糖尿病の治療薬の副作用で下肢切断のリスクが高まるとの衝撃的なニュースが流れています。
糖尿病における下肢切断は糖尿病合併症の一つです。
糖尿病神経障害が悪化すると血行不良、壊疽などが起こり、しまいには下肢の切断に至ります。
しかし、
糖尿病治療薬の副作用で下肢切断が起こるというのです。
下肢切断が起こるという糖尿病の治療薬はどの治療薬なのでしょうか?
どうして糖尿病の治療薬で下肢切断が起きるのでしょうか?
目次
欧州でSGLT2阻害薬が下肢切断リスクを高めると警告
2017年2月10日、
欧州医薬品庁(EMA)の医薬品安全性監視・リスク評価委員会(PRCA)は、
2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の服用は下肢切断リスクを高める可能性がある
との警告を出しました。
これは、欧州で実施中の、
SGLT2阻害薬であるカナグリフロジンを用いた2つの臨床試験の中間解析データにおいて、下肢切断のリスクが高まることが明らかになったことを受けたものです。
カナグリフロジン以外のSGLT2阻害薬は、下肢切断のリスクを高めるとのデーターはないとしながら、
全てのSGLT2阻害薬の添付文書に下肢切断のリスクが高まる可能性があるとの警告を記載するように勧告しました。
欧州で実施の2つの臨床試験とは、
- CANVAS
- CANVAS-R
という大規模臨床試験で、
CANVAS試験では、カナグリフロジンの心血管にたいする安全性を確認するため、心血管リスクの高い糖尿病患者約4,000例にカナグリフロジン(100mg、200mg)を投与する試験で、中間解析において、下肢切断リスクの上昇が認められたのです。
CANVAS-R試験も、心血管リスクが高い糖尿病患者を対象に、腎機能への影響を検証する試験ですが、下肢切断リスクが統計学的には有意でないものの、わずかな上昇が認められたとしています。
米国でもSGLT2阻害薬が下肢切断リスクを高めると警告
SGLT2阻害薬が下肢切断リスクを高めると警告は、アメリカでも出されています。
2016年5月18日、米食品医薬品局(FDA)は、
SGLT2阻害薬であるカナグリフロジンの服用により下肢切断のリスクが高まるとの安全性情報を出しています。
Canagliflozin (Invokana, Invokamet): Drug Safety Communication – Clinical Trial Results Find Increased Risk of Leg and Foot Amputations
FDA is alerting the public about interim safety results from an ongoing clinical trial that found an increase in leg and foot amputations, mostly affecting the toes, in patients treated with the diabetes medicine canagliflozin (Invokana, Invokamet). FDA has not determined whether canagliflozin increases the risk of leg and foot amputations. FDA is currently investigating this new safety issue and will update the public when we have more information.
全文を読む ⇒ US Food&Drug administration
これは、カナグリフロジンを用いた大規模臨床試験CANVASの1年時点での中間解析において、カナグリフロジン服用群では下肢切断の割合が約2倍に増加という結果を受けたものです。
この安全情報によると、
カナグリフロジン服用による下肢切断は、膝下切断などの重篤なものではなく、足趾部の小切断だったとしていますが、
現在、FDAは全てのすべてのSGLT2阻害剤について下肢切断の安全評価を実施していると表明しており、
カナグリフロジンが下肢切断のリスクを高めるとは結論していないものの、
- 医療関係者には添付文書に従った処方を行うこと
- 患者は自己判断でカナグリフロジンの服用を中止しないこと
を求めており、
カナグリフロジンの服用において、
- 足の痛みや圧痛
- 足の腫れや潰瘍
- 足への感染
が見られた場合には必ず医療機関を受診するよう勧告しているのです。
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SGLT2阻害薬はどうして下肢切断のリスクを高めるのか
