製薬会社で20年以上、新薬の研究開発に携わった経験をもとに、科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝えしています。
糖尿病治療では、日本糖尿病学会や厚生労働省も示しているように、食事療法と運動療法が基本です。
はじめに
糖尿病は、自覚症状がほとんどないまま進行することがあります。
しかし、高血糖の状態を長年放置すると、神経障害、網膜症、腎症だけでなく、心筋梗塞や脳卒中など、全身に深刻な合併症を起こすことがあります。
その怖さを、自らの経験を通して長年伝え続けてきたのが、たけし軍団のグレート義太夫さんです。
グレート義太夫さんは1995年に糖尿病と診断され、その後、糖尿病性腎症による腎不全が進行。
2007年から18年以上にわたって人工透析を続けていました。
そして2026年9月7日、67歳で亡くなりました。
現時点では死因は公表されていないため、糖尿病や人工透析が直接の死因だったとすることはできません。
しかし義太夫さん自身が、生前何度も「糖尿病を甘く見ていた」と振り返っています。
なぜ糖尿病から人工透析にまで進んでしまったのでしょうか。
グレート義太夫さんが67歳で死去
たけし軍団のメンバーとして長年活躍したグレート義太夫さんが、2026年9月7日に亡くなりました。67歳でした。
報道によると、東京・中野区の自宅マンションの階段で倒れているところを発見され、病院へ搬送されましたが死亡が確認されたということです。
目立った外傷はないと報じられていますが、現時点では死因は明らかになっていません。
したがって、「糖尿病で亡くなった」「人工透析が原因だった」と結びつけることはできません。
糖尿病性腎症とは?
糖尿病の代表的な合併症には、
- 糖尿病性神経障害
- 糖尿病網膜症
- 糖尿病性腎症
があり、「糖尿病の3大合併症」と呼ばれています。
このうち糖尿病性腎症は、高血糖の状態が長期間続くことで腎臓の細い血管などが傷つき、腎臓の働きが徐々に低下していく病気です。
初期には自覚症状がほとんどありません。
しかし進行すると、むくみや貧血などが現れ、さらに腎機能が低下すると末期腎不全となり、人工透析や腎移植などの腎代替療法が必要になることがあります。
日本の透析患者で最も多い原因は糖尿病性腎症
糖尿病性腎症は、現在も日本の人工透析と非常に深い関係があります。
日本透析医学会の2024年末の調査では、日本で透析治療を受けている患者は337,414人。
その原因となった病気で最も多かったのが糖尿病性腎症の39.2%でした。
また、2024年に新たに透析を始めた患者でも、糖尿病性腎症が37.6%と最も多くなっています。
かつては慢性糸球体腎炎が透析導入の主な原因でしたが、現在では糖尿病性腎症が大きな割合を占めています。
参考:日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況 2024年12月31日現在」
1995年、血糖値630mg/dLで糖尿病が発覚
グレート義太夫さんが糖尿病と診断されたのは1995年でした。
当時は30代半ば。
夏バテだと思っていたところ、目が見えにくくなるなどの症状が出て病院を受診しました。
そこで測定された血糖値は、なんと630mg/dLだったと本人が語っています。
義太夫さんの父親も糖尿病でした。
本人は父親が糖尿病の食事療法をしている姿を子どものころから見ていたそうですが、それでも自分が糖尿病になるとは十分に考えていなかったようです。
糖尿病には遺伝的な体質も関係しますが、親が糖尿病だから必ず子どもも糖尿病になるわけではありません。
食事、運動、肥満、加齢など、さまざまな要因が重なって発症します。
体調が良くなると病院へ行かなくなった
義太夫さんが後に最も後悔したのは、糖尿病と診断された後の行動でした。
病院へ行って治療を受ける。
体調が良くなると、「もう大丈夫だろう」と思って病院へ行かなくなる。
また体調が悪くなると通院する。
そんなことを長期間繰り返していたといいます。
糖尿病は、薬を飲んで血糖値が下がったからといって病気そのものが消えたわけではありません。
しかも腎症や網膜症などの合併症は、自覚症状がない間にも進行することがあります。
義太夫さんは後年、当時について「本当に糖尿病を舐めていた」という趣旨の話をしています。
糖尿病で最も避けなければならないことの一つが、自己判断で治療を中断することです。
2007年、糖尿病性腎症から人工透析へ
糖尿病と診断されてから約12年後の2007年。
義太夫さんは糖尿病性腎症による末期腎不全となり、人工透析を始めることになりました。
その後は、週3回、1回約5時間。
1週間で約15時間の透析治療を続けていました。
人工透析は、働きが大きく低下した腎臓に代わって、血液中の老廃物や余分な水分などを取り除く治療です。
透析を始めれば腎臓が元通りになる、という治療ではありません。
腎機能が回復しない場合には長期間透析を続ける必要があり、腎移植など別の治療に移行しない限り、生活の中で透析を継続することになります。
