臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた けんぞう です。
糖尿病治療薬の開発を行っていた私が言うのも何ですが、
糖尿病の治療では食事療法と運動療法が基本なのです。
今日も科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝えいたします。
はじめに
糖尿病のあなたは血圧が高くありませんか?
高血圧のあなたは血糖値が高くありませんか?
糖尿病と高血圧は別々の異なった病気で、もちろん治療法も異なります。
しかし、
糖尿病と高血圧には密接な関係にあることをご存じでしょうか?
糖尿病であるヒトは2倍も高血圧になりやすいのです。
糖尿病と高血圧には密接な関係がある
肥満や脂質異常症そして糖尿病などの生活習慣病は身体に様々な悪影響を与えますが、特に動脈硬化を加速度的に進行させます。
なかでも糖尿病と高血圧は心臓病や脳血管疾患に及ぼす危険性は高く、
健康な人に比べると心臓病と脳血管系疾患のリスクはそれぞれ2~3倍、
両疾患を合わせると健康人より6~7倍も心臓病や脳血管疾患のリスクが高くなるのです。
糖尿病患者では高血圧が多い
平成20年の厚生労働省の患者調査によると、
50~79歳の2型糖尿病者では53%が高血圧を併発していることが明らかになっていますが、
年齢を限らない調査でも、糖尿病患者の40~60%が高血圧だといわれています。
また、日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン2014では、
糖尿病の人が高血圧になるリスクは糖尿病ではない人に比べて約2倍高いと述べられています。
詳しく見る ⇒ 日本高血圧学会・高血圧治療ガイドライン2014
糖尿病の人は糖尿病でない人に比較して2倍も高血圧になりやすいのです。
高血圧患者では糖尿病が多い
1990年から2005年11月まで15年に亘って7,120例の糖尿病患者を追跡調査した疫学調査・NIPPON DATA90で、
高血圧患者は非高血圧患者に比べて3倍糖尿病になりやすいことが判明しました。
詳しく見る ⇒ NIPPON DATA90
さらに、
心臓病患者の2/3で糖尿病予備軍の症状である耐糖能異常が確認されたとの報告もあります。
心筋梗塞などで心臓カテーテル治療を受けた患者さんのうち、糖尿病と診断されていない人の70%で耐糖能異常が見つかったというのです。
通常の健康診断において、糖尿病や糖尿病予備群が見つかる割合は20%程度といわれていますから、
心筋梗塞や狭心症患者では本人は知らずとも糖尿病に罹患している割合が非常に高いのです。
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糖尿病と高血圧はどうして関係があるのか
糖尿病も高血圧も生活習慣病と言われるカテゴリーの疾患です。
生活習慣病とは、食事生活、運動、ストレス、喫煙、飲酒などの生活習慣が疾患の発症に深く関わっているとされる疾患群の総称で、生活習慣病として、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、肥満、心臓病、脳卒中などが知られています。
糖尿病も高血圧も生活習慣病の代表的な疾患ですが、糖尿病は血糖値が上がる病気、高血圧は血圧が高くなる病気で共通点がないように思われます。
糖尿病は血糖値が高くなる病気
糖尿病はどなたでもご存じのように血液中の糖の濃度(血糖値)が高くなる病気です。
その原因としてはたくさんあるのですが、
- 炭水化物の摂り過ぎ :食後血糖値の上昇
- 肥満 : 内臓脂肪によるインスリン抵抗性の増加
- 膵臓の疲弊 : インスリン分泌の低下
などが大きな原因です。
食後血糖値が高くなると大量のインスリンが必要になり、
最終的に膵臓が疲弊してインスリンがでなくなり、
血糖値が下がらなくなってしまうのです。
また肥満により内臓脂肪が増加すると組織におけるインスリンの効果が発揮しにくくなるために大量のインスリンが必要になり、最終的に膵臓が疲弊してインスリンがでなくなり、血糖値が下がらなくなってしまうのです。
高血糖自体は、体調不良や痛みなどの具体的な自覚症状がないのですが、高血糖が長く続くと血管壁が傷害され様々な合併症を起こすのですが、これら合併症は全て血管壁の傷害によるものなのです。
もちろん、血管壁が硬くなり血液抵抗が高くなる高血圧も糖尿病の血管傷害によるものです。
糖尿病が高血圧を引き起こす原因には下記のような要因も挙げられています。
- 糖尿病では循環血液量が多い
血糖値が上がると血液の浸透圧も上がり細胞から血管への組織液が移行したり、腎臓での水分の再吸収が増える、
あるいは口渇により水分摂取量が増加するなどの理由で循環血液量が増加し、それに伴い血圧が上昇します。 - 交感神経の亢進
糖尿病患者では肥満者が多いのですが、肥満は交感神経の興奮を引き起こし血圧を上げるアドレナリンやノルアドレナリンが多く分泌されるため高血圧になるのです。
肥満者でどうして交換神経活動が亢進するのかについては十分に解明されいませんが、糖尿病の髙インスリン血症もその一つと考えられています。 - 糖尿病性腎症
