今日もご覧になっていただきありがとうございます。
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた けんぞう です。
糖尿病治療薬の開発を行っていた私が言うのも何ですが、
糖尿病の治療では食事療法と運動療法が基本なのです。
今日も科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝へします。
はじめに
糖尿病とうつは全く関係がなさそうですが、
- 糖尿病のヒトはうつ病になりやすい
- うつのヒトは糖尿病になりやすい
ということは医学的にも証明されているのです。
高血糖が気になるあなたは早めに対策をとってください。
糖尿病のヒトはうつ病になりやすい
糖尿病は血糖値が高いだけで、特別な症状はありませんが怖いのは高血糖が引き起こす合併症で、血管障害よる心筋梗塞や脳卒中、網膜症、神経障害、腎症などです。
しかし、糖尿病はその他にも様々な合併症を引き起こすことが知られています。
その一つは、「うつ」なのです。
厚生労働省の「メタボリック症候群が気になる方のための健康情報サイト」や「国立精神・神経医療研究センター 」によると、
- 糖尿病の約31.0%にうつ症状がある
- 糖尿病患者の11.4%はうつ病と診断
- 糖尿病患者5.7%は抗うつ薬を服用
- 糖尿病患者の13%は不安障害
と述べています。
日本人のうつ病の生涯有病率(これまでにうつ病になったことがある者の割合)は3~7%といわれていますので、
糖尿病患者のうつの有病率である11%は通常のヒトに比べて高い割合なので、うつの症状があるヒトも含めれば、糖尿病のヒトは非常にうつになりやすいのです。
詳しく読む ⇒ 国立精神・神経医療研究センター
糖尿病のヒトの3人に1人はうつ病の症状がある
さらに、国立精神研究センターでは、
糖尿病でうつになったヒトは、糖尿病性合併症を引き起こしやすく、その頻度が高いのは、
- 性機能障害
- 糖尿病神経障害
- 糖尿病腎症
- 大血管障害
- 糖尿病網膜症
の順であると述べています。
すなわち、
- 糖尿病 + うつ + 性機能障害
- 糖尿病 + うつ + 神経障害
- 糖尿病 + うつ + 腎症
- 糖尿病 + うつ + 大血管障害
- 糖尿病 + うつ + 網膜症
ということです。
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糖尿病とうつ病との関係
糖尿病とうるの関係については、神経系、内分泌系、さらには免疫系などの多方面の相互関係から研究がすすめられています。
糖尿病では、食事制限や運動の励行などの厳しい自己管理による血糖コントロールが求められることから、過度のストレスがかかりうつを併発する確率が高くなると思われます。
また、うつの患者でも糖尿病を併発する確率が非常に高いのですが、これはうつの患者は自己管理が難しいくなることから、食生活や通常の生活環境を整えることが困難になり糖尿病になりやすくなるといわれています。
糖尿病のヒトがうつ病になりやすい理由
京理科大学と群馬大学の研究チームは、糖尿病とうつの関係について、インスリン分泌と脳神経に関与する蛋白質に関連性があるからではないかとの研究報告を出しています。
その論文によると、
- インスリンの分泌にはCAPS1という蛋白質が関わっている
- CAPS1とは脳神経ネットワークに関わるBDNF蛋白の分泌にも関与している
- BDNFは学習や記憶などの機能を調整し、うつなどの精神疾患にも関連している
ということが分かり、
インスリン分泌の異常がうつの引き金になっている
ことが判明したのです。
現時点では、まだ不明なことが多いのですが、近い将来インスリン分泌を正常化してうつを予防する糖尿病治療薬の開発も期待されています。
うつ病のひとは高血糖になりやすい
さらに最近の研究では、
- うつでは空腹時血糖値が正常でも食後血糖値が高くなりやすい
- うつでは血糖値は正常でも血中インスリン濃度が高い
- うつによる高血糖はインスリン抵抗性による
ということも分かってきています。
うつから糖尿病を併発したヒトでは高インスリン血症のヒトが多く、うつが治ると血糖値も正常に戻るヒトが多かったそうです。
[参考図書]
『糖尿病とうつ ~双方向からのパスウェイ~ 改訂版』
国際医療福祉大学医療福祉学部教授 上島国利 編
2014年10月発行 医薬ジャーナル社刊 定価 4,000円
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糖尿病のヒトが うつ にならないためには
今までお話ししましたように、糖尿病のヒトはうつになりやすいのです。
そして、糖尿病のヒトがうつになると合併症によりなりやすいのです。
糖尿病になったら、うつにならないように気を付けなければいけませんが、早期発見が大事です。
糖尿病でうつ病を併発しているヒトの半数は、「うつ」になったことに気づいていないといわれています。
体の不調が糖尿病によるものなのか、うつによるものかが、自分ではなかなか判断が付かないからです。
うつ病の症状には、体の不調と心の不調があります
からだの不調
- 体重の減少
- 食欲不振
- 性欲減退
- 睡眠過多
- 動作や話し方が遅くなった
などが体のサインなのですが、これだけではうつだとは気付かないものです。
こころの不調
- 訳もなく悲しく罪悪感を感じる
- 何をやっても楽しくない
- 物事に集中できず長続きしない
- 以前は興味があったのに今は興味が持てない
- 死にたいと思う
糖尿病でうつになっても、精神療法や抗うつ薬によりうつは改善します。
糖尿病は内科、うつは神経科ですが、上記のような変調を感じたら、糖尿病の内科医に相談してみるべきです。
また、新たに精神科医を受診するときには、糖尿病に罹患していることを伝えてください。
何事も独りで考え込まず、布団の中でクヨクヨ考えるのは一番いけないことです
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まずは糖尿病の対策を
最近では日本人の10人に1人が糖尿病だといわれていますが、糖尿病では自覚症状がないことや、健康診断で血糖値が高く再検査が必要だといわれても診断を受けない人も多く、
糖尿病で治療を受けている人は治療が必要なヒトの半分以下だと推定されています。
しかし、毎年、糖尿病腎症で新たに1万5,000人が人工透析が必要になり、約1,000人が網膜症で失明しているのです。
「 糖尿病+うつ」になると、性機能障害、神経障害、腎症、網膜症などの合併症を起こしやすくなるのですが、それ以外にも様々な悪い影響があります。
糖尿病にうつを併発することにより、
- 医療費が4.5倍上がる
- 食事療法・運動療法の継続率が低下し血糖コントロールが悪化する
- 生活の質(QOL)が低下する
- 死亡率が1.6倍上がる
ことも明らかになっており(国立精神・神経医療研究センター)、
糖尿病のヒトはうつの併発に充分気を配る必要があります。
糖尿病の予防は食事療法、うつの予防は早期発見です
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