果物は糖尿病に良いのか悪いのか
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた けんぞう です。
糖尿病治療薬の開発を行っていた私が言うのも何ですが、
糖尿病の治療では食事療法と運動療法が基本なのです。
今日も科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝えいたします。
はじめに
糖尿病の人は食事の際には血糖値を上げないように食べ物に注意をしなけれいけませんね。
血糖値を上げるのは炭水化物の糖質ですが、お菓子や甘いものにも含まれています。
最近の果物は非常に甘くなりましたが、糖度が上がったためです。
糖度が上がったということは糖分の量が多くなったことです。
では、
甘い果物は糖尿病に良くないのでしょうか?
果物にはビタミンやミネラルなども多く含まれているのですが果物は糖尿病には悪い食べ物なのでしょうか、、
最近の果物は糖分が多い
最近の果物は、どんどん改良が進み、大変甘くなっています。
甘くなったということは、糖質量が増えたということです。
日本食品成分表2015年版による、代表的果物に含まれる糖質の量は、
各果物100gに含まれる糖質の量(g)
果物 | 糖質量 |
バナナ | 21.4 |
ぶどう | 15.2 |
柿 | 14.3 |
リンゴ | 13.1 |
イチジク | 12.4 |
パイナップル | 11.9 |
キウイフルーツ | 11.0 |
みかん | 11.0 |
梨 |
10.4 |
メロン |
9.8 |
スイカ | 9.2 |
グレープフルーツ | 9.0 |
桃 | 8.9 |
イチゴ |
7.1 |
最近の果物は、このように非常に糖質量が多いのです。
果物に含まれる糖質は、
- 果糖
- ブドウ糖
- ショ糖
などで、多糖類の炭水化物などに比べて非常に吸収されやすい糖質なのです。
厚生労働省が示している健康増進法の「健康日本21」や、
厚生労働省と農林水産省が策定した「食事バランスガイド」では、
- 野菜 : 1日に350g
- 果物 : 1日に150~200g
摂取することを目標にしています。
しかし、厚労省の2014年における健康調査では、成人の野菜、果物の摂取量はどの年代においても推奨摂取量に足りていないのです。
ちなみに、果物200gとは、ミカンなら2個、リンゴなら1個くらいの量です。
あなたは、果物を毎日200g食べていますか?
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果物の摂取は糖尿病を予防する
- 最近の果物には糖質が多い
- 果物の糖質は吸収されやすい
と、糖尿病の人は果物の摂取を控えたほうが良いのでしょうか?
アメリカのHarvard School of Public Health Communications(ハーバード公衆衛生大学院)の研究グループは、
リンゴやブドウ、ブルーベリーなどの果物を週に3回食べると、糖尿病の発症リスクが低下する
と発表しています。
Eating more whole fruits, particularly blueberries, grapes, and apples, was significantly associated with a lower risk of type 2 diabetes, according to a new study led by Harvard School of Public Health (HSPH) researchers. Greater consumption of fruit juices was associated with a higher risk of type 2 diabetes. The study is the first to look at the effects of individual fruits on diabetes risk.
この研究は、ハーバード公衆衛生大学院栄養学部の村木功氏がリーダーになって行われた研究で、British Medical Journal に発表された論文です。
研究では、
- 18万7,382人を対象に
- 食事スタイルと糖尿病の発症について調査
したものです。
調査期間中に6.5%に相当する1万2,198人が糖尿病を発症しました。
食事スタイルと糖尿病の関係については、
果物を週に3回食べていた人では糖尿病の発症が約10%低下
することが判明し、
さらに、
ブルーベリー、ブドウ、リンゴを週に2回以上食べていた人では糖尿病のリスクが23%低下
していたのです。
良く食べられていた果物、
- ブルーベリー
- ブドウ
- レーズン
- リンゴ
- 西洋ナシ
などの中で、
糖尿病のリスクがもっとも低下した果物はブルーベリーで糖尿病のリスクを33%低下
したそうです。
ブルーベリーには、ビタミンAやビタミンC、βカロテンなどに加え、抗酸化作用の強いフラボノイドやポリフェノールが豊富に含まれることが知られています。
ただし、食物繊維が含まれない果物ジュースを飲むと糖尿病リスクは上昇するそうですから、要注意です。
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果物は抗酸化力が強く糖尿病に良い
果物には糖質が多いのですが、糖質のほかにも、
- ビタミン
- ミネラル
- 食物繊維
- フィトケミカル
など、体に良い成分が多く含まれています。
果物に含まれるビタミンといえば、すぐにビタミンCを思い浮かべますが、果物には種類によりますが、ビタミンB群、ビタミンE群も多く含まれるのです。
さらに、種類によっては、カロテン、カリウム、カルシウム、鉄などを含み、野菜と同様の健康効果が期待できるのです。
果物には糖尿病に良いフィイトケミカルが多い
ブルーベリーには、ビタミンAやビタミンC、βカロテンなどに加え、抗酸化作用の強いフラボノイドやポリフェノールなどのフィイトケミカルが豊富に含まれています。
フィイトケミカルとは、果物や野菜に含まれる化学成分の総称で、植物が紫外線や害虫から身を守るために自ら作り出している成分で、
- 色素
- 香り
- 苦味
- あく
などの成分のことです。
現在は100種類ほどの成分が確認されていますが、それは存在するフィイトケミカルのほんの一部で、実際には1万種類以上あるといわれています。
フィイトケミカルとは強い抗酸化作用を持つため、私たちの体内で発生した活性酸素を取り除き、免疫力を高め、がんや様々な病気を予防する働きもあるのです。
フィイトケミカルは、
- 赤いトマトやスイカに含まれるリコピン : 抗酸化作用
- 橙(だいだい)色のニンジンやカボチャに含まれるプロビタミンA : がん予防
- 黄色のタマネギやレモン、バナナなどのフラボノイド : 高血圧予防
- 紫色のナスやブルーベリー、ブドウなどのアントシアニン : 視力低下の予防
- ダイズのイソフラボン : 抗酸化作用
などですが、
果物の色とファイトケミカルとの関係や健康効果は下記のように非常に多岐にわたっています。
さらに、
ビタミンC、E、A(植物にはカロテノイドとして含まれる)などにも抗酸化作用があるのです。
活性酸素と糖尿病とは非常に密接な関係にあり。
でもあるのです。
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果物をジュースで摂ってはいけない
ハーバード公衆衛生大学院栄養学部の研究グループの報告でも、
食物繊維が含まれない果物ジュースを飲むと糖尿病リスクは上昇する
と述べていますが、
週刊ポスト2016年11月4日号の記事にも下記のようなものがありました。
イギリスのオックスフォード大学と中国の医学科学院が、
中国の都市部と農村部に住む51万2891人(30~79歳)を対象に下調査で、
生の果物を毎日食べる人は、
- 心血管疾患による死亡が40%低い
- 主要冠動脈イベントは34%低い
- 虚血性脳卒中は25%低い
- 出血性脳卒中は36%低い
という結果が得られたのだそうです。
しかし、
果物は常温での長期保存ができないことから、
ハーバード公衆衛生大学院の研究者らは18万7382人を対象に、
- 果物の効果をフルーツジュースで代用できないか
を検証したというのですが、
- 市販のフルーツジュースを毎日1杯以上飲む人は糖尿病のリスクが21%増加
- 週3杯のジュースを生の果物に換えると糖尿病のリスクは7%減少
という結果が得られたというのです。
果物は糖質が多いのですが、
果物をたくさん摂ると糖尿病を予防することができるのです。
しかし、
ジュースではだめ!
生の果物を皮ごと食べるのが最も効果があります。
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