妊娠糖尿病は食事と運動で治る

今日もご覧になっていただきありがとうございます。

臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた けんぞう です。

糖尿病治療薬の開発を行っていた私が言うのも何ですが、

日本糖尿病学会厚生労働省も述べるように、

糖尿病の治療では食事療法と運動療法が基本なのです。

今日も科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝えいたします。

 

はじめに

妊娠糖尿病は糖尿病のヒトが妊娠することではなく、

妊娠してはじめて糖尿病になったヒトのことですが、

妊娠糖尿病は妊婦の10%くらいで発生します。

 

妊娠糖尿病は母体だけでなく、赤ちゃんにも悪影響を与えます。

妊娠糖尿病の予防は食事と運動ですが、

最近の研究では、妊娠糖尿病には運動が重要であることが分かっています。

 

お腹が大きくなると動くのはおっくうになるのですが、

健康な赤ちゃんのために少しでも運動をすることが大切です。

 

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妊娠糖尿病とは

妊娠糖尿病は多くの妊婦さんでみられる糖代謝異常ですが、通常の糖尿病とはすこし異なります。

日本産科婦人科学会では妊娠糖尿病を次のように定義しています。

妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見された糖代謝異常(糖尿病)です。

なお、妊娠前から既に糖尿病と診断されている場合や、妊娠中に“明らかな糖尿病”と診断された場合は妊娠糖尿病には含めませんが、これらは妊娠糖尿病より重度の状態ですので、血糖をより厳密に管理する必要があります。

また妊娠前に糖尿病と診断されている場合は、血糖を十分管理した上で計画的に妊娠することが、健康な赤ちゃんを産むために非常に大切です。

 

妊娠する前から糖尿病だったヒトは、「糖尿病合併妊娠」と呼ばれ、妊娠糖尿病とは異なります

   妊娠糖尿病とは(GDM;gestational diabetes mellitus )

   ⇒ 日本産科婦人科学会

 

妊婦の10%の方が、妊娠糖尿病と診断されるそうで、非常に発生頻度が多いのです。

 

妊娠糖尿病の原因

妊娠糖尿病は、妊娠に伴って分泌されるホルモンの影響により、血中のブドウ糖の分解が悪くなることが大きな原因です。

食事で摂取した炭水化物は、ブドウ糖にまで消化分解されて血液中に入ります。

 

血液中のブドウ糖は、膵臓から分泌されるインスリンによって、細胞に取り込まれエネルギーになり、余ったブドウ糖は脂肪に変えられて貯蔵されます。

妊娠維持には黄体ホルモン(プロゲステロン)が必要なため、卵巣からだけではなく胎盤からも黄体ホルモンが分泌されるのですが、プロゲステロン、プロラクチン、コルチゾールなどはインスリン拮抗ホルモンといわれ、インスリンの働きを抑える作用が有ります。

 

これは胎児に栄養素(血糖)を供給するためではないかと考えられています。

さらに胎盤からは、インスリンを壊す酵素も分泌されるため、インスリンが効きにくくなり血糖値が上昇しやすくなるのです。 

 

妊娠中のホルモンの変化

 

 

妊娠糖尿病になるどうなる

妊婦が糖尿病で高血糖になれば当然、子宮内の胎児も高血糖になりますから、妊娠高血糖は母体に悪いだけでなく、胎児にも様々な害を及ぼすのです。

 

母体に対する影響

  • 妊娠高血圧症候群
  • 羊水量の異常
  • 肩甲難産
  • 網膜症
  • 腎症

妊娠糖尿病は分娩後には自然に直るのですが、最近は分娩後に2型糖尿病(通常の糖尿病)に移行するヒトが非常に多く、半数は分娩後に糖尿病になるとも言われています。

 

