糖尿病でインスリン注射をしたくない理由
日本イーライリリーと日本ベーリンガーインゲルハイムは、
2 型糖尿病のインスリン治療に関する医師と患者の意識調査の結果を公表しました。
糖尿病患者の 9 割はインスリン注射をしたくないと答えたそうです。
多くの糖尿病患者はインスリン注射をしたくないと考えているのですが、
その理由は、
今のままで大丈夫だと考えているそうなのですが、医者はどう考えているのでしょうか?
糖尿病患者はインスリン注射をしたくない
日本イーライリリー株式会社と日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社は、
2016年10月19日に、
「2 型糖尿病のインスリン治療に関する医師と患者の意識調査」の調査結果をプレスリリースするとともに、東京都内においてインスリン治療に関するプレスセミナーを開催しました。
詳しく見る ⇒ イーライリリーとベーリンガーインゲルハイムのプレスリリース
報道関係者に向けたプレスセミナーでは、2型糖尿病のインスリン治療に対する医師と患者の意識調査結果の報告や、インスリン導入に向けた患者との対話術などが講演されたのですが、その様子についてお知らせしましょう。
ご存じと思いますが、日本イーライリリー株式会社と日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社は、糖尿病におけるインスリン注射製剤を販売している会社ですね。
2 型糖尿病におけるインスリン注射に関する医師と患者の意識調査
2 型糖尿病のインスリン注射に関する医師と患者の意識調査は、
2016 年 8 月 5 日~8 月 9 日において、
- インスリン注射を薦められたが未実施の 2 型糖尿病患者 : 148人
- インスリン注射を 1 年以内に始めている2 型糖尿病患者 : 50人
- 2 型糖尿病患者にインスリン注射を実施している医師 : 173人
を対象に、
2 型糖尿病におけるインスリン注射の開始に関する課題を明らかにする
ことを目的におこなわれたものです。
糖尿病患者の90%がインスリン注射をしたくない
糖尿病で、医者にインスリン注射の説明を受けたがまだインスリン注射を実施していない患者(148人)に、
9 割以上の医師が、
インスリン注射が必要な段階に来ている説明している
にもかかわらず、
89.2%の糖尿病患者は、
わざわざインスリン注射を始めなくても今のままで大丈夫だ
と回答したのだそうです。
その他にも、
- わざわざインスリンを始めなくても、今の治療のままで大丈夫だ : 89.2%
- 今よりも治療費が高くなる : 83.8%
- 注射の時間や回数に合わせて生活を変えなければならない : 83.1%
- 一度始めたら一生続けなければならない : 81.1%
などインスリン注射に対してネガティブに考えている患者が多いことが分かったそうです。
一方、
医師が患者にインスリン注射を薦める上で困ったことはとの質問には、
- インスリン注射の必要性を理解してくれない : 59.5%
- インスリン注射の説明する時間が取れない : 48.0%
- インスリン注射を真剣に検討してくれない : 30.1%
など、説明する時間が取れないとの医者側の問題もあるにせよ、インスリン注射に対する患者側の無理解があるようです。
インスリン注射を実施している患者に、
インスリン注射を開始した理由は?と聞いたところ、
- HbA1c を改善したかった : 68%
- 飲み薬で十分な効果が得られなかったから : 58%
- 飲み薬よりも高い効果が期待できたので : 54%
と、治療に積極的に取り組む患者が多かったようです。
このことは、
医者からみたインスリン注射がうまくいく患者の共通点は?、の質問に、
- 治療への意欲が高い : 20.8%
- 理解力がある : 17.9%
- 病気に対する知識がある : 16.2%
と答えた医者が多く、
インスリン注射を実施している患者は、積極的に糖尿病を治そうと考えている患者が多かったそうです。
インスリン注射は一生続ける必要はない
医者にインスリン注射の説明を受けたがまだインスリン注射を実施していない糖尿病患者が、
インスリン注射を始めない理由の一つには、
一度始めたら一生続けなければならない : 81.1%
と答えた患者が81.1%もいました。
しかし、
インスリン注射を始めても一生続ける必要はないのです。
最近はインスリン注射を早い段階で始める
かつては、インスリン注射は糖尿病がかなり進行した患者に適応されていました。
従って、
インスリン注射 ⇒ 重度の糖尿病
というイメージがあったことは確かです。
インスリン注射の意味は、「膵臓からのインスリン分泌が少なくなった」からです。