糖尿病の合併症である糖尿病腎症になると、腎臓から血圧を上げるレニンの分泌が増加し、
さらに、血液のろ過機能が低下するため循環血液量が増加し血圧が上昇します。
高血圧は血圧が高くなる病気
血圧とは、血液によって血管壁が外側に押される力のことです。
血液を体中に行き渡らせるために、心臓は強い力で血液を心臓から押し出します。この圧力が血圧の元ですが、血管壁が硬くなって弾力がなくなる血管抵抗が増し、血圧が高くなります。
心臓が収縮して血液を押し出したときの血圧が最高血圧、心臓が拡張して血液を心臓に戻すように働いたときの血圧が最低血圧です。
高血圧は主に動脈硬化によって引き起こされます。
動脈硬化とは、動脈が硬く弾力性がなくなり、血管の内径も狭くなる症状で、高血圧を引き起こすだけでなく、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの原因にもなるのです。
動脈硬化の原因は、
- 糖尿病
- 高脂血症などの脂質異常症
- 肥満
そして動脈硬化によって引き起こされる高血圧もまた動脈硬化の原因なのです。
高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満は互いに悪影響を及ぼしながら、動脈硬化を加速度的に進行させる悪循環を引き起こすのです。
高血圧自体が直接糖尿病を引き起こすということはありませんが、高血圧になる原因と糖尿病になる原因は同じことが多く、
このままの生活を続けると早晩、糖尿病の症状も現れることは間違いないのです。
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糖尿病と高血圧と食事療法の関係
糖尿病が高血圧を、高血圧は糖尿病を、互いに合併しやすいことは上に説明した通りです。
糖尿病と高血圧を併発すると動脈硬化が加速度的に進行し、心臓病や脳卒中などの大血管で起こる合併症の危険が非常に高くなります。
また、糖尿病神経症、糖尿病網膜症、糖尿病腎症といった細い血管で起こる合併症も悪化の一途をたどります。
下の図は、日本高血圧学会の高血圧ガイドライン2014で示された、血圧と心血管発症リスクを示した表です。
見にくくて恐縮ですが(見にくいときには、リンクからガイドラインの45ページをご覧下さい)、
血圧が140~150/90~99mmHgの「Ⅰ度高血圧」でも心血管傷害を起こすリスクは最高の「高リスク」なのです。
詳しく見る ⇒ 日本高血圧学会・高血圧治療ガイドライン2014
糖尿病で高血圧なら食事療法と服薬を
動脈硬化による高血圧であれば回復することは望めません。
しかし、糖尿病になると血圧がそれほど高くない状態でも動脈硬化が進行しやすくなることから、
今後、さらに動脈硬化が伸展し血圧が高くなったり脳血管系の障害が起こらないように努めなければなりません。
日本高血圧学会の高血圧ガイドライン2014では、
糖尿病を合併して130/80mmHg未満の高血圧である方は125/75mmHg未満を目標に、厳格な血圧管理を行うことを求めています。
- 減塩
- 減量
- 運動
などを行うとともに、糖尿病を進行させないように食事療法も必要です
それでも血圧が十分に下がらないときは、服薬による高血圧の治療が必要となります。
高血圧の治療では、“the lower,the better”といわれますが、
血圧をしっかり下げれば下げるほど、心臓病や脳卒中などの合併症を起こすリスクが低下することが分かっていますから、
主治医の注意を良く守り、定期的に健康診断を受けたり、家庭でも小まめに血圧測定を行って血圧の管理を怠ってはいけません。
高血圧が「治る」ということはありませんので、
生活習慣の改善で血圧が下がったとしても元の生活に戻してしまえば、血圧は再び上昇します。
高血圧の治療薬も高血圧の原因そのものを取り去るわけではなく、一時的に血圧を下げているだけですから、服薬を怠ってはいけません。
糖尿病予備軍では直ぐに食事療法を開始
血糖値がやや高いといわれている糖尿病予備軍の方は直ぐにでも糖尿病の食事療法を始めて下さい。
今のままの生活を続ければ確実に糖尿病になり、動脈硬化も一気に伸展します。
糖尿病予備軍の方は、適切な食事療法により、糖尿病から完全に逃れることが可能なのです。
糖尿病の食事療法には様々な方法がありますが、貴方に合った食事療法を選んで下さい。
詳しく見る ⇒ スタンダート糖質制限食のやり方
糖尿病の食事療法は食後血糖値を上げないことが目的です。
食品の中で、血糖値を上げるのは炭水化物だけなのです。
肉を食べても血糖値は上がらないのです。
糖質制限と聞くと、
- 完全糖質ゼロ
- 主食を食べない
などと、過激な糖質制限を思い浮かべる方が多いと思いますがそこまでやる必要はないのです。
炭水化物は我々の体にとって重要なエネルギー源ですから、ゼロにする必要はありません。
ただ、貴方の炭水化物量が標準よりも多いということです。
- 朝食のパンを半分に
- 夕食のご飯を半分に
- おかずはタップリ食べる
これなら直ぐにでもできるのではないでしょうか。
糖尿病の食事療法は病人食ではなく長寿食なのです
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