カナグリフロジンの服用でどうして下肢切断のリスク高かまるのか、
欧州医薬品庁の医薬品安全性監視・リスク評価委員では、
血糖コントロースが不良の糖尿病患者や、
心血管疾患が併存したりする患者では、
もともと感染や潰瘍のリスクが高い
としながらも、
カナグリフロジンによる切断リスク上昇のメカニズムは現時点では不明
と説明しています。
アメリカのFDAでも、
カナグリフロジンによる切断リスク上昇のメカニズムは不明
としながらも、
仮説として、
尿量増加に伴う体液量の減少が末梢の血流量減少につながる可能性があるのではないか
としています。
SGLT2阻害薬には、
- 脱水症状
- 血流量減少
のリスクがあることは発売当初から知られており、
1日に通常より1日500mlほどの多めに水分を摂取する
ように勧告されています。
下肢切断は糖尿病の合併症の1つ
下肢切断は糖尿病の合併症に1つです。
糖尿病が原因で、下肢切断に至っている人は国内で年間2万人以上とも言われています。
これは、
- 膝下切断
- 膝上切断
- 股関節から切断
の患者数であり、
- 足指の切断
などの小切断も含めれば数倍もの数になるはずです。
王将の歌で有名な村田英雄さんが糖尿病で両足切断に至ったのは有名な話です。
糖尿病の合併症の1つに、「糖尿病神経障害」があることはあなたもご存じだと思います。
これは、高血糖により足先などの毛細血管の血行が不良になり、神経細胞が傷害され、
- 痛みを感じない
- 痺れる
- ジンジンする
などの症状が起きるのですが、
同時に、糖尿病では免疫力の低下も起きるので、
- 足先に小さな傷ができたりしても気づかない
- 足の傷が治りにくい
などにより、足先の傷が、
小さな傷 → 潰瘍 → 壊疽(細胞の死)
と進行し、敗血症の危険などから下肢の切断に至ってしまうのです。
先日、2月10日は「糖尿病のフットケアの日」でしたが、
足先に小さな傷などができたら、放置せずに、必ず医療機関を受診するように心掛けてください。
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SGLT2阻害薬とは?
SGLT阻害薬とはどんな薬なのでしょうか?
SGLTとは、
Sodium Glucose Cotransporter(Sodium GLucose Transporter)の略で、
日本語では、
「ナトリウム・グルコース共役輸送体」と呼ばれるタンパク質のことです。
SGLTは、ブドウ糖やナトリウムなどを細胞内に取り込む役割を担っているタンパク質です。
SGLTには、多くの種類があり体内のさまざまな部位に存在していますが、
SGLT2は腎臓の近位尿細管という場所に限定的に存在しており、
尿に排泄されたグルコースを再び体内に取り込む
働きをしているのです。
したがって、
SGLT2阻害薬は血糖低下薬として糖尿病患者に処方されているのです。
国内のSGLT2阻害薬
国内においても2014年頃から多くのSGLT2阻害薬が発売されています。
商品名と発売元は、
- スーグラ : アステラス、MSD
- フォシーガ : ブリストル・マイヤーズ、アストラゼネカ、小野薬品
- ルセフィ : 大正富山医薬品、大正製薬、ノバルティス
- デベルザ、アプルウェイ : サノフィ、興和
- カナグル : 田辺三菱製薬、第一三共
- ジャディアンス : イーライリリー、ベーリンガーインゲルハイム
今回、欧米で下肢切断のリスクが高まるとされたSGLT2阻害薬のカナグリフロジンです。
カナグリフロジンとは薬の有効成分の一般名(化学品名)のことで、
上に挙げた商品名の中で、カナグリフロジンを有効成分としている薬品名(商品名)が、ガナグルです。
他のSGLT2阻害薬の化学品名は、ダパグリフロジン、ルセオグリフロジン、トホグリフロジンなどですが、化学構造としてはカナグリフロジンと似た化学構造式のようです。
国内では現時点では、カナグリフロジンを初めSGLT2阻害薬について下肢切断にリスクに関する警告などは出ておりません。
アメリカ、ヨーロッパで下肢切断リクスに関する警告がだされたことから、何らかの対応がなされるものと思います。
しかし、アメリアのFDAは、
- 医療関係者には添付文書に従った処方を行うこと
- 患者は自己判断でカナグリフロジンの服用を中止しないこと
を求めていますから、自己判断で服薬を中止することは止めるべきです。
自己判断による服薬中止は血糖コントロールを悪化させ、むしろ下肢切断の危険を高める結果にもなるのです。
足先に異変を感じたら医療機関を受診する
足先に傷ができたら放置せず診療を受ける
これを心掛けてください。
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