製薬会社で20年以上、新薬の研究開発に携わった経験をもとに、科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝えしています。
糖尿病治療では、日本糖尿病学会や厚生労働省も示しているように、食事療法と運動療法が基本です。
はじめに
糖尿病になると、一生治療を続けなければならないと思っている人も多いのではないでしょうか。
ところが、2型糖尿病では、薬を使用しなくてもHbA1cが6.5%未満になる「寛解」に至る人がいるのです。
では、どのような人が寛解しやすいのでしょうか。そして、一度寛解すれば、その状態を維持できるのでしょうか。
日本人の2型糖尿病患者4万8,320人を調べた大規模研究から、興味深い結果が報告されています。
治癒(ちゆ)とは、病気が完全に治り将来的に再発することがない状態。
2021年、米国糖尿病学会などの専門家グループは、血糖降下薬を使用していない状態でHbA1c 6.5%未満が少なくとも3カ月間持続している状態を、2型糖尿病の「寛解」とすることを提唱している。
BMIを10%低下させれば糖尿病が寛解する人が多い
新潟大学などの研究グループは、全国の糖尿病専門施設に通院している日本人2型糖尿病患者4万8,320人を対象に、平均5.3年間追跡しました。
この研究では、HbA1c 6.5%以上、あるいは血糖降下薬を処方されている2型糖尿病患者で、血糖降下薬を中止して少なくとも3ヵ月以上HbA1c 6.5%未満を維持した場合を寛解と判定しています。
その結果、3,677人が寛解していることが確認されたのです。
どのような人が糖尿病を寛解するのか?
研究グループは、寛解と関連する因子を調べたところ、
・男性
・40歳未満
・糖尿病の罹病期間が1年未満
・HbA1cが7.0%未満
・BMIが高い
・1年間のBMI低下率が大きい
・血糖降下薬を使用していない
という結果が得られました。
なかでも体重の変化との関連が認められ、1,000人を1年間追跡した場合、
・BMIが5~9.9%低下した人では約25人が寛解
・BMIが10%以上低下した人では約48人が寛解
する割合で、
BMIを10%低下させれば糖尿病が寛解する人が多いのです。
BMIの低下が大きいほど寛解する確率が上がる
研究グループはさらに、日本人2型糖尿病患者3万9,676人を対象として、BMIの低下と寛解との関係をさらに詳しく解析しました。
この研究でも、HbA1c 6.5%以上、あるいは血糖降下薬を処方されている糖尿病患者が対象ですが、血糖降下薬を中止して少なくとも3ヵ月間はHbA1c 6.5%未満を維持していることを寛解の条件としています。
その結果、BMIの低下が大きいほど寛解の発生率が高くなりました。
BMIが22.5以上の1,000人を1年間追跡したところ、
・BMIが7.0~9.9%低下した人では約25人が寛解
・BMIが10%以上低下した人では約50人が寛解
という結果が得られました。
さらに、HbA1cが6.5~6.9%の1,000人を追跡したところ、
・BMIが10%低下した人では99人が寛解
したのです。
一方、血糖降下薬を服用していなかった人だけについて調べた結果、
・BMIが10%低下した人では1,000人あたり約92人が寛解する
ことが分かったのです。
研究グループは、糖尿病を寛解するためには、
・早期診断
・10%程度の体重減少
が必要だと結論しています。
糖尿病は寛解できても、その維持が難しい
糖尿病でも寛解する人の多いことに驚かれたのではないでしょうか?
しかし、問題は寛解を維持する難しさなのです。
なんと、寛解した3,677人のうち2,490人(67.7%)が1年間に糖尿病を再発したのです。
糖尿病を再発させてしまった人には、
・糖尿病の罹病期間が長い
・BMIが低い
・1年間のBMIの低下率が小さい
という特徴が見られたそうで、
研究グループは、一度寛解した場合でも、
・体重を適正に管理する
・定期的に診察を受ける
ことが糖尿病の再発予防に重要であると述べています。
まとめ
いかがですか?
糖尿病でも寛解する人の多いことに驚かれたと思います。
特に、
・糖尿病の病歴が短い
・HbA1cが比較的低い
・BMIが高い
・体重の減少率が大きい
ほど寛解できる可能性が高いということなのです。
糖尿病になる大きな要因には肥満があるのですが、特にBMIの低下が大きい人ほど、糖尿病を寛解する割合が高かったことが分かったのです。
参考情報
- Incidence and predictors of remission and relapse of type 2 diabetes mellitus in Japan: Analysis of a nationwide patient registry (JDDM73)
- Relationship between the magnitude of body mass index reductions and remission in patients with type 2 diabetes in real world settings: Analysis of nationwide patient registry in Japan (JDDM74)








