DIRECT試験は糖尿病の食事療法の原点

今日もご覧になっていただきありがとうございます。

臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた けんぞう です。

糖尿病治療薬の開発を行っていた私が言うのも何ですが、

日本糖尿病学会厚生労働省も述べるように、

糖尿病の治療では食事療法と運動療法が基本なのです。

今日も科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝へします。

 

はじめに

昨日は日本糖尿病学会の糖尿病の食事療法に対する見解を説明しました。

日本糖尿病学会は、糖尿病の食事療法では、

  • カロリー制限が重要
  • 糖質制限ではエビデンスが少ない

という考え方でした。

 詳しく読む ⇒ 日本糖尿病学会が勧める食事療法

しかし、世界的には、

カロリー制限よりも糖質制限が有効

との考え方に傾いているのです。

その根拠は、DIRECT試験と言われる試験です。

糖尿病の食事療法に関心が有るのであればDIRECT試験は是非とも知っておいてください。

 

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DIRECT試験が糖尿病の食事療法の原点

 

肥満における食事療法を検討した成績は数多くあるのですが、

  • 対象人数が少ない
  • 調査期間が短い

などとして、信頼性がやや欠けるものが多いのですが、

DIRECT試験は全世界で注目され信頼されている食事療法による減量効果を示す試験

なのです。

 

DIRECT試験は「ダイレクト試験」と呼ばれ、

中程度の肥満者を対象に、2年間に亘って、低脂肪食、地中海食、糖質制限食の効果を調べた試験で、

2008年に、The New England Journal of Medicine という世界最高峰の医学雑誌に掲載され、

世界的に評価されている試験です。

なお、DIRECTとはDietary Intervention Randomized Controlled Trialの略文字で、日本語では食事療法介入無作為ランダム化試験で、無作為ランダム試験とは「結果に不正確な影響を与える要因をできるだけ除いて行う研究」のことです。

 

Weight loss with a low-carbohydrate, Mediterranean, or low-fat diet.

Shai I1, Schwarzfuchs D,Henkin Y, Shahar DR, Witkow S, et al.;
Dietary Intervention Randomized Controlled Trial (DIRECT) Group.

 

詳しく読む ⇒ 原文を読む

 

この試験では、イスラエル・ディモナの研究所に勤務し、

  • 40~65歳
  • BMIが27以上
  • 2型糖尿病か冠動脈疾患を有する

のいずれかに該当する

  • 322人(男性が80%、平均BMIが31)

を対象に、

  1. 低脂肪食
  2. 地中海食
  3. 糖質制限食

を2年間に亘って続けてもらったのです。

 

各食事の具体的内容は、

  1. 低脂肪食

    1日の摂取カロリーを男性は1,800kcal、女性は1,500kcal
     脂質は30%以下で10%は飽和脂肪酸、コレステロール300mg/日以下

  2. 地中海食

    1日の摂取カロリーを男性は1,800kcal、女性は1.500kca
    脂質をできるだけ35%以下、30~45gのオリーブオイル、5~7個のナッツ

  3. 糖質制限食

    最初の2ヵ月間 : 1日の糖質量は20g
    3ヵ月~ 2年   : 1日の糖質量を120gまで徐々に増加
    摂取カロリー、蛋白質、脂質に制限なし

 

低炭水化物食では、最初の2ヵ月間の糖質量は20gですが、2ヵ月後以降は徐々に120まで増やします。

糖質量の目安は、

  • 白ご飯を茶碗1杯(150g)で55.2g
  • 食パン(6枚切り)の1枚で66.7g
  • 中華麺200gで55.8g

ですから、

糖質120gとは、

  • 白ご飯 : 茶碗で2.1杯
  • 食パン : 6枚切りを1.8枚
  • 中華麺 : 430g(ラーメン2杯分)

ですから、スタンダード糖質制限食に相当します。

 


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糖質制限で最も体重が減少

この試験での、

一次エンドポイントはベースラインから24ヵ月後の体重減少

です。

エンドポイントとは、このような試験における評価項目のことで、

「ベースラインから24ヵ月後の体重」ということは、

「24ヵ月後に試験開始時の体重からどれだけ減少したか」で各群の有効性を判定するということです。

 

その体重変化は、

食事療法の種類にかかわらず1~6ヵ月目に最も体重が減少し、2年後までほぼ維持されたのです。

 

一次エンドポイントである、ベースラインから24か月後の体重変化については、

  • 低脂肪食  : -2.9 kg (男 -3.4 kg,女 -0.1 kg)
  • 地中海食  : -4.4 kg (男 -4.0 kg女 -6.2 kg)
  • 糖質制限食 : -4.7 kg (男 -4.9 kg女 -2.4 kg)

と、地中海食と糖質制限が低脂肪食よりも減少度が大きかったのです。

 

 

 

BMIの変化でも、

  • 低脂肪食 : -1.0 kg/m2
  • 地中海食 : -1.5 kg/m2,
  • 糖質制限 : -1.5 kg/m2

と地中海食と糖質制限で最も大きかったのです。

 

 糖尿病のヒトでは地中海食群がもっとも空腹時血糖を低下させたが、

HbA1cは糖質制限食のみでベースラインよりも有意に低下していたのです。

 

また、インスリン抵抗性指標(homeostasis model assessment of insulin resistance: HOMA-IR)は 糖尿病のヒトでのみ地中海食で低下していたそうです。

 

研究グループはこの試験結果を得て、

中程度肥満では糖尿病のあるなしにかかわらず、地中海食と糖質制限食は低脂肪食よりも効果的で安全な食事療法であることが明らかになった。

脂質においては糖質制限食が、血糖コントロールに対しては地中海食がより優れており、食事療法では各患者の個人的嗜好や代謝状態を考慮して選択すべきだ。

と結論しています。

 

いかがでしたでしょうか?

DIRECT試験は、

  1. 低脂肪食
  2. 地中海食
  3. 低炭水化物食

の3つの減量食の、

  1. 有効性
  2. 安全性

を比較することを目的としておこなわれたものです。

 

その結果、

  • 地中海食と低炭水化物食は減量だけでなく代謝系因子にも好ましい効果す

ことが明らかになったのです。

 

この結果より、アメリカ糖尿病学会では、

糖尿病の食事療法として、

  • 地中海食
  • 低炭水化物食(糖質制限食)

も好ましい食事療法だと支持することになったのです。

 

 


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