胎児に対する影響

母体の血糖値が高くなると、血中のブドウ糖は胎盤を通って胎児に運ばれ、胎児の血糖値も高くなります。

インスリンは胎盤を通過できないため、胎児は自分の膵臓からインスリンを分泌して血糖を調節するのですが、インスリンは成長ホルモンの作用も有ることから巨大児になり難産の原因になるだけでなく、

生まれた後も新生児はいろいろな合併症を持つことになります。

  • 流産
  • 形態異常
  • 巨大児
  • 心臓の肥大
  • 低血糖
  • 多血症
  • 電解質異常
  • 黄疸
  • 胎児死亡

妊娠糖尿病は胎児に対する影響の方が大きいのです。

 

妊娠糖尿病は妊娠中に母体や胎児にいろんな合併症を引き起こすだけでなく、妊娠糖尿病になった女性は将来的に糖尿病になる確率が高く、妊娠糖尿病の母親から生まれた子供は肥満などのメタボリックシンドロームになることが多く、後々まで影響が続くのです。

 


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妊娠糖尿病の診断基準

妊娠後、きちんと妊婦定期検診に通っている妊婦さんは医療機関が検査してくれますので特に検査する必要はありません。

医療機関では通常は、妊娠初期と妊娠中期(24〜28週)に血液検査で血糖値を測定し、妊娠糖尿病の疑いがあれば、ブドウ糖負荷試験をして確定診断をすることになります。

ブドウ糖負荷試験は、ブドウ糖溶液を飲んで、その後の血糖値の推移を調べて診断するのです。

日本糖尿病・妊娠学会でその基準(平成25年5月改訂)が決められています。

 

妊娠糖尿病 (GDM)

 75g糖負荷試験で次の基準の1点以上を満たした場合に妊娠糖尿病と診断

  空腹時血糖値 ≧92mg/dl 
  1時間値 ≧180mg/dl
  2時間値 ≧153mg/dl 

 

妊娠時に診断された明らかな糖尿病
(妊娠前から糖尿病だったヒト)

 75g糖負荷試験で以下のいずれかを満たした場合に診断

  空腹時血糖値≧126mg/dl
  HbA1c(NGSP値) ≧6.5%
  確実な糖尿病網膜症が存在する場合
  随時血糖値≧200mg/dlあるいは75gOGTTで2時間値≧200mg/dlの場合

 

詳しく読む⇒ 日本糖尿病・妊娠学会

 

肥満体のヒトや、糖尿病の家族歴のある人、高年妊娠、巨大児出産既往のある人などは妊娠糖尿病のハイリスクですので必ず定期的に検査をうける必要があります。

 

妊娠糖尿病を防ぐには

あなたは下記のいずれかに当てはまりますか?

  • 体重が重い
  • 両親や兄弟姉妹が糖尿病
  • 尿糖がプラス
  • 巨大児を出産したことがある
  • 流産や早産の経験がある
  • 35歳以上

などの場合には血糖値が上昇しやすいといわれています。

 

妊娠糖尿病の予防や治療は、

  1. 食事療法
  2. 運動療法

が基本で、これらで血糖値が下がらない、あるいは血糖値が非常に高い時にはインスリン療法が必要となります。

 

妊娠糖尿病での食事療法

食前100mg/dl未満、食後2時間120mg/dl未満を目標に食事療法を始めます。

食事療法では、3大栄養素の、糖質(炭水化物)、蛋白質、脂質のうち、食後の血糖値を上げる糖質を摂りすぎないようにすることが基本です。

  1. 糖分が少なく、栄養バランスのよい食事を摂る
      ご飯やパン類、穀物類などの炭水化物は、糖として吸収されるので摂取量に注意
      スポーツ飲料などの飲み物や果物にも糖分を多く含むものがあるため、注意する
  2. 決められた1日の摂取カロリーを守る

基本的には通常の糖尿病患者の食事療法と同じです。

 ⇒ 糖尿病の食事で食べて悪いものはない

 

