糖質制限ダイエットは死亡率を上げる|サンデー毎日
今日もご覧になっていただきありがとうございます。
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた けんぞう です。
糖尿病治療薬の開発を行っていた私が言うのも何ですが、
糖尿病の治療では食事療法と運動療法が基本なのです。
今日も科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝えいたします。
はじめに
サンデー毎日の2017年10月1日号をお読みになりましたか?
糖質制限ダイエットで死亡率2割上昇
という記事を掲載しました。
週刊文春は糖質制限ダイエットは死亡率を上げる
記事の中心は、近藤誠医師、近藤氏は慶応大学放射線科の医師を退職後に「近藤誠がん研究所・セカンドオピニオン外来」を開設している。
最近は糖質制限が過熱し、糖質制限の賛否両論が乱れ飛んでいます
しかし、冷静に考えてください。
- 血糖値が高い人はこのまま炭水化物をとり続けると糖尿病になる
- 糖尿病の人がこのまま炭水化物をとり続けると糖尿病合併症になる
ことは間違いのないことです。
売上げを伸ばそうとする過激なタイトルに目を奪われないで、
糖質制限を科学的医学的に考えてみませんか?
サンデー毎日は糖質制限ダイエットが死亡率を上げると、、
サンデー毎日の2017年10月1日号には驚きました。
表紙にデカデカと、
糖質制限ダイエットで死亡率2割上昇
との記事です。
最近の糖質制限はやや度を過ぎて、
まで出現する始末です。
さて、サンデー毎日の記事ですが、
6頁もの長い記事で、内容は「衝撃のデーターが発覚した」というのです。
糖質制限の告発記事とも思えるタイトルの記事は近藤誠医師の話が中心になっていますが、
近藤医師は、慶応大学放射線科の医師を退職後に「近藤誠がん研究所・セカンドオピニオン外来」を開設し、
最近の著書には、
- 患者よ、がんと闘うな
- がん放置療法のすすめ
- 医者に殺されない47の心得
などがある方です。
センセーショナルなタイトルの「医者に殺されない47の心得」は100万部も売れたそうです。
週刊現代でも、
- 胃がん、食道がん、大腸がんの8割は手術するな
- 飲み続けてはいけない薬
など、
「医者と病院にダマされるな!」と銘打った医療現場に疑問をつきつけるような特集記事を連載していますが、
このような記事を載せると「通常号より10万部ほど多く売れる」というのです。
これは明らかなあおり記事ですね、、、。
今回の「糖質制限ダイエットで死亡率2割上昇」という記事ですが、
近藤医師の言い分は、
医学的に痩せる必要がない人の場合、糖質制限ダイエットをすればするほど早死にしやすくなることが、米国の大規模なコホート研究でついに明らかになった
として、
近藤医師が、「ようやくにして明らかになった事実」と紹介したのは、
ハーバード大学の研究グループがおこなった疫学調査ですが、
対象者は男性5万人、女性12万人の合計17万人にものぼり、最長で20年も追跡調査した大規模疫学調査です。
2006年に12万人分の女性のデータを、2010年には男性分をも含めた17万人の全データを集計した結果が公表され、
糖質制限はむしろ寿命を縮めることが明らかになった
と2010年にAnnals of Internal medicineに掲載された論文です。
Low-Carbohydrate Diets and All-Cause and Cause-Specific Mortality: Two Cohort Studies
Conclusion:
A low-carbohydrate diet based on animal sources was associated with higher all-cause mortality in both men and women, whereas a vegetable-based low-carbohydrate diet was associated with lower all-cause and cardiovascular disease mortality rates.
