糖尿病の治療の基本は、「食事療法」と「運動療法」です。
食事療法では炭水化物の摂取を控え、運動療法では有酸素運動を行って糖処理能力を上げるのです。
運動療法と行っても、軽い散歩などで充分です。
糖尿病の運動療法はジョギングよりも早歩きが良いのです。
糖尿病の運動療法には早歩きが良い
糖尿病の治療の基本は、「食事療法」と「運動療法」です。
食事療法では、このサイトで何回もお伝えしているように、血糖値を上げる食物である炭水化物の摂取を少しだけ控え、蛋白質や脂質を充分摂る、スタンダードな糖質制限が有効です。
糖尿病における運動療法は、体を動かすことで筋肉がエネルギーを消費し、特に食後に行う運動は、食後血糖の過度な上昇を抑え、血糖コントロールの改善が期待できるだけでなく、糖尿病の原因となる肥満をも改善することができます。
さらに、糖尿病の運動療法を継続することによってインスリン抵抗性が改善されし、細胞へのブドウ糖の取り込みが促進されることで高血糖を改善する効果があることも分かっています。
糖尿病ではジョギングより「早歩き」が良い
では、糖尿病ではどのような運動をすれば効果的なのでしょう。
最近の研究では、
糖尿病予備軍の血糖コントロールにはジョギングよりも早歩きが効果的
だとの報告があります。
Effects of exercise training alone vs a combined exercise and nutritional lifestyle intervention on glucose homeostasis in prediabetic individuals: a randomised controlled trial.
Diabetologia. 2016 Jul 15
詳しくはコチラ ⇒ 原著論文(英文)
この研究を行ったのは、アメリカ、デューク大学のWilliam Kraus教授らのグループです。
研究グループは、
糖尿病の発症を抑えるには、
- 減量
- 食生活の改善
- 運動
の3つが必要だとされるが、
運動を行うだけでも減量や食生活の改善を併用した場合と同様な効果が得られるか
を検証するためにこの研究を行ったと述べています。
今回の研究では、
糖尿病予備軍の150人を対象に、
- 食事療法(低脂肪・低カロリー食) + 中強度の運動(週18.5kmの早歩き)
- 中強度の運動(週12kmの早歩き)
- 中強度の運動(週18.5kmの早歩き)
- 高強度の運動(週18.5kmのジョギング)
の3群に分け、
6ヵ月間このプログトラムを実施させたのです。
その結果、各群の耐糖能試験の改善は、
- 食事療法+ 中強度の運動 : 9%改善
- 中強度の運動(週12kmの早歩き) : 5%改善
- 中強度の運動(週18.5kmの早歩き) : 7%改善
- 高強度の運動(週18.5kmのジョギング) : 2%改善
という結果だったのです。
すなわち、
中強度の運動を行うだけで、減量、食生活改善、運動の3つを行った時の効果の80%を達成できたのです。
この結果について、研究グループの代表であるWilliam Kraus教授は、
ジョギングのような高強度の運動では脂肪よりもブドウ糖を消費するが、早歩きのような中強度の運動ではブドウ糖よりも脂肪が消費される傾向があり、
中強度の運動では、筋肉中の脂肪を消費できる。余分な血糖は肝臓や筋肉に貯蔵されるため、筋肉中の脂肪を消費することは糖尿病の改善に非常に重要だ
と述べています。
Sponsored Link
糖尿病の運動療法は早歩き
運動療法というと、ジムに通ったり、プールに行ったり、自転車で走ったり、、、を思い浮かべてしまうことでしょう。
糖尿病や糖尿病予備軍のヒトにはあなたのようにやや太り気味のヒトが多く、運動療法というと苦行のように思ってしまいがちです。
しかし、今回ご紹介した論文のように、運動療法と行っても「早歩き」でも充分に効果があるのです。
早歩きとは
では、早歩きとはどれくらいのスピードなのでしょうか?
一般的に、
- 老人、子供 : 4km/hr
- 一般成人 : 5km/hr
- 元気な人 : 6km/hr
- とても元気な人 : 7km/hr
といわれますから、
早歩き は 6km/hr程度
のスピードになります。
距離にすると、
5kmを50分で歩くことになりますが、7km/hrのスピードだと歩くよりはジョギングに近くなります。
ちなみに、東京人の平均歩行速度は5.6km/hrですが、大阪人は5.7km/hrとやや早歩くらしいですね。
不動産屋さんの看板で、「駅より〇〇分」との表示を見かけますが、これは4.8km/hrのスピードで計算しているそうです。
間もなくオリンピックが始まりますが、3,000m競歩の世界記録のスピードは約16.7km/hr、50km競歩では約13.8km/hrです。
糖尿病の運動は有酸素運動
早歩きというのは、10~20分歩くとやや呼吸が早くなるような歩行です。
糖尿病の運動療法ではジョギングよりも早歩きが良いとはいっても、景色を見ながらのんびり歩く散歩では効果がありません。
糖尿病の運動療法では、酸素を使う有酸素運動でなければなりません。
東京ガスが定期健診受診者の有酸素運動能力の変化と糖尿病発症率の関係を7年間にわたって調べた研究がありますが、有酸素運動能力の低下が大きいほど糖尿病の発症率が高く、運動不足と糖尿病発症には高い相関があるのです。
今回紹介した論文の中で、William Kraus教授も述べているように、
非運動時(安静時)には、筋肉では、脂肪が分解された遊離脂肪酸を主なエネルギー源として使っていますが、
運動を始めると、筋肉中のグリコーゲンが分解され、つぎに血中のブドウ糖と遊離脂肪酸が主なエネルギー源となるのです。
運動が持続し、血中のブドウ糖を使ってしまうと肝臓のグリコーゲンが分解されてうみだされるブドウ糖を利用し、さらには、脂肪が分解されて遊離脂肪酸も使われるのです。
このように、筋肉が脂肪を燃焼させてエネルギー源として使うには酸素が必要で、脂肪を燃焼させる運動が有酸素運動なのです。
この有酸素運動を20分以上続けることで脂肪燃焼がより効果的に起こるといわれています。
有酸素運動には、早歩きの他にも、エアロビクス、エアロバイク、ウォーキング、ゆっくりしたスイミングなどがあります。
ちなみに、筋力トレーニング、ランニングなどの無酸素運動では脂肪を燃焼させずに、肝臓のグリコーゲンをエネルギー源として使います。
糖尿病には運動療法が効果的ですが、
糖尿病にはジョギングよりも早歩きが良いのです。
自宅から駅まで、駅から会社まで、やや早歩きで糖尿病を解消しましょう。
Sponsored Link