和脂肪酸 10%未満
高炭水化物食 : 低カロリーのままに炭水化物を増やした食事
カロリーのうち
炭水化物 53%
蛋白質 17%
脂質 30%
飽和脂肪酸 10%未満
運動 : 両群とも、週3回、 有酸素レジスタンス運動60分
血糖値の変化
高炭水化物食では血糖値が0.9mg/dL低下したが、低炭水化物食では9mg/dL低下。
血中脂質の変化
高炭水化物食では中性脂肪が0.9mg/dL減少したが、低炭水化物食は35 mg/dL減少。
は高炭水化物食ではHDLコレステロールが2.3mg/dL増加したが、低炭水化物食は3.9 mg/dL増加した。
糖尿病薬が減少
低炭水化物食グループでは、高炭水化物食グループに比べ、血糖コントロールに必要な糖尿病薬の量が減少した高炭水化物食では0.2単位の減少に対して低炭水化物食は0.5単位の減少だった。
低炭水化物食 | 高炭水化物食 | |
血糖値 | 9mg/dL低下 | 0.9mg/dL低下 |
中性脂肪 | 35 mg/dL減少 | 0.9mg/dL減少 |
HDL | 3.9 mg/dL増加 | 2.3mg/dL増加 |
糖尿病用薬 | 0.5単位減少 | 0.2単位減少 |
低炭水化物食では明らかに糖尿病症状の改善が見られているのが一目瞭然です。
Sponsored Link
日本の糖尿病食事法
日本糖尿病学会では、2013年3月18日に、
「日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言 ~糖尿病における食事療法の現状と課題~」
を発表し、
「食事療法は全ての糖尿病患者において治療の基本である。食事療法によって血糖コントロール状態が改善される」
としました。
詳しく見る ⇒ 日本糖尿病学会の食事法
その中で、糖尿病患者の具体的方糖尿病食事療法として次のような項目を明記しています
日本糖尿病学会の推奨する糖尿病患者における食事療法
糖尿病が推奨している食事療法の具体的内容は、
- 適正なエネルギー量の食事をとりましょう
標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22
軽労作 : デスクワークが主な人・主婦など :25~30kcal
普通の労作 : 立ち仕事が多い職業 : 30~35kcal
重い労作 : 力仕事の多い職業 : 35kcal~ - 一日3回規則正しく食べましょう
- 栄養のバランスが偏らないようにしましょう
三大エネルギーの配分
炭水化物は必要エネルギー量の50%以上で60%を超えない範囲とし
蛋白質量は標準体重1kg当たり1.0~1.2g、残りを脂質で摂取する。
摂取エネルギー量を、「身体の大きさ」と「仕事量」で制限するのは理にかなったことです。
身体が大きければ基礎代謝量が大きいですから当然必要なエネルギーも多いですし、重労働をしているヒトでは軽作業のヒトよりも多くのエネルギーを消費するのは当然のことだからです。
1日きちんと3回の食事を摂ることも当然のことですし、栄養バランスが偏らないことも健康な身体を維持するためには当然のことです。
問題は、
炭水化物は必要エネルギー量の50%以上で60%を超えない範囲、という部分です
これは、1日に必要なエネルギーの50~60%は炭水化物から摂りなさいということです。
糖尿病学会の推奨は高炭水化物食
上でご紹介した論文ではどんな食事だったでしょうか、
- 低炭水化物食 : 14%
- 高炭水化物食 : 53%
糖尿病学会が推奨する食事療法
- 低炭水化物食 : 50~60%
糖尿病学会の推奨する食事療法では非常に炭水化物の比率が高いのです
Sponsored Link
低炭水化物食が糖尿病に良いワケ
どうして糖尿病の食事療法は低炭水化物食が一番なのでしょう。
それは、
血糖値を上げるのは炭水化物だけだからです
実は、これを理解している方が意外に少ないのです。
血糖値を上げるのは炭水化物だけ
私達がエネルギーを得るために食べている食物は三大栄養素である、
- 炭水化物
- 蛋白質
- 脂質
だけです。
ミネラル、ビタミンも重要ですが、これらはエネルギー源ではなく、身体の調子を整えたりするような働きをします。
三大栄養素が消化されると、
- 炭水化物 → 糖
- 蛋白質 → アミノ酸
- 脂質 → 脂肪酸、グリセリン
になり、血中に吸収されます。
糖尿病で問題になる「血糖」は全て炭水化物に由来しているのです。
炭水化物、脂肪の摂取量をいくら制限しても、炭水化物を豊富に摂っている限りは血糖は下がるわけはないのです。
炭水化物を摂らなければ血糖は下がる
「明日から血糖値が下がる」、「血糖値が3日で下がる」というようなキャッチコピーを見たことがありませんか?
これは、誰でもできる簡単なことなのです。
試しに、
- 好きなものを、好きな量だけ、いくら食べても良い
- だたし、炭水化物は一切食べない
ということをしてみてください。
炭水化物とは、「ご飯」、「麺類」、「イモなどの根菜類」です。
翌日には血糖値が確実に下がります。
これが、糖尿病における、「炭水化物ゼロ」、「糖質ゼロ」なのです。
低炭水化物食が非難される理由
こんなに良い、低炭水化物食がどうして受け入れられないのでしょうか?
低炭水化物食がどうして非難されるのでしょうか?
それは、極端すぎるからです。
- 炭水化物は絶対食べるな!
- 糖質ゼロの制限食!
- 主食を食べるな!
日本人なら、主食である「ご飯」、「麺類」を全く食べないということは耐えられないことです。
例えば、1週間、10日間という短期間であれば耐えられたとしても、「今後一切ご飯は食べてはいけない」といわれても守れる人はいないでしょう。
頑張っても、1ヵ月程度が限度です。
かのライザップでも期間の30日が過ぎてしまえば、リバウンドで元に戻ってしまう人が続出との話も聞きます。
炭水化物をゼロにする必要はない
勘違いしていませんか?
低炭水化物食、糖質制限食というのはゼロにすることではありません。
上の研究でもお分かりのように、
53% → 14%
にすれば良いのです。
減らした分を、蛋白質や脂肪で補うのです。
あなたの食生活をイメージすれば、
- ご飯を半分にする
- ステーキを50%増やす
ことなのです。
これが、低蛋白質食、糖質制限食なのです。
あなたの血糖値を下げるには、炭水化物の量を減らすことです。
低炭水化物食であなたの血糖値は必ず下がります。
詳しく見る ⇒ 糖尿病の食事療法は糖質制限がベスト
糖尿病を治せるのはあなたの食事療法だけです
関連記事(一部広告を含む)