糖質制限でがん細胞が消えた
今日もご覧になっていただきありがとうございます。
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた けんぞう です。
糖尿病治療薬の開発を行っていた私が言うのも何ですが、
糖尿病の治療では食事療法と運動療法が基本なのです。
今日も科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝えいたします。
はじめに
糖尿病ではがんになりやすいということは既に多くの研究報告で明らかになっています。
糖尿病に人は糖尿病でない人に比べて約2倍もがんになりやすいといわれています。
がんはインスリンやブドウ糖で生きているからです。
糖質制限食は炭水化物の摂取量を減らす、糖尿病の食事療法です。
その糖質制限食が、
がん細胞を消す
というのです。
糖質制限食によって、治療法のない末期がんを完治させたというのです。
糖尿病の食事療法である糖質制限食がどうしてがんを治すことができるのでしょうか?
糖尿病では癌になりやすい
糖尿病ではがんになりやすいということは以前に書きましたが読んでくださったでしょうか?
糖尿病の人はがんになりやすい、糖尿病の人ではがんが治りにくいといわれています。
特に、糖尿病では、肝臓がん、膵がん、結腸がんになるリスクが高く、糖尿病でないヒトよりも2倍高いといわれています。
詳しく見る ⇒ 糖尿病ではがんのリスクを上昇させる
さらに、今後、
- 糖尿病により発症するがんは2030年までに男性で26.5%増加する
- 糖尿病により発症するがんは2030年までに女性で53.2%増加する
と予測されています。
詳しく見る ⇒ 糖尿病では肝臓がんのリスクが高い
糖尿病になるとどうしてがんになりやすいのか
2013年5月、日本糖尿病学会と日本癌学会の「糖尿病と癌に関する委員会」が発表した研究報告によれば、
高インスリン血症ががんの増殖や転移を促す
と述べています。
糖尿病ではインスリン抵抗性が高くなるため、インスリンの効きが悪くなり、
膵臓からインスリンがどんどん分泌されるようになり、血液中のインスリン濃度が高くなり、高インスリン血症になります。
インスリンは、ブドウ糖を細胞に取り込ませる様に働くのですが、
それ以外にも、
がん細胞の増殖を促進する作用
があるのです。
さらに、
がん細胞の増殖を促進する作用がある、インスリン様成長因子-1(IGF-1)の活性を高め、
がんの転移を促進する
ことも分かっています。
発がんにおいても、
すい臓から分泌されるインスリンの作用が不足すると、それを補うために高インスリン血症やIGF-Iが増加し、
肝臓やすい臓などにおける腫瘍細胞の増殖を刺激して、がん化に関与しているのではないかと考えられています。
日本糖尿病学会と日本癌学会は、
糖尿病の既往歴のある人は既往歴のない人に比べて、
- すい臓がん : 1.85倍
- 大腸がん : 1.4倍
- 肝臓がん : 1.97倍
- 胃がん : 1.06倍
がんになるリスクが高まると発表しています。
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糖質制限でがん細胞が消えた
さて、前置きが長くなりましたが、これからが今日の本題です。
週刊ポスト12月2日号の特集ですが、
「糖質制限」でがん細胞が消えた
というのです。
この衝撃的な試験成績を明らかにしたのは、
東京都多摩市にある、公益財団法人 東京都保健医療公社 多摩南部地域病院 地域医療支援病院の外科医・古川健司医師です。
古川医師らのグループは、
- 2015年1月から、
- 19人の末期がん患者を対象に、
- 抗がん剤と糖質制限の食事療法
をおこなったのです、
その結果、
3ヵ月後には、
- がんの症状が消失し完全寛解 : 5人
- がんが30%消失した部分奏功 : 2人
- 進行が抑制 : 8人
と19人中15人で効果がみられ、
- 症状悪化 : 3人
だったそうなのです。
患者の大半は、末期の大腸がんや乳がんの患者で、外科、放射線、抗がん剤の3大療法で治る見込みがなかった患者で、
- 寛解率 : 28%
- 病勢コントロール率 : 83%
は、驚異的な数字だそうです。
[具体的症例]
- 60歳女性。直腸癌末期。
- 2012年4月に、ステージⅢの直腸がんで切除手術。
