製薬会社で20年以上、新薬の研究開発に携わった経験をもとに、科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝えしています。
糖尿病治療では、日本糖尿病学会や厚生労働省も示しているように、食事療法と運動療法が基本です。
2026年追記
この記事を最初に書いた2023年当時と現在では、GLP-1関連薬を取り巻く状況が大きく変わっています。
現在は肥満症に正式承認されたウゴービやゼップバウンドがある一方、2型糖尿病治療薬マンジャロなどの美容・痩身目的の適応外使用が社会問題になっています。
本稿では「GLP-1関連薬」で統一しますが、正式には「GLP-1受容体作動薬」です。 GLP-1はグルカゴン様ペプチド-1(Glucagon Like Peptide-1)の略で、膵臓からインスリン分泌を促すホルモンの一つです。 さらに、GIP受容体への作用も併せ持つ薬もあり、これらも含めてGLP-1関連薬で統一しています。
2026年、厚生労働省がGLP-1関連薬の適正使用を改めて通知
この記事を最初に書いた2023年当時から状況はさらに進み、
現在ではSNSやインフルエンサーによるGLP-1関連薬の情報発信や、美容・痩身目的の自由診療広告が数多く見られるようになりました。
厚生労働省は2026年6月16日、GLP-1受容体作動薬・GIP/GLP-1受容体作動薬について、一部の医療機関で2型糖尿病や肥満症の治療目的以外に美容・痩身目的で使用されている実態があるとして、都道府県などを通じて医療機関等に適正使用の徹底を求める通知を出しました。
また、薬機法第66条では、医薬品の効能・効果などについて虚偽・誇大な広告・記述・流布をすることを「何人も」禁止しています。SNSでの発信も、広告として行われ、その内容が虚偽・誇大な効能・効果の広告などに当たる場合には、薬機法上の問題になる可能性があります。
なお、ここで山内さんの当時の動画が薬機法違反だったと判断しているわけではありません。現在のGLP-1関連薬をめぐる広告・SNS発信一般についての注意点です。
👉 GLP-1ダイエットに相次ぐ注意喚起|厚労省・糖尿病学会などの見解
はじめに|そもそもGLP-1関連薬とは何か?
そもそもGLP-1関連薬とは何か?
GLP-1関連薬は、もともとは2型糖尿病治療薬として開発された医薬品ですが、体重減少作用が大きいことが分かり肥満症を対象とした製剤も開発されたという経緯があるのです。
肥満大国である米国で、GLP-1関連薬が抗肥満薬として急速に普及し、痩せ薬として世界的に注目されるようになったのです。
国内で医薬品として承認されているのは下記の5種類。
抗肥満薬として承認されているのは、「ウゴービ」と「ゼップバウンド」の2種類だけなのです。
かまいたち山内はGLP-1ダイエットで減量したとYouTubeに投稿
かまいたちの山内健司さん(以下敬称略)は、
2023年4月16日に「かまいたちのYouTubeチャンネル」で、
「お腹に注射を打つダイエット」を受け、
3ヵ月で8kgの減量に成功し、体重は63kgになった
と動画で紹介したのです。
詳しく見る ⇒ かまいたちチャンネル(現在はこの動画は削除されています)
かまいたちの山内は、糖尿病治療薬GLP-1受容体作動薬を使ったダイエットを受け、3ヵ月で8kgの減量に成功し人生が変わった!と紹介したのです。
しかし、
吉本興業は「不適切な部分もありました」として動画を削除したという顛末でした。
動画では「あくまで今回の動画は山内個人の体験談・見解になります」と注意書きがあったものの、
- 私は「〇〇クリニックさんで人生が変わった
- 多分日本で俺だけじゃない?
- お腹に注射を打つダイエットなんですけど食欲が抑えられる
- 摂取した糖質とかが半分くらいは尿とともに排出される
と解説していました。
※上記は当時の動画内での発言であり、GLP-1関連薬の作用を医学的に説明したものではありません。
山内はコンビで「〇〇クリニックのAGA治療」のコマーシャルに出演していましたが、そのクリニックで痩身治療を受けたようですが、多くの視聴者から批判が上がっていたのです。
所属する吉本興業では、
当該動画は、あくまでも個人の感想をお届けする趣旨ですが、一部表現として不適切な部分もありました。
として動画を削除しました。
糖尿病治療薬のGLP-1関連薬とは?
GLP-1 とはGlucagon-Like Peptide-1の略で、
日本語ではグルカゴン様ペプチド-1といわれる食後に腸から分泌されるホルモンなのです。
食べ物が消化管の中に入ってくると腸からGLP-1が分泌され、
- 血糖値に応じてインスリン分泌を促す作用
があるのですが、
その他にも、
- 胃から食べ物が送り出される速度を遅くする
- 脳に働いて食欲を抑える
- 満腹感を持続させる
などの作用があることから「減量効果」も期待できるのです。
日本では2010年1月にノボ ノルディスク ファーマの「ビクトーザ皮下注射剤」が初めて血糖低下薬として厚生労働省の承認を受けました。
現在は国内でも肥満症治療薬が承認されている
この記事を書いた2023年当時、国内では「糖尿病治療薬として承認されたGLP-1関連薬」を美容・痩身目的のダイエットに「適応外使用」として使うことが問題になっていました。
その後、日本でもウゴービ、さらにGIP/GLP-1受容体作動薬のゼップバウンドが肥満症治療薬として使われるようになりました。
ただし、これは「誰でもGLP-1関連薬でダイエットできる」という意味ではありません。
GLP-1関連薬による肥満症の保険診療ではBMIや肥満関連の健康障害、食事療法・運動療法の実施などの非常に厳しい条件があります。
👉 抗肥満薬GLP-1の現状|保険適用・効果・国内使用を医学的に解説
かまいたち山内さんの例から考えること
山内さんの動画が公開された当時と比べ、GLP-1関連薬を取り巻く状況は大きく変わりました。
一方で、糖尿病薬を美容目的で使うことと、肥満症と診断された患者が治療薬を適正に使うことは、現在も分けて考える必要があります。
GLP-1関連薬を自己判断で使用する危険性については、別の記事で詳しくまとめています。
👉 GLP-1の自己判断での使用は危険|美容目的・適応外使用の注意点
GLP-1関連薬は「痩せたらやめれば終わり」ではない
チルゼパチドの臨床試験では、投与中止後に体重が再増加しやすいことも確認されています。
短期間だけ薬を使って体重を落とし、目標体重になったら終了するというほど単純ではありません。
この点を含む現在の医学的知見や、マンジャロなどを美容・痩身目的で安易に使用する問題については、上記の関連記事で詳しく解説しています。
まとめ
かまいたち山内さんが「お腹に注射を打つダイエット」で減量したと紹介したことは、GLP-1ダイエットが広く知られるきっかけの一つになりました。
現在は肥満症に正式承認された薬もありますが、美容目的の安易な使用とは区別する必要があります。
GLP-1関連薬は、体重だけで判断するのではなく、肥満による健康障害や治療の必要性を医師が評価したうえで使う薬です。
最終更新日:2026年8月 初掲載日:2023年4月














