糖尿病ではロカボかローファットか?
ローファットでは体重も血糖値も下がらない
ローファットとは、Low Fat つまり低脂肪食のことです。
「健康のために脂質(油・脂)の摂り過ぎには注意しましょう」
私達は、こういうことを随分長い間いわれてきました。
ステーキを食べても脂身は残す、天ぷらを食べるときには油の多い衣を残す、、こんなことを実行している方は今でも沢山おられるはずです。
さらに、油や脂の摂り過ぎは血中の中性脂肪を上げるとして、健康診断で中性脂肪値やコレステロール値が高いと、医師から「脂の多い食事は控えてください」と注意されていました。
米国糖尿病学会でも、
「糖尿病患者は、減量若しくは維持目標を適えるためには、脂質摂取を節制するよう奨励されるべきである。」
としてきました。
その根源となっているのは、
1950年に栄養士であるアンセル・ベンジャミン・キーズ博士が、
飽和脂肪酸はコレステロール値を上げ心臓病につながる
という理論を発表したことに始まります。
さらに、1958年に、
摂取する脂質を、
- 飽和脂肪酸を摂取する群
- オリーブオイルの不飽和脂肪酸を摂取する群
に分けて追跡調査をおこない、
- 飽和脂肪酸を含む料理を食べていた群ではコレステロール値が上昇
- 不飽和脂肪酸を摂取していた群ではコレステロール値が減少
という結果を発表し、
飽和脂肪酸はコレステロールを上昇させ心臓疾患を招く
と結論したのです。
これらの報告を受け、アメリカ米心臓学会(AHA)は、
1961年に飽和脂肪酸が心臓病の原因になるとするをガイドラインを発表、
1977年にはマクガバン・レポートによって「米国人は食事における油の摂取比率を減らすべき」という指針が国会で承認、
1980年にはアメリカ米農務省も同様な見解を発表したのです。
これによって、「健康のためには脂肪の摂取を控えコレステロールを下げた方が良い」という考えが世界中に広まったのです。
これらの勧告によって、
アメリカでは脂質の摂取を減らす食事指導が行われたのですが、
脂質の摂取量は減るものの、相反して、糖質の摂取量が急増し、肥満と糖尿病が増える結果になったのです。
さらに、
最近の研究では、脂肪の摂取量を減らしても体重減少や疾患の予防に繋がらないとする論文も数多く発表されました。
- 脂質を制限しても血中の中性脂肪を下げるのに有益ではない : Circulation;123, 2292-2333, 2011
- 脂質を減らす介入試験ではがんや心臓病による死亡率は下がらない : Open Heart;2, e000196, 2015
という報告や、
逆に、
- 糖質制限により肥満や血中脂質、糖尿病、高血圧などが改善する : Obes Rev;13, 1048-1066, 2012
などの報告により
、脂肪摂取は健康に良いと言う考えは大きく変わってきたのです。
米国糖尿病学会も、2002年版の糖尿病食事療法に関するガイドラインでは「糖質制限食はすべきでない」としていましたが2013年には、「受容可能な食事法」として推奨の1つに取り入れています。
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糖尿病に良いのはロカボ
上にも書きましたように、
米国糖尿病学会は2013年に、「糖質制限食は受容可能な糖尿病の食事法」として推奨の1つに取り入れています。
ローカーボ、ロカボとは、Low Carbonate (低炭水化物)の略で、
すなわち、アメリカ糖尿病学会が糖尿病における食事療法の1つとしている低炭水化物食(糖質制限食)のことなのです。
日本糖尿病学会は、2013年3月の糖尿病学会総会で、糖尿病の食事療法に関する提言を発表していますが、
「運動療法とともに積極的な食事療法を指導すべきであり、総エネルギー摂取量の制限を最優先とする」として、従来のカロリー制限食を支持する立場をあらためて強調しているのです。
糖尿病学会の推奨する食事療法とは、
- 1日3回の食事
- 活動量に応じたエネルギー摂取
- エネルギー摂取は糖質(50~60%)、蛋白質(20%)、脂質(20~30%)
として、依然として糖質の摂取比率が高いのです。
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ローカーボの効果は臨床試験で立証
ロカボである糖質制限食は、
アメリカでダイエット法の1つとしてセレブ女性で行われているに留まっていましたが、
ある臨床試験を契機に全世界に知られようになりました。
それは、イスラエルの研究グループが2008年に発表した「DIRECT試験」です。
この試験は、
- 40~65歳
- BMI27以上
で、
- 糖尿病患者
- 冠動脈疾患患者
の322人を対象に、3つの食事療法をおこなったのです。
- 脂質制限食(カロリー 男性1,800kcal、女性1,500kcal、脂質比率30%以下)
- 地中海食(カロリー 男性1,800kcal、女性1,500kcal、脂質比率35%以下)
- 糖質制限食(カロリー制限なしで糖質が120g/日以下)
この食事法を2年間継続したのですが、
- 糖質制限食が最も体重を減量した
- 糖質制限食では、トリグリセライドやHDLコレステロールも低下した
という驚くべき結果が得られたのです。
糖質制限食はゆるいロカボが良い
しかし、国内の学者では糖質制限に賛否両論があるのです。
糖質制限というと、
- 主食を食べない
- 炭水化物ゼロ
などの、全く炭水化物を摂らない糖質制限でなのです。
炭水が物ゼロ派では、
- 人間は本来は肉食だった
- 脳は糖質がなくてもケトン体を利用できる
と主張し、
糖質制限反対派では、
- 脳の活動には糖質が不可欠
としているのです。
我々日本人が、白米、麺類、パンを全く食べずに生涯を過ごすことは精神的にも非常に辛いことです。
また、炭水化物ゼロを通常の食生活で遂行することは非常に困難です。
ローカーボでは、
- 朝食のパンを半分にする
- 夕食のご飯を半分にする
これで充分なのです。
貴方の健康状態に合わせ、貴方に合ったローカーボを行ってください。
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