脂肪肝は見逃されていた糖尿病の合併症
今日もご覧になっていただきありありがとうございます。
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた けんぞう です。
糖尿病治療薬の開発を行っていた私が言うのも何ですが、
糖尿病の治療では食事療法と運動療法が基本なのです。
今日も科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝えいたします。
はじめに
糖尿病では肝硬変が多く、糖尿病から肝硬変を併発し死亡する人が多いそうです。
非アルコール性脂肪肝は糖尿病の見逃されていた合併症だとする論文もあります。
隠れ糖尿病のあなたは既に脂肪肝かも知れないのです。
非アルコール性脂肪肝は見逃されていた糖尿病の合併症
最近、糖尿病を罹患して最終的に肝硬変で死亡する人が多いことが分かり、これまでは余り深刻に考えられていなかった糖尿病における脂肪肝が、あなどれない病気であると認識さつつあります。
米国では成人の20%が、糖尿病患者では30~80%に脂肪肝があると報告されています。
テキサス大学サンアントニオ健康科学センターの研究グループは、2010年11月に、Nature Reviews Endocrinology
という学術雑誌に、
非アルコール性脂肪肝疾患は糖尿病の見逃されている合併症だ
との論文を発表しています。
NONALCOHOLIC FATTY LIVER DISEASE Liver disease an overlooked complication of diabetes mellitus
Abstract :A recent study has shown that the diagnosis of new-onset type 2 diabetes mellitus
is associated with a substantial risk of developing chronic liver disease. Should screening
for liver disorders be part of the routine evaluation of patients with type 2 diabetes mellitus?
詳しく見る ⇒ 原著論文(英文)
研究グループは、
カナダのオンタリオ州の保健管理データベースの保存データを解析し、
- 新たに糖尿病と診断された成人患者 : 438,069 人
- 糖尿病ではなく背景因子が同じ成人 : 2,059,708 人
について、
- 肝硬変
- 肝不全
- 肝硬変の合併症
- 肝移植を要する重大な肝疾患
の発症を、平均6.4 年にわたって追跡したのです
その結果、
糖尿病患者群では糖尿病でないヒトに比べて肝疾患の発症リスクが有意に高い
ことが判明したのです。
研究グループでは、
新たに2 型糖尿病と診断された患者には肝疾患のスクリーニングを加えるべきであろうと述べているのです。
糖尿病予備軍では非アルコール性 脂肪肝疾患が多い
少し前の話になってしまうのですが、2009年9月23日の、「NHK・ためしてガッテン」では、
隠れ糖尿病の原因は脂肪肝だった
という放送をしています。
隠れ糖尿病とは、空腹時血糖値は正常ですが、食後血糖値が高い、「糖尿病予備軍」といわれる人達のことです。
隠れ糖尿病では、肝臓に脂肪が溜まる脂肪肝になっているため、糖の取込みが悪く、食後の血糖値が下がらない、というのです。
脂肪肝が先か、糖尿病が先か、いろんな研究報告がされていますが、糖尿病と脂肪肝とは密接な関係にあることは間違いの無いことなのです。
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糖尿病の合併症と言われる非アルコール性脂肪肝とは
糖尿病の合併症と言われる非アルコール性脂肪肝とはいったいどのような疾患なのでしょうか?
非アルコール性脂肪肝はNAFLD(Non Alcoholic Fatty Liver Disease)とも言われます。
脂肪肝には、
- アルコール性脂肪肝
- 非アルコール性脂肪肝
があり、飲酒に起因する脂肪肝がアルコール性脂肪肝で、個体差はありますが目安として、毎日3合以上の日本酒を飲む人の多くで脂肪肝が認められます。
アルコールのほとんどは肝臓で分解されて体外へ排出されるおですが、分解の過程で、肝臓の働きに異常が生じることにより、肝臓中に脂肪が溜まってしまうのです。
非アルコール性脂肪肝は、過剰なアルコールの摂取がないにも関わらず肝臓に脂肪が蓄積する脂肪肝で、
- 糖尿病
- 肥満
- インスリン抵抗性
との関連が指摘されているのです。
さらに、
非アルコール性脂肪肝は、
- 世界で最も多くみられる肝疾患で
- 肝臓疾患による死亡と関連する
ことも知られているのです。
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脂肪肝は肝硬変や肝がんに進展する
非アルコール性脂肪肝(NAFLD)は、1986 年にSchaffnerらによっ提唱された疾患で、肝硬変や肝がんなどに移行することはありません。
しかし、非アルコール性脂肪肝は、NASH(Non Alcoholic Steato Hepatitis)といわれる、非アルコール性脂肪肝炎に移行します。
NASHは、肝硬変や肝癌にも進展し得る進行性の疾患です。
- 非アルコール性脂肪肝 (NAFLD)
- 非アルコール性脂肪肝炎 (NASH )
この2つは非常に似た名前ですが、全く異なった疾患ですから十分注意してください。
NAFLDは単純性脂肪肝と呼ばれることもあり、そのままでは肝硬変や肝がん移行することはないのですが、
容易に、NASHに進展するのです。
その仕組みも最近ようやく判明し、two hit theory と言われています。
糖尿病や肥満などでNAFLDになり、高血糖状態が続くと、酸化ストレスや種々の要因によって重篤なNASHに移行するのです。
上の論文でも紹介したように、
糖尿病患者は、糖尿病に比べてNAFLD の発症リスクが高く、
糖尿病患者の50~ 60% 程度がNAFLD
そして、
その中の20%程度はNASH
だといわれています。
NASHは肝硬変や肝がんになりやすい
日本消化器病学会では、NASHは肝硬変や肝がんになりやすいと警告しています。
現在は、糖尿病や肥満は、狭心症や心筋梗塞を引き起こすとして危惧されているのですが、
近い将来、
NASHから肝硬変、肝がんに進展して死亡する割合が心臓病と同じくらいになる
だろうと予想されているのです。
2013年の日本糖尿病学会で、大阪府済生会吹田病院消化器・肝臓病センターの岡上武氏は、
糖尿病患者は肝障害を高率に合併し、肝癌の合併率も高い。そのうち、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に由来する肝癌が、男女共に40%前後存在することが推定された。
と発表しています。
脂肪肝は食事療法で改善する
日本消化器病学会では、
食事や運動療法によって生活習慣病を改善して脂肪肝病態を是正することにより,NASHの発症・進展やC型肝炎における発がんのリスクを軽減する可能性がある
と述べています。
さらに、
米国糖尿病学会(ADA2013)では、テキサス大学サンアントニオ健康科学センターの研究グループが、
糖尿病を合併した非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)患者に、食事療法とピオグリタゾン投与(18ヵ月間)したところ、肝脂肪率がおよそ60%減少、インスリン感受性も有意に改善した
ことを発表しています。
例え、
- 糖尿病で非アルコール性脂肪肝を併発しても
- 糖尿病予備軍で非アルコール性脂肪肝を併発しても、
食事療法をきちんとやれば脂肪肝は改善できるのです。
により、
できるだけ早く高血糖を改善することです。
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