製薬会社で20年以上、新薬の研究開発に携わった経験をもとに、科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝えしています。
糖尿病治療では、日本糖尿病学会や厚生労働省も示しているように、食事療法と運動療法が基本です。
はじめに
週1回の注射で体重が激減するとネットなどで話題になっている「マンジャロ」。
しかし糖尿病治療薬であるマンジャロを痩身目的で使うことは適応外使用で副作用も心配なのです、、、
ところが、マンジャロのような薬を使わなくても、私たちの体の中には、食欲を抑える働きを持つ「GLP-1」というホルモンがあり、
食べ物によってGLP-1の分泌が増加し体重が減少したことも報告されているのです。
今日はそんな研究成果やどんな食べ物でGLP-1を増やせるのかをご説明しましょう。
マンジャロの注射ではどうして体重が減るのか
まず、マンジャロの注射でどうして体重が減少するのかを理解してください。
マンジャロを注射すると、
・食欲が低下する
・胃の活動が低下する
・インスリン分泌が増加する
という効果が現れ、総合的に減量に繋がっていると考えられています。
この効果で主役を演じているのが「GLP-1」というホルモンの働きです。
GLP-1は、私たちが食事をするとそれに応じて腸から分泌され、
・血糖値に応じてインスリンの分泌を促す
・胃から食べ物が排出される速度を遅くする
・食欲を抑える
という働きがあるのです。
マンジャロには、GLP-1の働きをまねて作用する働きがあり、そのために食欲が抑えられ、体重減少に繋がっていると考えられるのです。
マンジャロは日本では2型糖尿病の治療薬として承認されている注射薬でが、
同じ有効成分のチルゼパチドは、「ゼップバウンド」という製品名で肥満症の治療にも使用することが認められています。
👉 「痩せ薬」マンジャロに注意|厚労省・糖尿病学会がGLP-1の適正使用を警告
食べ物でGLP-1を増やすことができる
GLP-1はあなたや私の体でも作られ、食事をすると分泌されるホルモンですが、
何を食べるかによって分泌量が変わるというのです。
人を対象とした研究では、いくつかの食品でGLP-1の分泌がより増えることが確認されています。
GLP-1を増やす食べ物①:卵
2015年に発表された研究では、
肥満の若者156人を対象に、
・卵を使った高たんぱく朝食
・蒸しパンを中心とした朝食
が比較されました。
どちらも摂取エネルギーは同じになるように設定され、この朝食を3ヵ月間続けました。
その結果、
卵を使った高たんぱく朝食の群では、
・GLP-1とPYYが増加
・満腹感が増し昼食の摂取量が減少
・体重も減少
という結果が得られたのです。
さらに、体重減少、食欲、食事摂取量とGLP-1とPYYの量とには強い関連が認められたと報告しており、GLP-1とPYYの分泌量が多いほど体重減少、食欲抑制などが強かったと言うことです。
卵を使った高タンパクな朝食の内容には詳細な記載はありませんが、
・オムレツ
・チーズや肉を入れたオムレツ
などでしょうか。
#PPY(ペプチドYY / Peptide YY):食後に腸から分泌され脳に“満腹だ”と伝える強力な食欲抑制ホルモンで、GLP-1などと並び、食欲や体重をコントロールする重要な役割を担っている
GLP-1を増やす食べ物 ②:大麦
大麦は昨今ではなじみが少ないかもしれませんが、「押し麦」や「もち麦」などとして、お米に混ぜて炊く食べ方が一般的ですね。
2025年、過体重の韓国成人30人を対象に、
・大麦を使ったシリアル
・トウモロコシを使ったシリアル
を6週間にわたって食べるランダム化比較試験が行われています。
その結果、
大麦群では、
・食後30分のGLP-1が34.61 pmol/Lから44.48 pmol/Lへ約30%増加
・6週間後の体重が0.33kg減少(トウモロコシ群では0.85kg増加)
・体脂肪率が1.03ポイント低下
・腹囲が3.64cm減少
という結果が得られました。
GLP-1を増やす食べ物 ③:ホエイ