高血糖状態が続くと、膵臓はせっせとインスリンの分泌を続けなければならず、終いには疲れ果ててインスリンを全く分泌できなくなってしまうのです。
そこで、最近は、
糖尿病が余り進んでいない時期にインスリン注射を開始し、膵臓を保護するように努めるのです。
その結果、
膵臓は再びインスリンを正常に分泌できる機能を取り戻すことが出来るようになるのです。
読んでくださったと思いますが、森永卓郎さんは重度の糖尿病でインスリン注射が必要でしたが、ライザップの糖質制限食の実施で、インスリン注射が必要ないほどに回復したのです。
詳しく見る ⇒ 森永卓郎さんの糖尿病が回復
10月19日に行われた、プレスセミナーにおいて
奈良県立医科大学 糖尿病学講座の 石井 均教授は、
インスリン治療の開始が早いほど、血糖値のコントロールが迅速かつ確実に行え、糖尿病の診断の段階で膵臓のインスリン分泌機能が50%程度になった早期の段階からインスリン注射の導入を訴えています。
インスリン注射は早期に始めて膵臓が回復したら止めることが可能なのです。
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インスリン注射の費用は高いのか
医者にインスリン注射の説明を受けたがまだインスリン注射を実施していない糖尿病患者が、
インスリン注射を始めない理由の一つには、
今よりも治療費が高くなる : 83.8%
と、治療費の高騰を危惧してインスリン注射に踏み切ることを躊躇している患者さんが83.8%もいました。
糖尿病では、高脂血症、高血圧などの危険因子や糖尿病合併症の有無などにより治療費は大きく異なります。
医療経済研究機構による平成15年度の、「政府管掌健康保険における医療費等に関する調査研究報告書」によれば、
糖尿病患者一人当たりの平均的医療費は年間24.7万円
と報告されています。
健康保険の3割負担に換算すると、年間で7万4,000円、月にすると約6,000円になります。
インスリン注射の医療費
上記の糖尿病医療費は、全ての治療方法の平均ですが、
糖尿病のインスリン注射の医療費は、
- どのような治療法にするか
- どんな種類のインスリン製剤を使うか
- 一回当たりのインスリンの量(単位)は
- どんな注射器や針を使うか
によっても異なりいんす、
インスリンのタイプには、
- 超速効型
- 速効型
- 持効型
- 中間型
- 混合型
などの種類があり、
注射器にも、
- プレフィルド型(既にインスリンが入っているタイプ)
- 針をつければすぐに使用できる薬剤と注射器が一体になったタイプ
- インスリンを使い切ったら廃棄するタイプ
- カートリッジ型(交換型)
- カートリッジ製剤をペン型注射器にセットして使用するタイプ
- バイアルタイプ(瓶に入ったインスリンを注射器に吸い取って使用する)
など、多くの製品があり、どれを使うかによって医療費も異なるのです。
糖尿病ネットワークでは、糖尿病の医療費を3パターンに分けて試算している。
- 食事療法と運動療法
- 経口糖尿病治療薬
- インスリン注射による治療
その、医療費は、
- 食事療法と運動療法のみで投薬なし場合
月額 2,670円 [8,900円×0.3(3割負担)]
- 経口糖尿病治療薬を2種類処方の場合
月額 5,496円 [18,320円(10.230円+8,090円)×0.3(3割負担)]
- インスリン注射(1日4回)と経口薬(1種類)+血糖自己測定(月60回)
月額 10,017 円 [33,390円(24.080円+9,310円)×0.3(3割負担)]
ということで、
インスリン注射の場合には、月に約10,000円程度かかると試算している。
更に具体的内訳としては
1)診察費 合計 24.080円
再診料 730円
外来管理加算 520円
在宅自己注射指導管理料 7,500円
血糖自己測定指導加算 8.600円
処方箋料 680円
特定疾患処方管理加算 650円
検査料など 5,400円
2) 調剤基本料 合計 9,310円
調剤費 410円
薬剤服用歴管理指導料 800円 、260円
特定薬剤(ハイリスク薬)管理指導加算 100円
薬剤料(ビグアナイド薬) 840円
(インスリン) 3.900円
(インスリン) 2,620円
インスリン注射の医療費は月10,000円程度です。
インスリン注射は糖尿病末期と考えがちですが、
最近は、
比較的早期にインスリン注射を薦める傾向にあります。
インスリン注射を早めに開始すれば膵臓のインスリン分泌機能が回復する可能性も高く、
インスリン分泌機能が回復すればインスリン注射をする必要はないのです。
しかし、、、
今のうちに、
- 食事療法
- 運動療法
をしっかりやれば、経口治療薬もインスリン注射も必要ないのです。
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