今日もご覧になっていただきありがとうございます。
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた けんぞう です。
糖尿病治療薬の開発を行っていた私が言うのも何ですが、
糖尿病の治療では食事療法と運動療法が基本なのです。
今日も科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝えいたします。
はじめに
元横綱千代の富士の九重親方が膵臓がんで亡くなりました。
膵臓がんはがんの中でも最悪のがんと言われていますが、、、
膵臓がんは糖尿病と密接な関係にあります。
糖尿病のヒトは膵臓がんのリスクが約2倍も高いことをご存じですか?
膵臓がんは糖尿病の合併症かも知れません。
九重親方の膵臓がんは最悪ながん
2016年7月31日に、元横綱千代の富士の九重親方が膵臓がんで亡くなりました。
九重親方の本名は秋元貢(あきもとみつぐ)、61歳でした。
2015年9月に、膵臓がんの手術を受けたことを明らかにしていましたが、1ヵ月前の名古屋場所には部屋の稽古に姿をみせ弟子に声をかけていたそうですが、周囲は急激に痩せた九重親方の姿に驚いたそうです。
横綱時代の身長は183cm、体重は125kgと小兵でしたが、鍛え上げた筋肉質の体で大型力士を豪快に投げ飛ばした九重親方でしたが、膵臓がんには勝てなかったのです。
膵臓がんは最悪のがん
膵臓がんは死亡率が非常に高いがんで、予後(治療後や手術後)が非常に悪いがんです。
手術で膵臓のがんを全て除去したとしても、約90%の患者で再発が見られると言われています。
膵臓がんは、他のがんに比べて早い段階で周囲のリンパ節や離れた臓器に転移するためです
膵臓がんは、
- 発見しにくい
- 転移しやすい
- 治療が難しい
と最悪で、
膵臓がんの5年生存率は7.7%と全てのがんの中で最低なのです。
国立がん研究センターの最新の統計では、全てのがんの5年生存率」の平均は62.1%ですが、膵臓がんでは7.7%で、全てのがんの中で最も低いのです。
ちなみに、2番目に5年生存率が低いのは胆のう・胆管がんですが22.5%と、膵臓がんの予後は最悪なのです。
そして、10年生存率では4.9%です、、、、
膵臓がんで亡くなった有名人
多くの有名人が比較的若い年齢で膵臓がんにより亡くなっています。
今年1月に亡くなったジャーナリストの竹田圭吾さん(享年51歳)は、死の直前までTVに出演したり本などでもすい臓がんの闘病生活を公開していましたね。
その他にも、
- 歌手の青江三奈さん(54歳)
- 歌舞伎俳優の坂東三津五郎さん(60歳)
- 元巨人軍の野球選手・土井正三さん(67歳)
- 元大関大の麒麟将能さん(69歳)
- ジャーナリストの黒田清さん(70歳)
- 俳優の夏八木勲さん(74歳)
海外でも、
- アップルの実業家スティーブ・ジョブズさん(56歳)
- 俳優のパトリック・スウェイさんジ(57歳)
と、いずれも非常に若い年齢で亡くなっています。
Sponsored Link
膵臓がんとはどんながんなのか?