全文を読む ⇒ コチラ
簡単に要約すると、
今回の前向きコホート研究で「看護師の健康調査」に参加した女性85,168人と「医療従事者追跡研究」に参加した男性44,548人を最大26年間追跡した。
その結果、
蛋白質と動物性脂肪を重視した食事では全死亡率、心血管死亡率、がん死亡率が高かった
一方,蛋白質と植物性脂肪を重視した食事では全死亡率と心血管死亡率が低かった。
という内容です。
近藤医師は、記事の中で、糖質質制限量で10段階に分けて、死亡率との関係を示しています。
糖質の摂取量が多い群の死亡率を1としたとき、糖質制限量が最も多かった群では、
- 死因死亡率 1.31倍
- がんによる死亡率 1.45倍
- 新血管疾患による死亡率 1.21倍
糖質制限をした場合には全ての死因で死亡率が高くなることが分かったと解説しています。
さらに、
BMIの基準値を目標にして糖質制限ダイエットを行えば、死亡率はさらに高くなるというのです。
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糖質制限の第一人者・江部医師の意見
国内において糖質制限といえば、京都・高雄病院理事長の江部康二医師です。
江部医師は国内における糖質制限の提唱者で糖質制限では第一人者なのです。
今回のサンデー毎日の「糖質制限は死亡率を上げる」の記事に対して、
自身のブログにおいて反論を述べています。
詳しく読む ⇒ ドクター江部の糖尿病徒然日記
詳細は江部医師のブログを読んでいただくとして、
江部医師の一言目は、
これは、ずいぶん前の研究論文を近藤誠氏が持ち出したものです
でした。
上でも書きましたが、この論文は2010年と7年も前に発表された論文です。
このサイトでも紹介しましたように、
2013年にはアメリカ糖尿病学会はDIRECT試験成績を基に糖質制限食を糖尿病の食事療法として承認しています。
さらについ先頃には「炭水化物の摂りすぎは寿命を縮める」という論文が発表されるなど、
糖質制限に関する研究は日々、新しい情報が出てきているのです。
江部医師は、
結論から言うと近藤誠氏の主張には大きな誤解があります
と述べています。
その理由として、
第1には、
この論文では糖質制限30%以下のグループが含まれていない
と述べています。
すなわち、
この論文では糖質制限が35.2~42.8%の人を対象にした調査なのです。
江部医師は、
糖質制限というからには糖質の制限量が30%以下の人も対象にすべきで、この論文は糖質制限食を対象にした疫学調査だとはいえないというのです。
アメリカ糖尿病学会の糖質制限の定義は、
- 1日の糖質摂取量が130g以下
- 1日の摂取カロリー2,000kcalの26%以下を糖質で摂取
が「糖質制限」だとしているのです。
さらに江部医師は
血糖値が高い高インスリン血症では発がん促進作用が示されている
と述べています。
論文の、糖質摂取量が35.2~42.8%では、1回の食事で50gの糖質を摂取しており、
食事の度に基礎分泌の約10~20倍の過剰なインスリンが分泌され、
発がんを促進している可能性があるというのです。
糖質の摂取量を必要エネルギーの12%にすると、とする、
1回の食事での糖質摂取量は10~20gで、追加インスリン分泌量は2~3倍程度だそうなのです。
やや難しくなってしまいましたが、
- 近藤医師が紹介した論文では糖質制限になっていない
- むしろ高糖質量で過剰なインスリン分泌が発がんを誘発した可能性がある
と反論しているのです。
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無理のない糖質制限は糖尿病を予防する
先日後消化した、
週刊ポストの9月22日号の記事をご覧になりましたか?
浜松医科大学名誉教授の高田明和医師が、
糖質制限すると糖尿病になる!
と書いた記事です。
高田医師は、
近直の12年間で糖質摂取量が1日15gも減ったにも糖尿病患者は約100万人も増えた
として、
糖質制限をすれば糖尿病になる可能性がある
と書いたのです。
詳しく読む ⇒ 糖質制限で糖尿病になる|週刊ポスト
一方、
カナダのマックマスター大学の研究グループは、
5大陸の18ヵ国における「炭水化物の摂取量と死亡率」調査した大規模疫疫学調査で、
炭水化物の摂りすぎで死亡率が上がる
という、今回の近藤医師が紹介した論文とは真逆な結果を報告しています。
詳しく読む ⇒ 炭水化物の食べ過ぎは死亡率が上がる
最近は糖質制限が過熱し、マスコミも売上げを煽るセンセーショナルなタイトルの記事を掲載しています。
血糖値が高く糖質制限を考えている人にとっては右往左往してしまい、どうして良いのか分からなくなってしまいます。
しかし、冷静に考えてください。
- 血糖値が高い人はこのまま炭水化物をとり続けると糖尿病になる
- 糖尿病の人がこのまま炭水化物をとり続けると糖尿病合併症になる
ということは間違いのないことなのです。
今回の記事でも、
やり過ぎは危険
医学的に痩せる必要がない人の場合
とか目立たないように書かれています。
これは重要なことです。
あなたの糖質制限はやり過ぎですか?
あなたは糖質制限が必要のない人ですか?
さらに、
糖質制限で死亡率が上がった原因として、
栄養不足が抵抗力を弱めた
からだと書いているのです。
糖質制限は簡単な方法です。
ただ炭水化物の食べる量を減らすだけですが、
実は糖質制限は難しいのです。
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