糖質制限は糖尿病のインスリン抵抗性を改善する
今日もご覧になっていただきありがとうございます。
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた けんぞう です。
糖尿病治療薬の開発を行っていた私が言うのも何ですが、
糖尿病の治療では食事療法と運動療法が基本なのです。
今日も科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝えいたします。
はじめに
炭水化物の食べる量を制限する糖質制限が話題になっています。
糖質制限で血糖値が下がり糖尿病の症状が改善することについては多くの研究報告があり、もはや間違いのないことです。
さらに最近、新たな研究成果が発表されました。
糖質制限は血糖値を下げるだけでなくインスリン抵抗性をも改善するのです。
インスリン抵抗性はインスリンの効果を弱め、糖尿病を引き起こす大きな原因ですが、
糖質制限がインスリン抵抗性を改善するということは、
糖質制限で糖尿病を治すことができるということです。
あなたも食事内容を見直してみませんか?。
糖質制限はインスリン抵抗性を改善する
糖質制限は血糖値を下げ糖尿病を改善することは多くの科学的研究で明らかにされています。
糖質を制限すれば血糖値が低下することは非常に簡単な理屈です。
それは、
血糖は炭水化物が消化されたブドウ糖が源だからです。
しかし、
糖質制限は血糖値を下げるだけでなく、インスリン抵抗性も改善することが明らかになりました。
ミシガン大学の研究グループは、
糖質制限によって、血糖値が下がりインスリン抵抗性も改善された
との研究報告を発表しました。
Third Exposure to a Reduced Carbohydrate Meal Lowers Evening Postprandial Insulin and GIP Responses and HOMA-IR Estimate of Insulin Resistance.
CONCLUSIONS : Evening postprandial insulin and GIP responses and insulin resistance declined by over 30% after three meals that limited daily carbohydrate intake to 30% compared to no such changes after three 60%-carbohydrate meals, an effect that was independent of pre-meal exercise. The parallel timing and magnitude of postprandial insulin and GIP changes suggest their dependence on a delayed intestinal adaptation to a low-carbohydrate diet. Pre-meal exercise exacerbated glucose intolerance with both diets most likely due to impairment of insulin signaling by pre-meal elevation of FFAs.
くわしく見る ⇒ 原著論文
研究グループは、
- 健康な女性32人(50~65歳)を対象に、
食事内容を、
- 糖質を30%に制限した低炭水化物食(約800kcal)
- 糖質が60%の高炭水化物食(約800kcal)
さらに、食事前の運動の有無により、
- 低炭水化物食 + 食事前に運動する
- 低炭水化物食 + 食事前に運動しない
- 高炭水化物食 + 食事前に運動する
- 高炭水化物食 + 食事前に運動しない
の4群に分け、各群を8人としています。
対象者には、試験日の前夜と、試験日の朝と夕方にそれぞれの食事を摂って貰いましたが、
運動をする群では、食事の3時間前から中程度の運動を2時間おこなってもらいました。
その結果、
低炭水化物職群では、
- 食後のインスリン値が30%改善
- 食後のインスリン抵抗性が30%改善
したのに対し、
高炭水化物食群では変化がない
という結果だったのです。
運動による効果は、今回の試験が短期間であったためか、インスリン分泌やインスリン抵抗性にたいする影響は明らかでなかったようです。
研究グループは、食後に運動すると運動に必要なエネルギーが食事のエネルギーから供給されので食後高血糖を防ぐことができるとして、食後40分以内に運動を行うよう勧めていま。
これは、以前にもご紹介しているように、運動は食後30分以内が有効ということと同じですね。
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糖質制限食の食事内容
この研究で用いられた食事のメニューは特別なものでは有りません。
低炭水化物食でも、高炭水化物食でも、1回の食事の摂取カロリーは約800kcalとしています。
3食で2,400kcalですから、日本人の成人女性の摂取カロリー数よりやや高めです。
低炭水化物食の食事メニュー
低炭水化物食では栄養素のエネルギー比率を、
- 炭水化物 : 30%
- たんぱく質 : 25%
- 脂質 : 45%
としています。
具体的な食品は、
- ヴェジーバーガー(肉を含まないパティを用いたハンバーガー)
- マカロニ
- ソーセージ
- ハム
- チーズ
- サラダ
- スープ
- 果物
などで、脂質はオリーブオイルです。
ヴェジーバーガー(Veggie burger)は、日本では余り馴染みがありませんが、肉を含まないパティを用いたハンバーガーで、通常は、野菜、豆果、ナッツ、きのこ、大豆、小麦、卵などで作られます。
ヘルシーで健康に良いとして、アメリカでは最近はマグドナルドでも販売しています。
高炭水化物食の食事メニュー
高炭水化物食における栄養素のエネルギー比率は、
- 炭水化物 : 60%
- たんぱく質 : 15%
- 脂質 : 25%
としています。
日本においては、日本糖尿病学会は、摂取カロリーの60%を炭水化物から摂取するように推奨していますが、この研究では炭水化物60%は高炭水化物としているところに注目ですね。
具体的な食事の内容は、米国の食事ガイドラインに沿ったメニューで、
- 穀物パンに卵サラダをのせたもの
- ハムチーズ・サンドイッチ
- グラハムクラッカー
- ベーコン
- バナナ
- コールスロー
- オレンジジュース
などです。
文字からでは余り食事内容をイメージできませんが、低炭水化物食の食事内容も特に大きな変化はないように思われます。
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糖質制限食は特別な食事法ではない
糖質制限といえば病人食のように思ってしまいますが、糖質制限食は特別な食事法ではありません。
今回紹介した論文はアメリカでおこなわれた研究ですので、食事内容がイメージできませんが、
糖質制限とは、
- 朝食のパンを半分にする
- 夕食のご飯を半分にする
そして、
- 朝食にはハムエッグを付ける
- 夕食のステーキを倍量にする
というものなのです。
炭水化物の、
- パン
- ご飯
- 麺類
の量を少なくすれば良いのです。
しかし、それではエネルギー不足になるので、
- 炭水化物を減らした代わりに蛋白質を増やす
- 炭水化物を減らした代わりに脂質を増やす
のです。
実は、炭水化物を減らした代わりに蛋白質や脂質を増やす、ということをしない人がいるのです。
そのことによって、エネルギー不足となり、体に障害が出てしまうのです。
炭水化物を減らした代わりに他の栄養素は必ず増やしてください。
肉や脂肪を増やして大丈夫かとの心配は無用です。
血糖値を上がるのは炭水化物だけで、肉をいくら食べても血糖値には変化がありません。
糖質制限には、
- 主食を食べない
- 糖質ゼロ
というような極端な糖質制限もあるのですが、そこまで極端なことをする必要はありません。
あなたの血糖値の状態にあった糖質制限をすれば大丈夫です。
- 朝食のパンを半分にする
- 夕食のご飯を半分にする
これならできると思いませんか?。
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