しかし、妊婦は胎児の成長に必要な栄養素やカロリーをとる必要がありますので、ダイエットのような食事法は胎児に悪影響を与えますから絶対にしてはいけません。

血糖値を上げるのは糖質だけですから、糖質を含む炭水化物(糖質+食物繊維)の量と、糖質を多く含むデザートや果物、清涼飲料水などの摂取を制限し、蛋白質は充分に摂る必要があります。

 

牛乳はカルシウムが豊富でたくさん飲む方もおられますが、牛乳は糖質が多いので、1日にコップ1杯くらいにして、カルシウムは干しエビ、しらす、ヒジキなどを摂るようにした方が良いでしょう。

食事や運動であまり血糖値の改善が見られない場合は、内服薬が処方され、それでも下がらない場合にはインスリン注射を打つことになります。

 


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妊娠糖尿病には運動が効果的

妊娠糖尿病では食事療法と同時に運動が重要です。

 

米国カリフォルニア大学の研究グループは軽い運動が妊娠糖尿病に有効であるとの論文を発表しています。

A Randomized Controlled Trial.  Obstetrics & Gynecology. Nobles C et al.  2015; 125: 1195-204.

 詳しく見る ⇒ Effect of an Exercise Intervention on Gestational Diabetes Mellitus

 

サンディエゴ校を中心とした研究グループが、産婦人科学の専門誌オブステトリクス・アンド・ガイナコロジー誌2015年5月号で報告しています。

この研究では、運動が、妊娠糖尿病のリスクを下げられるのかどうかを検証しています。

研究では、

耐糖能、血糖値などから、妊娠糖尿病リスクが高い352人の妊婦(平均妊娠18.2週)を選んで、2つのグループに分け、
ランダムに172人ずつの2グループに分かれてもらい、

  1. 個人のやる気に合わせて運動を12週間行う
  2. 運動はしないで健康指導を受けてもらう

をして貰ったのです。

運動は、米国産科婦人科学会が定めた「妊娠中における身体活動のガイドライン」に沿って、

  • 食後に30分程度のウォーキング
  • マタニティヨガ、マタニティビクス、マタニティスイミング

などから選んで貰ったのですが、

 

その結果、

運動グループでは、健康指導グループより

  • 妊娠糖尿病のリスクが61%低下
  • 耐糖能異常のリスクが68%低下
  • 血糖値異常のリスクが86%低下

と、いずれも低くなっていたのです。

 

米国産科婦人科学会(ACOG)は、1985年 に妊娠・出産・産後の女性に対して初めて妊婦運動のガイドラインを発表し、

2002年には

「合併症がなく健康な妊婦は積極的に運動をするべきで、妊娠前に運動をしていなかった女性はエクササイズプログラムを開始すべきである」

と発表しています。

 

また、産後にも妊娠に伴う生理的変化や形態学的変化が続くので運動の継続を推奨しているのです。

(社)日本母子健康運動協会でも産前産後の運動の効果を述べていますが、具体的な運動の例は挙げていないのが残念です。

なお、(社)マタニティフィットネス協会では、マタニティフィットネスをおこなっている施設、医療機関などを紹介していますので、検索してみたらいかがでしょうか。

 

 詳しく読む⇒ (社)マタニティフィットネス協会

 

妊娠糖尿病は貴女の心掛け次第

妊娠糖尿病は、家族に糖尿病が多い人はなりやすい、肥満気味のヒトはなりやすいと言うことはあっても、最終的には貴女の心掛け次第です。

妊娠糖尿病の予防には、普段からバランスの良い食生活、適度な運動を心がけてください。

これは妊娠糖尿病対策だけでなく、出産する上でもとても大切なことです。

バランスの取れた食事を摂る

適度な運動をする

これは凄く簡単なことなのですが、実施するか、継続できるか、は貴女の決意次第なのです。

妊娠中期の運動が妊娠糖尿病のリスクを低下させるのです

 

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