- 2014年12月、多発性肺転移と肝転移。
- 2015年に糖質制限食事療法を開始。
- 3ヵ月後に肺転移病巣が縮小し、摘出。
がんを消す糖質制限とは
今回、週刊ポストに掲載されたのですが、
古川医師らのグループは、
2016年11月9、10日に横浜で開催された「第19回日本病態栄養学会 年次学術集会」でこの成績を発表しています。
「ステージⅣ進行再発大腸癌、乳癌に対し蛋白質とEPAを強化した糖質制限食によるQOL改善に関する臨床研究」
さらに、学会2日目は、
第3回がんの免疫食事療法の説明会
などのシンポジウムも開催され、糖質制限によるがん治療の試みは多くの科学者が注目しているのです。
さて、具体的な糖質制限食のやり方ですが、
古川医師らの糖質制限は、
糖質を限りなくゼロに近づける糖質制限
のようで、19人の末期癌患者が参加した臨床研究では、1日の糖質量を20g以下にした、「糖質95%カット」を実践した患者もおられたそうです。
糖質20gといえば、ご飯一膳(160g)では糖質が約60gですので、1日にご飯1/3膳ということになります。
しかし、何回かご紹介した、ライザップの食事療法は「糖質ゼロ」ですし、
実際に、森永卓郎さんはライザップで減量し、インスリン注射が必要だった糖尿病から離脱できたのですから、「糖質ゼロ」は無理なことではないのです。
糖質ゼロにしても、蛋白質や脂質は充分に摂って良いのです。
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糖質制限でがん細胞が消えるわけ
糖質制限食でがん細胞が消えるのは本当のようです。
しかも、民間療法的なことではなく、学術レベルで実践した結果なのですから、がん患者にとっては非常に朗報です。
かつて、私の大学時代の友人が40代前半で大腸がんになり亡くなったのですが、彼はがんの栄養を断つという民間の断食療法に挑戦しました。
がんと断食で激ヤセし、最期は見る影もない状態だったと聞きましたが、今回の、糖質制限食は炭水化物のみを断つ食事療法ですから、断食療法とは異なります。
では、どうして、糖質制限食にするとがん細胞が消えるのでしょうか。
実は、
80年も前の、ドイツの生物学者で医者でもあるオットー・ハインリッヒ・ワールブルク氏に始まるのです。
オットー・ハインリッヒ・ワールブルク氏は1931年にノーベル生理学・医学賞を受賞したのですが、腫瘍細胞が低酸素濃度下において成長することを実証し、1966年のノーベル賞受賞者の会合において、がん細胞の発生の根本的な原因は嫌気的な物であるという証拠を発表したのです。
さらに、
ボストン大学のトーマス・セイフリード教授は、
がん細胞はグルコースによって成長し増大するのでケトン体ががんを抑制し抗がん剤に代わる治療になり得る
と述べています。
ケトジェニックとは糖質制限食によって引き起こされる代謝なのです。
糖質制限でエネルギー源をケトン体に変える
私達の体は糖質(ブドウ糖)をエネルギー源として生きています。
しかし、
ブドウ糖がなくなると脂肪を分解してできるケトン体をエネルギー源として使う
のです。
一番先に書きましたように、
がん細胞はインスリンとブドウ糖で成長する
のですが、
糖質を制限すると、
- ブドウ糖がなくなる
- インスリンが出ない
ということで、がん細胞は兵糧攻めになって生きていくことができなくなってしまうのです。
がん細胞の主な栄養源は炭水化物が分解されてできるブドウ糖(グルコース)なのです。
がん細胞は、私達の体の正常な細胞の3~8倍ものブドウ糖を取り入れなければ、生命活動を維持することがでないのです。
一方、私達の体はブドウ糖の供給が途絶えると皮下脂肪を分解して作られるケトン体をエネルギー源として生きることができるのです。
従って、
糖質制限で血液中のブドウ糖を減らせばがん細胞のみが兵糧攻めにあう
のです。
糖尿病患者における糖質制限は、症状に応じて糖質を制限するマイルドな糖質制限で充分です。
しかし、がん治療における糖質制限は素人判断では危険ですから、必ず主治医に相談する必要があります。
マイルドな糖質制限は、
- 糖尿病予防
- がん予防
になるわけですから、炭水化物を摂りすぎないように注意が必要なのです。
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