ホエイ(乳清)とはあまりなじみがないかもしれませんが、牛乳から乳脂肪分やカゼインなどの固形分を除いた半透明の液体成分のことで、ヨーグルトの表面に浮き出る透明な水分もホエイです。水溶性タンパク質、乳糖、ビタミン、ミネラルが含まれています。
市販では、乾燥粉末状に加工された「ザバス・ホエイプロテイン」などがあります。
ホエイにも、GLP-1を増やす作用が報告されています。
糖尿病患者15人を対象に、朝食の30分前に、
・50gのホエイを水に溶かして摂取した場合
・水だけを摂取した場合
を比較するランダム化クロスオーバー試験が行われました。
ホエイを摂取した場合には、
・食後180分間の総GLP-1は141%高い
・活性型GLP-1は298%高い
という結果が得られました。
さらに、
・食後血糖は28%低い
・インスリン分泌は105%高い
という結果も得られています。
GLP-1を増やす食べ物 ④:オリーブオイル
オリーブオイルでもGLP-1が増加するとの研究報告があります。
糖尿病患者を対象とした研究で、
・オリーブオイルを加えた食事
・バターを加えた食事
などを比較したところ、
オリーブオイルを加えた食事でGLP-1の反応が最も高くなりました。
また、肥満の糖尿病患者を対象とした研究でも、
・19gのオリーブオイルとニンジンを摂取
・ニンジンだけを摂取
した場合を比較すると、
・オリーブオイルと一緒に摂取した方がGLP-1の食後反応が大きい
という結果が得られました。
GLP-1を増やす食べ物 ⑤:食物繊維もGLP-1を増やす
食物繊維とGLP-1の関係についても、多くの研究が行われています。
2026年に発表されたレビューでは、食物繊維とGLP-1を調べた49報、52試験、合計1,085人の研究結果が検討されました。
その結果、GLP-1の増加が比較的多く報告されていたのは、デキストリンでは8試験中4試験、マンナンでは4試験中3試験でした。
大麦などに含まれるβ-グルカンでは9試験中3試験でGLP-1の増加が報告されています。
一方、食物繊維の種類によって結果には違いがあり、レジスタントスターチでは12試験のうちGLP-1の増加が報告されたのは1試験でした。
このレビューからも、食物繊維の種類によってGLP-1への影響が異なることが分かります。
食べ方の工夫「カーボラスト」でもGLP-1が増える
GLP-1は、「何を食べるか」だけでなく「どの順番で食べるか」によっても変わることが報告されています。
魚や肉を先に食べる「カーボラスト」
日本で行われた研究では糖尿病患者と健康人を対象に日本でおこなわれた研究では、
・米飯を先に食べた場合
・魚または肉を米飯の15分前に食べた場合
が比較されました。
その結果、
・魚や肉を先に食べるとGLP-1の分泌が増加する
・胃から食べ物が排出される速度が遅くなる
・食後の血糖値の上昇が抑えられる
という結果が得られました。
同じ食品を食べる場合でも、炭水化物を後にする「カーボラスト」という食べ方でGLP-1の分泌が変わることが明らかにされたのです。
カーボラストについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
👉 ベジファーストとカーボラスト、どっちが効果的?直接比較した研究の結果
まとめ
GLP-1の作用を増強させるマンジャロの注射では体重が激減することが話題になっていますが、副作用の危惧もあり厚労省は自由診療での使用を控えるよう警告を出しています。
GLP-1は食べ物や食べ方によっても増やすことが可能で、減量や食後高血糖を抑制することが多くの研究で明らかになっています。
医薬品を使わずとも、食べ物や食べ方の工夫で痩せホルモン「GLP-1」の分泌を促し、自然な食欲抑制と減量効果が期待できるのです。
参考文献・資料
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PubMed - 岐阜医療科学大学「飲むだけで、週1回注射するだけで、簡単に痩せられる薬があるって本当?」
岐阜医療科学大学









