今日もご覧になっていただきありがとうございます。
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた けんぞう です。
糖尿病治療薬の開発を行っていた私が言うのも何ですが、
糖尿病の治療では食事療法と運動療法が基本なのです。
今日も科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝えいたします。
はじめに
糖尿病の運動療法は、
- エネルギーを消費して肥満を予防になる
- 骨格筋による糖の取込みを促進して血糖値を下げる
- 内臓脂肪を減らしインスリン抵抗性を改善して血糖値を下がりやすくする
という効果があるのです。
しかし、運動の効果には個人差があることが知られているのですが、
金沢大学の研究グループは、
このような”運動抵抗性”には肝臓のホルモン分泌量が関与している
ことを明らかにしました。
糖尿病患者では運動抵抗性が増して運動療法の効果がないというのです。
糖尿病では運動療法の効果が出にくい?
糖尿病の治療では食事療法と運動療法が基本ですが、
運動の効果には個人差があり、型糖尿病や肥満症など運動不足に関連した生活習慣病の治療法開発に光をあてるものです。
金沢大学と同志社大学、筑波大学などの研究グループは、
糖尿病で運動療法の効果が上がらない原因には肝臓のホルモンが関与している
ことが分かったと発表しました。
くわしく見る ⇒ 金沢大学プレスリリース
この研究成果は、2017年2月27日にアメリカの科学雑誌Nature Medicineに掲載されました。が米科学誌ネイチャー・メディシン電子版に発表した。
Deficiency of the hepatokine selenoprotein P increases responsiveness to exercise in mice through upregulation of reactive oxygen species and AMP-activated protein kinase in muscle
Our study suggests that inhibitors of the SeP–LRP1 axis may function as exercise-enhancing drugs to treat diseases associated with a sedentary lifestyle.
詳しく見る ⇒ 原著論文
実験では、
- 通常のマウス
- セレノプロテインPを生成できないマウス
について、
- 1日30分の走行を30日間継続
させたところ、
セレノプロテインPを生成できないマウスでは、
- 走行限界距離が約2倍長い
- インスリンの血糖低下作用が大きい
という結果が得られたというのです。
さらに、健康な女性においても、
セレノプロテインPの血中濃度が高い女性では最大酸素摂取量が低く運動の効果が上がらない
という結果が得られたのです。
研究グループは、
糖尿病患者や肥満者ではセレノプロテインPが運動療法の効果を低減する
というのです。
今後、新しい「運動効果増強薬」の開発や、「運動効果の出やすさの診断」などにつなげたいとしています。
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運動療法を低下させるセレノプロテインPとは?
セレノプロテインPというホルモンは、2010年に金沢大学の金子教授らが発見した新しいホルモンです。
セレノプロテインPは、
- 高齢者
- 2型糖尿病患者
- 脂肪肝の患者
において血中濃度が高い傾向のあることが知られ、
血糖値を上げる働きがある
とされると考えられています。
したがって、
糖尿病患者のセレノプロテインPの血中濃度を調べれば、
運動療法の効果を予測できる可能性がある
のです。
さらに、
- 肝臓でのセレノプロテインPの合成を抑える
- 筋肉へのセレノプロテインPの取り込みを阻害する
というような薬物が開発されれば、糖尿病の運動療法の効果をアップすることが期待されるのです。
「セレノプロテインP」の血中濃度は、2型糖尿病や脂肪肝の患者、高齢者で上昇する。そうした人では「セレノプロテインP」が過剰にあるため、運動を行っても、その効果が起こらないという「運動抵抗性」で生じている可能性がある。
今回の研究では、運動の効果に個人差がある原因のひとつが解明された。研究チームは今後、2型糖尿病などの身体活動低下に関連した疾患に対して、「セレノプロテインP」とその受容体を標的にした新しい「運動効果増強薬」の開発や、測定による運動効果の出やすさの診断などにつなげたいとしている。
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糖尿病における運動療法は軽い運動で良い
糖尿病の治療の基本は、
- 食事療法
- 運動療法
です。
糖尿病は血中の糖の濃度が高くなる病気ですから、
血糖を下げるには、
- 糖の摂取を少なくする
- 糖の消費を高める
ことが必要なのですが、
- 食事療法 ⇒ 糖の摂取を少なくする
- 運動療法 ⇒ 糖の消費を高める
ということなのです。
血糖(ブドウ糖)は体のエネルギー源ですが、骨格筋は体重のおよそ50%を占めており、糖を消費する一番大きな器官は筋肉なのです。
運動は筋肉を動かして筋肉の代謝を高め糖の消費を増やして血糖値を下げる
のです。
薬物療法は、食事療法や運動療法で血糖コントロールができなかったときにおこなわれるのです。
日本糖尿病学会の「糖尿病治療ガイドライン」には、
食事療法や運動療法を2~3ヵ月実施しても目標の血糖コントロールが達成できなかった場合には薬物療法を開始する
と明記されています。
糖尿病の運動療法は軽い運動でも効果がある
運動療法というと、
- 毎日ジョギング
- ジムに通って筋トレ
などをしなければならないと考えてしまうかもしれませんが、
糖尿病の運動療法は軽い運動でも効果があるのです。
でもお話しましたが、
というのです。
そして、座る時間を短くすると糖尿病が改善するといわれ、立っているだけでも糖尿病に効果があるのです。
自動車の保有台数の増加に伴って、糖尿病患者の数が増えているというデータも発表されてに、
厚生労働省の国民健康調査による、2003~2013年までの10年間の歩行数の年次変化は明らかに減少傾向にあり、糖尿病患者の急増にはこのような日常における運動量の減少が関与している可能性も否定できないのです。
糖尿病における運動療法では、
- 通勤時に駅まで歩く
- エレベーターを使わずに階段を昇る
ことでも効果が見込めるのですが、
さらに効果的な糖尿病における運動療法は、糖尿病の運動療法で必要な運動の種類と量でも詳しくお話ししましたが、
ウオーキングであれば、
- 1回、15~30分間、朝夕2回
と、糖尿病の運動療法は土日などの週2回で良いのです。
今回の金沢大学の研究報告はやや基礎的で難しかったと思いますが、
糖尿病ではセレノプロテインPにより運動抵抗性が増して運動療法の効果が低下する可能性がある
ということです。
糖尿病の運動療法は早めに始めるほうが効果が見込めるようなのです。
明日から、
駅まで歩いてみませんか?
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