今日もご覧になっていただきありがとうございます。
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた けんぞう です。
糖尿病治療薬の開発を行っていた私が言うのも何ですが、
糖尿病の治療では食事療法と運動療法が基本なのです。
今日も科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝えいたします。
はじめに
糖尿病に良い食べ物はいろいろありますが、クルミもその一つです。
クルミは糖尿病に良い食べ物です。
クルミが糖尿病に良いという科学的根拠をご存じですか?
クルミを食べると糖尿病のリスクが下がる
クルミはが糖尿病に良いといわれますが、それには科学的根拠があります。
少し前になるのですが、ハーバード大学の研究グループは2013年に、「クルミ食べることで糖尿病の発生リスクを下げることができた」という論文を発表しています。
Walnut Consumption Is Associated with Lower Risk of Type 2 Diabetes in Women
Walnuts(ウォールナット)とはクルミのことです。床板や家具でウォールナットという言葉を聞いた方もおられるでしょうが、クルミの木は非常に堅いので床板や家具に使われるのです。
研究グループは、
心血管系疾患、がんのいずれにもかかっていない、
52~77歳の女性58,063人、および、35~52歳の女性79,893人を、
それぞれ約10年間、糖尿病の発症とクルミの摂取について追跡調査したのです。
その結果、
週2回異常以上、クルミ(1回に28g)を食べていた女性は糖尿病の発症が15%~21%抑制された
というのです。
くわしく見る ⇒ 原著論文
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どうしてクルミが糖尿病に良いのか
それでは、どうしてクルミを食べると糖尿病の発症が抑えられたのでしょうか?
これについては、オーストラリアの研究グループの報告があります。
Structured dietary advice incorporating walnuts achieves optimal fat and energy balance in patients with type 2 diabetes mellitus.
くわしく見る ⇒ J Am Diet Assoc. 2005 Jul;105(7):1087-96.
これも英文論文なので、簡単に内容をお伝えしますが、
この研究では、
- クルミの摂取によって多価不飽和脂肪酸(オメガ3など)の推奨摂取量が達成できた
- クルミの摂取によってLDL(悪玉)コレステロールを10%低減できた
ということを示しています。
多価不飽和脂肪酸というのは、私達の体内では作ることが出来ない脂肪酸で、植物油や青魚の脂に多く含まれる不飽和脂肪酸の1つで、肥満や生活習慣病などのリスクを上げる中性脂肪や悪玉コレステロールを減らす作用があるのです。
不飽和脂肪酸やオメガ3については以前に書きましたので読んでくださった方も多いかと思います。
くわしく見る ⇒ 糖尿病の食事療法で脂肪は?
論文の著者であるのオーストラリアのウーロンゴン大学のリンダ・タプセル氏は、「クルミによりオメガ3多価不飽和脂肪酸を簡単かつ手軽に摂ることができるので、クルミは特に糖尿病患者にとって重要な食品で、間食に利用できる手軽な食品だ」とコメントしています。
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クルミの糖尿病に良い成分
クルミの栄養成分の大部分は脂質です。
クルミ100g当たりの成分は、
- 蛋白質 17.2g
- 糖質 14.3g
- 脂質 57.0g
- 食物繊維 6.2g
ですが、クルミが糖尿病に良い理由は、
- 不飽和脂肪酸
- 抗酸化物質
なのです。
クルミの不飽和脂肪酸
クルミには脂肪酸が多く含まれますが、カリフォルニアくるみ協会によれば、28gのクルミには18gの脂肪酸が含まれ、その内の13gは不飽和脂肪酸なのです。
特に注目されるのは、オメガ3脂肪酸といわれる脂肪酸で、クルミにはオメガ3脂肪酸であるアルファリノレン酸(ALA)が28g中に2.5gも含まれ、ナッツ類では群を抜いて多く含まれています。
身体の中に含まれる脂肪(脂質)には、
- 中性脂肪
- コレステロール
- 脂肪酸
- リン脂質
の4種類があるのですが、
脂肪酸は、中性脂肪を構成する原料となる成分で、
- 飽和脂肪酸
- 不飽和脂肪酸
に分類されるのです。
不飽和脂肪酸は、体内では作ることが出来ないので食事から摂る必要があり、植物油や青魚に多く含まれます。
不飽和脂肪酸には、
- n-3系
- n-6系
とがあり、n-3系にはα-リノレン酸で体内でIPA、DHA、EPAに変わります。6-6系はリノール酸で体内でアラキドン酸やエイコサノイドに変わるのです。
これらの不飽和脂肪酸は、肥満や生活習慣病のリスクを高める中性脂肪や悪玉コレステロールを減らす作用があるのですが、特に、オメガ3といわれるn-3系の不飽和脂肪酸は、動脈硬化を防ぎ、心臓病、脳卒中、糖尿病、肥満、高血圧、がんなどの生活習慣病の予防効果が高いことが多くの科学的論文で報告されているのです。
クルミの抗酸化作用
意外なことなのですが、クルミは抗酸化作用が強いのです。
抗酸化作用というと、ポリフェノールの赤ワインですが、
カリフォルニアくるみ協会によれば、アメリカのスクラントン大学のジョー・ヴィンソン教授らの研究によれば、ひと掴み(約28g)のクルミに含まれるポリフェノールの量は驚くことに、赤ワイン1杯に含まれるポリフェノールの量を上回るのです。
抗酸化作用とは、体内の活性酸素を除去する作用ですが、
活性酸素は老化やがんの原因になるとともに、様々な疾患の原因になるのですが、活性酸素は糖尿病の原因でもあるのです。
まとめ
クルミには不飽和脂肪酸や抗酸化物質が多く含まれます。
不飽和脂肪酸が糖尿病に良いことは、アメリカ糖尿病学会が地中海料理が糖尿病の食事療法に適していると推奨していることなででも有効ですし、
ナッツ類ではアーモンドが糖尿病に良いことを既に紹介していますが、クルミは糖尿病の予防や糖尿病の食事療法に最適なのです。
クルミはカロリーが高いので、食べ過ぎには要注意ですが、
クルミは少量で糖尿病の予防に効果があるので、3時のお茶やちょっとお腹が空いたときの間食に適しています。
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