仕事や旅行などにも時間的な制約が生じます。
義太夫さんは、その生活を18年以上続けていました。
「もっと生活習慣に注意していれば」と後悔
義太夫さんは、糖尿病性腎症が進行して人工透析になった後、過去の生活を何度も振り返っています。
糖尿病と診断された時点でもっと生活習慣に注意し、治療を続けていれば、透析を始める時期をもっと遅らせられたのではないか。
そんな後悔を語っています。
この言葉は非常に重要だと思います。
糖尿病になったら、必ず糖尿病性腎症になり、人工透析になるわけではありません。
血糖値や血圧をきちんと管理し、腎機能や尿アルブミンなどを定期的に調べることで、腎症の発症や進行を抑えることができます。
現在は糖尿病治療薬にも、血糖値を下げるだけでなく腎臓を守る効果が期待できる薬が使われるようになっています。
しかし、薬だけに頼ればよいわけではありません。
食事、運動、体重管理、禁煙、血圧管理、そして何より治療を途中でやめないことが大切です。
2024年には心筋梗塞で倒れ10時間の手術
長い透析生活を続けていた義太夫さんですが、2024年8月には心筋梗塞で倒れています。
本人の報告によると、手術は約10時間にも及びました。
その後は回復し、芸能活動を再開しています。
参考:日テレNEWS「グレート義太夫、心筋梗塞で倒れたことを報告」
糖尿病のある人では心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクが高くなることが知られています。
さらに腎機能が低下すると、心血管疾患にもより注意が必要になります。
ただし、義太夫さんの心筋梗塞について、糖尿病だけが原因だったと断定することはできません。
2026年まで人工透析を続けていた
義太夫さんは2026年に入ってからも透析治療を続けていました。
7月には、狭くなった鎖骨下静脈を広げる「鎖骨下静脈拡張」の手術を受けています。
本人によると、それまでにも何度か受けていた手術でした。
8月には腰や左股関節などの強い痛みを訴え、歩くのもつらい状態になっていることをブログに書いていました。
それでも、身体を動かさなければ筋力が落ちてしまうことを気にかけ、復活するという前向きな言葉を残しています。
透析になってからは糖尿病の怖さを伝え続けた
糖尿病を発症した当初は治療を中断してしまった義太夫さんですが、人工透析になってからは自分の経験を隠すことなく公表するようになりました。
糖尿病関連のイベントにも参加し、運動の大切さや糖尿病を放置する怖さを伝えています。
仕事がない日には、多摩川沿いを5~8km歩いていたことも明かしています。
自分自身が治療を中断したことで人工透析になった経験があるからこそ、同じ糖尿病患者に「自分と同じ失敗をしないでほしい」という思いが強かったのでしょう。
糖尿病性腎症を防ぐために大切なこと
糖尿病性腎症は、かなり進行するまで症状が出ないことがあります。
そのため、症状が出てから腎臓を守ろうとするのではなく、糖尿病と診断された段階から腎臓を守ることが大切です。
- 血糖値を適切に管理する
- 血圧を適切に管理する
- 定期的に腎機能を検査する
- 尿アルブミンなどの検査を受ける
- 肥満があれば体重を改善する
- 喫煙している人は禁煙する
- 食事療法と運動療法を続ける
- 自己判断で通院や薬を中断しない
血圧についても、「低ければ低いほどよい」という単純なものではありません。
年齢、腎機能、使用している薬などによって適切な目標は異なるため、主治医と相談しながら管理することが重要です。
糖尿病による腎症、網膜症、神経障害、心筋梗塞などは、それぞれ全く別の問題ではありません。
長期間の高血糖による血管障害を背景として、さまざまな合併症が連鎖的に起こる可能性があります。
まとめ
グレート義太夫さんは1995年に糖尿病と診断されました。
しかし治療を続けたり中断したりする生活を繰り返し、2007年には糖尿病性腎症による末期腎不全で人工透析が必要になりました。
その後、週3回の透析を18年以上続け、2024年には心筋梗塞で10時間に及ぶ手術も受けています。
そして2026年9月7日、67歳で亡くなりました。
現在のところ死因は公表されておらず、糖尿病や透析が直接の死因だったと断定することはできません。
しかし、義太夫さん自身が残した経験から学べることがあります。
それは、糖尿病は「痛くないから大丈夫」「体調が良いから大丈夫」という病気ではないということです。
糖尿病性腎症は、症状がないうちから静かに進行することがあります。
そして腎機能が大きく低下してから、以前の状態に戻すことは簡単ではありません。
だからこそ、血糖値や血圧を管理し、定期的に検査を受け、毎日の食事と運動を続ける。
そして何より、自分の判断で糖尿病治療を中断しないこと。
糖尿病を甘く見て人工透析になったことを隠さず語り続けたグレート義太夫さんの経験は、糖尿病と付き合う私たちにとって重い教訓を残してくれたのではないでしょうか。
最終更新日:2026年9月












