相撲取りのほとんどは体重超過の肥満で、糖尿病のリスクが心配です。
相撲取りでも照ノ富士のように糖尿病になる力士はいるのですが、
相撲取りには糖尿病が非常に少ないのです。
その理由は、
- 相撲取りは激しい運動をする
- 相撲取り脂肪は皮下脂肪
だからだといわれています。
本当に相撲取りは糖尿病が少ないのか?
文献を調べたら面白い研究報告がありました。
相撲取りは糖尿病にならないの?
相撲取りは超肥満タイプだけど本当に糖尿病にならないの?
この疑問を解決するために文献を調べてみたところ、
少し前に行われたのですが、非常に興味深い研究論文が見つかりました。
この研究は、東京慈恵医科大学と東京教育大学(現:筑波大学)の研究グループがおこなったもので、
力士の糖尿病発現頻度に関する調査成績
という研究論文です。
くわしく見る ⇒ 原著論文
調査の対象は、
- 十 両 以 上 の 現 役の相撲取り : 68人
- 引退した年 寄 : 18人
の合計計86人で、
年齢別の人数は下記の表ですが、
現役の相撲取りでは20歳代が圧倒的に多く、
40歳代以上は引退した年寄りだけ、
なのですが、
これは相撲取りということから当然のことでしょう。
くわしく見る ⇒ 相撲取りの糖尿病発現頻度の調査
10歳代 | 20歳代 | 30歳代 | 40歳代 | 50歳代 | 合計 | |
現役 | 2 | 59 | 7 | 0 | 0 | 68 |
年寄り | 0 | 0 | 5 | 10 | 3 | 18 |
1)血糖の測定法
通常、わたしたちの健康診断での血糖値の測定では、
空腹時血糖
を測定するのが原則です。
この場合の空腹時血糖値とは、
- 健康診断の前の日は早めに夕食を摂り、
- 朝食は食べないで健康診断に、、、
という手順ですが、
相撲取りは、朝食 を食べずに朝稽古をガンガンやって、
11時頃に、朝食と昼食を兼ねた超大盛りの食事を摂るので、
空腹時血糖値を測定できないことから、
朝昼食を摂ってから2~3時 間後の血糖値を測定しています。
2)肥満度の測定
相撲取りの肥満 度を、
肥満度% = (体重 - 標準体重) ÷ 標準体重 x 100
(標準体重は、身 長(cm) - 110〕kg とする)
として計算しています。
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相撲取りは引退した後に糖尿病になる
さて、気になる結果はどうだったでしょうか?
1)相撲取りはやはり超肥満体
現在の肥満度の評価では、
BMI=体重kg ÷((身長m)x2)
を計算し、
BMIが22になる体重を標準体重として判定しています。
すなわち、
標準体重=22×((身長m)x2)
と計算して標準体重をいくらオーバーするかで肥満度を評価するのですが、
この調査をした当時はまだBMIの概念が普及していませんでした。
この調査では、
上に紹介した計算式により、
肥満度10%を標準体重としています。
肥満度を測定した結果は、
相撲取りでは、
- 肥満度10%(標準型): 8人(12%)
- 肥満度31~70% : 53人(78%)
- 肥満度100% : 11人(16%)
と、相撲取りの約80%は肥満です。
年寄りでは、
相撲取りを引退した年寄りにおいても、
肥満度が10%の標準体型はわずか2人(11%)で、
相撲取りを引退した後も引き続き肥満体型を保持しているのです。
2)相撲取りの血糖値は低め
相撲取りの血糖値はどうだったのでしょうか?
年齢と血糖値のを調べたところ、
10歳代の相撲取り2人の血糖値は、
- 2人とも、100~110mg/dl
と一般人と比べても異常のない値でしたが、
20歳以上の相撲取りでは、
血糖値が140mg/dlを超えた者が、
- 20歳代では : 7名 (11.8%)
- 30歳代では : 4名 (33.3%)
- 40歳代では : 10名 (77%)
とやや高いことが分かりました。
一般人では空腹時血糖値が140mg/dl以上であれば糖尿病の疑いと判定されます。
さらに、
相撲取りを引退した年寄りでは、
- 血糖値が140mg/dl以上 : 12人(66.6%)
と、多くの年寄りが高い血糖値を示しています。
さらに、
血糖値が160mg/dl以上の人数を比較すると、
- 相撲取り : 1人(1.4%)
- 年寄り : 11人(61%)
ということで、
現役を引退した年寄りでは高血糖の者が多いことが分かったのです。
やや古い調査で、現在では空腹時血糖値だけでなく数ヵ月間の血糖値を反映するHbA1cを測定するのですが、この当時であれば仕方ないでしょう。
現在の基準では、
「空腹時血糖値が120mg/dl以上であれば糖尿病の疑い」
としているのですが、
この研究では、
超昼食後2~3時間の血糖値140mg/dl以上を糖尿病の疑い
と判断しています。
その結果、
- 相撲取りで糖尿病と考えられるのはわずか1人
でしたが、
引退した年寄りでは
- 61%が160mg/dlをも超えており、
さらに、
140mg/dl以上だった66%の年寄りの全ての人が、
- 糖尿病で治療を受けたことがある
- 糖尿病で治療中である
と回答したそうです。
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相撲取りでは高血糖による血管障害が、
研究グループは、
今回の調査を行なつたが結果については、
解決すべき多くの問題があると指摘し、
この結果だけで相撲取りの糖尿病を云々するのは早計だとしているのです。
例えば、
一般人と相撲取りでは食事の摂り方が大きく異なり、
今回の評価で用いた、
- 食後2~3時間の血糖値で評価
- 140mg/dl以上は糖尿病の疑い
との診断基準にも考慮が必要だとしているのですが、
この調査で、
- 相撲取りでも糖尿病は肥満と密接な関係にある
- 引退した年寄りでは肥満が密接な関係にある
ということが分かったとしています。
さらに、
相撲取りでは、
- 高血圧
- 腎障害
が高頻度で見られたことから、
糖尿病の合併症の根本的な障害である、
高血糖による血管障害が起きている可能性がある
とコメントしています。
相撲取りは糖尿病には至っている割合は少ない
のですが、
高血糖により血管障害が進行している
ということなのです。
糖尿病は症状のない病気です。
糖尿病は血糖値が高いだけの病気なのですが、
高血糖が続くと血管壁が傷害され、
微小の血管が傷害されると、
- 糖尿病神経障害
- 糖尿病網膜症
- 糖尿病腎症
などの合併症が、
太い血管が傷害されると、
- 脳梗塞
- 心筋梗塞
などの合併症が起きるのです。
肥満は糖尿病の最も重要な危険因子です。
肥満は糖尿病を引き起こしますが、
肥満を解消すれば糖尿病から離脱もできるのです。
経済評論家の森永卓郎さんは、
インスリン注射も必要な重度の糖尿病でしたが、
食事療法による減量で糖尿病を克服したことは有名な話です。
相撲取りは超肥満でもわたしたちと異なって、
持続する高血糖のため血管障害の危険が大きいようです。
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