耳が聞こえにくいなら糖尿病の合併症
糖尿病の人が耳が聞こえにくいなら合併症の可能性があります。
糖尿病の三大合併症は、神経障害、網膜炎、腎障害ですが、難聴も糖尿病の合併症なのです。
歳のせいなどと思わず、糖尿病で耳が聞こえにくくなったら受診してください。
耳が聞こえにくくなったら糖尿病合併症
糖尿病の合併症といえば、
- 糖尿病神経障害
- 糖尿病性網膜炎
- 糖尿病性腎症
が、糖尿病の三大合併症として有名ですが、最近の研究で注目されているのが難聴なのです。
糖尿病では難聴を合併しやすい
アメリカのニューヨーク州立大学の研究グループは、
2型糖尿病患者は難聴を合併するリスクが高い
とする研究論文を発表しています。
Type 2 Diabetes and Hearing Impairment
Current Diabetes Reports January 2016, 16:3
http://link.springer.com/article/10.1007/s11892-015-0696-0
研究グループは、既に発表されている、糖尿病と難聴の関連を検討した多くの論文を精査した結果、
糖尿病と難聴には関連性が認められた
と結論しています。
さらに、これらの論文では難聴の定義が統一されていないため直接的に比較することは難しいが、
特に若年の糖尿病患者で糖尿病と難聴の関連が強い傾向がみられた
とのべています。
しかし、高齢の患者では、加齢による影響など、糖尿病以外の影響も多く、難聴に対する糖尿病の影響がわかりにくかったが、高齢の糖尿病患者においても糖尿病と難聴の関連があるだろうとしています。
糖尿病は難聴のリスクを倍増させる
新潟大学の堀川氏らの研究グループは、糖尿病と難聴のリスクについて報告しています。
Diabetic Patients Have Higher Prevalence of Hearing Impairment
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolismhttps://www.sciencedaily.com/releases/2012/11/121114083224.htm
研究グループは、1995年~2004年に発表された、糖尿病と聴力障害に関する13件の研究論文を精査し、掲載された20,194人について、糖尿病と難聴との関係について精査したのです。
その結果、
ほぼすべての研究で糖尿病と聴力障害との関連性が明確
であり、
- 糖尿病の人は糖尿病でないヒトより聴力障害のリスクが2.15倍高い
- 60歳未満の糖尿病患者は60歳未満より聴力障害のリスクが2.61倍上昇
したという結果が得られたと報告しています。
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糖尿病の合併症として難聴が注目されている
糖尿病の合併症としては、
- 糖尿病神経障害
- 糖尿病網膜症
- 糖尿病腎症
が注目されていましたが、最近10年ほど、糖尿病患者の難聴については、世界中の糖尿病研究者の関心の的になっています。
最近報告された研究では、余り深刻でない糖尿病患者では44%が、深刻な症状の糖尿病患者では69.7%が難聴を患っていたとの報告もあります。
そして、糖尿病による難聴の特徴は、その多くが中程度で、60歳未満の若い人に多いことなのです。
さらに、難聴は年寄りの病気とのイメージが強いため、聴力が低下しても糖尿病が原因だとは考えておらず、糖尿病による潜在的な難聴患者数はさらに多いともいわれています。
アメリカ糖尿病学会も難聴を警告
アメリカの糖尿病学会でも、
糖尿病と難聴は最も患者数が多く最も深刻な健康障害だと述べています。
アメリカの糖尿病患者数はおよそ3,000万人とみられますが、3,450万人が何らかの聴覚障害を抱えており、聴覚障害者の多くが糖尿病患者であるとみられているのです。
そして、糖尿病患者では糖尿病でない人よりも聴覚障害のリスクが2倍高いと述べています。さらに、アメリカの8,600万人が糖尿病の前段階にあり、聴覚障害になるリスクも30%高いと警告しています。
糖尿病だとどうして耳が聞こえなくなるのか
アメリカ糖尿病学会では、糖尿病における難聴の原因は明確ではないとしながら、糖尿病合併症である糖尿病網膜症や糖尿病腎症と同じように、難聴においても内耳の毛細血管が傷害されるからではないかと述べています。
難聴は大きく2つに分類されます。
- 伝音難聴 : 外耳や内耳の音を大きくして伝える伝音機構の障害による
- 感音難聴 : 内耳の感覚細胞から大脳までの音を感知する神経の障害による
糖尿病による難聴は、内耳の神経や血管が糖尿病による持続的な高血糖により傷害されることによって起きる、感音難聴だと考えられています。
音は外耳道といわれる耳の穴で増幅され、リンパ液の波動として感じとる蝸牛に伝えられます。
これを有毛細胞が電気信号に変え、蝸牛の真ん中にあるラセン神経節という神経細胞に伝えられ、さらに、聴神経を介して、脳に伝えられるのです。
難聴を併発した糖尿病患者の剖検(検視研究)では、
- 内耳動脈硬化
- 血管条の毛細管肥厚
- ラセン神経節の萎縮
が見られていることから、高血糖により内耳の血管が傷害され、神経細胞や内耳器官を障害すると見られているのです
糖尿病の難聴はうつ病や痴呆症を誘発する
糖尿病において難聴を併発するのは、耳が聞こえなくなるだけでなくさらに大きな障害を引き起こす可能性が指摘されています
糖尿病性難聴が新たな病気を呼び起こす可能性があると指摘されているのは、
- うつ病
- 認知症
です。
聴力が落ちて、耳が聞こえなくなると、
- 相手の話を良く聞き取れなくなる
- 上手くコミュニケーションが取れなくなり
- 人との関わり合いを避けがちになる
ことで、不安感、孤独感、焦燥感が高まり、うつ病を発症してしまうことがおおいのです。
糖尿病患者ではうつ病のリスクが高いことが知られていますが、難聴はさらに拍車をかけてしまうのです。
認知症についても同様です。
糖尿病患者における高血糖により、脳の血管も障害を受け、さらに、アミロイドβの蓄積を促進するような機構が働くため、糖尿病患者では痴呆症になりやすいのですが、難聴により、耳からの刺激が減ることにより、脳の認知機能が衰えて認知症になってしまう可能性が高まるのです。
最近、難聴は糖尿病の合併症として注目されています。
糖尿病患者では難聴になるリスクが2~3倍高くなるのです。
糖尿病に難聴を併発すると、うつ病や認知症の発症率がさらに高まります。
耳が聞こえにくいと感じたら、聴力検査を受けるとともに糖尿病も疑う必要があります。
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