血糖値が高く、糖尿病の恐れがあるあなたなら膵臓という臓器についてはかなりの知識を持っていることでしょう。
膵臓は大きさが20セントほどの小さな臓器で、
- 外分泌の働き
- 内分泌の働き
の2つの働きをしている重要な臓器です。
外分泌の働きでは、膵液を分泌しますが、膵液にはトリプシン、キモトリプシン、アミラーゼ、リパーゼなどの消化酵素が含まれ、トリプシンとキモトリプシンは蛋白質を、アミラーゼは炭水化物を、リパーゼは脂肪を分解し小腸で吸収しやすい形に変えるのです。
内分泌の働きでは、インスリンやグルカコンなど血糖を調節するホルモンを分泌しています。
膵臓がんは見つけにくい
51歳で膵臓がんで亡くなったジャーナリストの竹田圭吾さんは著書で、健康には気を使い、定期的に受けていた人間ドックでも発見されず、その直後に膵臓がんと診断された時は、かなり進行した状態だったと書いています。
私の友人は、人間ドッグの検査で膵臓がんのマーカーが高く、医者に膵臓がんの疑いと言われたのですが、その時に医者には、
膵臓がんは交通事故のようなものだ
と言われたと言います。
すなわち、医者にとっても「いつ起こるか予測できず、起こったら死亡率が高い」、ということなのです(幸いにも友人は膵臓がんでは有りませんでした)。
膵臓の位置は、胃の裏側で体の深部にあり、他の臓器に囲まれているため、レントゲンやエコーでは見つけにくく、膵臓がんは膵臓の中の膵管という部分にできやすく、膵管は血管やリンパ管と繋がっているため、がん細胞は血液やリンパ液で体の遠い部位まで運ばれてしまうのです。
膵臓がんの自覚症状
膵臓がんでは自覚症状が乏しく、見つかった時は手遅れというような状況も多いのです。
膵臓がんには特徴的な自覚症状があまりなく、
- 腹痛
- 黄疸
- 腰や背中の痛み
- 食欲不振
- 体重減少
などで、ちょっと調子が悪い、、、とそのままにしてしまうような症状で、膵臓も肝臓と同様に「沈黙の臓器」と呼ばれ、がんが予ほど進行しないと症状がでにくいがんなのです。
膵臓がんをを早期発見するには、他のがんと同様に腹部超音波(エコー)検査と血液検査ですが早期発見率が低いのが現状です。
CTといわれるコンピューター断層撮影法は比較的有効ですが、造影剤の副作用リスクや費用などから何度も受けられる検査ではありません。
最近は、MRI(核磁気共鳴画像法)を利用したMRCP、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)、超音波内視鏡(EUS)などの検査方法もあるのですがが実施している医療機関は未だ少なく検査費用も高額で気軽に受けられる検査ではありません。
CA19-9といわれる腫瘍マーカーは、消化器がんの中でも、膵臓がんに特異性の高いマーカーではあるものの、残念ながら早期発見に有用性が低いのですが、定期的にドッグ検診を受けている人はせめてもオプションでCA19-9を入れられたいかがでしょうか。
Sponsored Link
糖尿病と膵臓がんには密接な関係がある
膵臓がんと糖尿病には深い関係があることが分かっています。
糖尿病に罹患しているヒトは高確率で膵臓がん発症することが疫学調査で明らかになっています。
日本消化器病学会では、膵臓がん患者の20.7%に糖尿病の既往症があったとしています。
また、膵臓がん患者の25.9%に糖尿病の病歴があるとの報告もあり、糖尿病患者では膵臓がんを発症しやすいことが明らかになっています。
大規模な疫学調査においても、糖尿病のヒトが膵臓がんを発症する確率は、糖尿病でないヒトより1.8倍高いとされています。
糖尿病のヒトは、膵臓がんの危険性を常に意識する必要があるのです。
さらに、
- 膵臓がんに罹病した後に糖尿病を発症しやすい
- 膵臓がんにより糖尿病が悪化する
ことも分かっています。
膵臓がんを防ぐには糖尿病を治すこと
膵臓がん患者に糖尿病が多いのは間違いのないことなのですが、糖尿病が膵臓がんの原因なのか、膵臓がんによって糖尿病が引き起こされたのかは未だ不明です。
しかし、
- 糖尿病の罹病期間が長いほど膵臓がんリスクが高くなる
- 糖尿病歴が10年以上では膵臓がんのリスクが50%高くなる
との報告もあります。
一方、
糖尿病の治療薬が膵臓がんのリスクを上げるという科学的根拠はない
ことから、糖尿病のヒトが膵臓がんを防ぐには血糖値などのコントロールなど糖尿病治療をしっかり行い、膵臓がんの定期的検査をしっかり受ける必要があります。
糖尿病は膵がんの結果であって膵がんの危険因子ではないとの報告もあるものの、
糖尿病を発症した後1年以内に膵臓がんで死亡した患者を除いた解析でも糖尿病の男性では膵臓がんのリスクが2.1倍と有意に高く、糖尿病の女性でも膵臓がんのリスクが50%高いとの疫学調査は間違いないと判断されます。
米国がん学会では、
糖尿病患者では膵臓がんによる死亡者が増加していることを明らかにし、糖尿病は膵がんの危険因子であると結論しています。
まとめ
自分が糖尿病であることを知っているのは糖尿病患者の50%程度だといわれています。
このまま、高血糖を放置しておくと膵臓がんの危険が年々高まっているのです。
膵臓がんは糖尿病の合併症なのかも知れません。
関連記事(一部広告を含む)