臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた けんぞう です。
糖尿病治療薬の開発を行っていた私が言うのも何ですが、
糖尿病の治療では食事療法と運動療法が基本なのです。
今日も科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝えいたします。
はじめに
糖尿病の人は骨折しやすく、その頻度は糖尿病でない人の2~4倍といわれています。
糖尿病の骨折の原因はインスリン不足も含め、いろいろな原因が関係していますが、
糖尿病の罹病期間が長いほど骨折の危険が高まるのです。
糖尿病の骨折を防ぐ唯一の方法は高血糖を改善することです。
糖尿病で骨折しやすい理由
糖尿病患者で骨折が多いことは良く知られていることです。
インスリンは血糖を下げる作用のあるホルモンですが、成長促進作用もあるのです。
糖尿病では、
- インスリンの効果が悪くなる
- インスリンの分泌が少なくなる
のですから、当然、骨の成長も悪くなるからです。
インスリン作用不足の骨代謝への影響
成長ホルモンの作用もあるインスリンは骨に対してどのような作用があるのでしょうか
- 骨芽細胞の減少
骨芽細胞は骨を作る細胞ですが、骨芽細胞が糖が摂りこめず細胞機能が低下し骨の量が減少してしまいます。 - 尿中カルシウムやマグネシウムが増加
血中糖が上昇すると腎臓では血中の糖分を尿として排泄が促進し、同時にカルシウムやマグネシウムまで排泄され、骨が弱くなってしまいます。 - 活性型ビタミンDの不足
インスリンにはビタミンDを活性化させ働きもあることから、
ビタミンDの活性化がおこなわれなくなり、小腸におけるカルシウム吸収量が低下してしまいます。
インスリン不足やインスリンの効果が低下することによって骨に対してこのような悪影響が出てしまうのです。
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糖尿病の罹病期間が長いと骨折しやすい理由
糖尿病で骨折が増える理由についてはまだ充分に分かっていないのですが、糖尿病の罹病期間が長いほど骨折が増えるという研究結果があります。
Incidence of Fractures in Patients With Type 2 Diabetes in the SAVOR-TIMI 53 Trial.
詳しく見る ⇒ Diabetes Care. 2015 Sep 10
この研究では、糖尿病患者を対象に、
- 血糖低下薬服用者 : 8,280人
- 血糖低下薬非服用者 : 8,212人
の2群について骨折の発生率を比較したのです。
血糖低下薬は、ブリストルマイヤーズのサキサグリプチン・DPP-4阻害剤ですが、国内ではオングリザで商品名で協和発酵キリンが販売していますから服用されている方も多いと思います。
さて、
この16,492人を対象に骨折に関連する因子を調査したのですが、研究者は、
以前から知られていた5要因に加え、糖尿病発症期間の長さにも、骨折リスクとの相関関係が見られた
と述べています。
すなわち、研究者は、「高齢の2型糖尿病患者の大規模集団で、サキサグリプチン処置は骨折上昇と相関関係に無かった。長い発症期間と骨折リスク上昇の相関関係は、興味深い発見である」と述べています。
この試験で、骨折の発生と相関が見られた要因とは、
- 女性であること
- 糖尿病罹病期間が長いこと
- 高齢であること
- 主要な低血糖イベントがあること
- 治療薬の服用を遵守しないこと
- チアゾリジン誘導体を服用している
相関関係があったとしています。
2番目の「糖尿病罹病期間が長いこと」が新たに分かったというのです。
女性である、高齢である、低血糖イベントがある、治療薬を服用しない、、ということは今までも分かっていることです。
6番目の、「チアゾリン誘導体を服用している」という点については余りご存じでないかも知れませんね、、、
チアゾリン誘導体とは、アクトスなどに代表されるインスリン抵抗性改善作用をもつ糖尿病治療薬で2型糖尿病治療薬として広く用いられているのですが、骨髄間質細胞の骨芽細胞への分化を抑制して脂肪細胞への分化を促進することから骨が弱くなるといわれているのです。
糖尿病患者の骨折リスクの上昇は、血中ホルモン濃度や骨と脂肪のバランス等、複雑な関係があるのですが、
糖尿病発症期間と骨折リスクの相関関係は新しい発見であり、今後の糖尿病患者における骨折リスク評価に大きな影響を与える可能性があります。
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糖尿病の高血糖は骨折をおこす原因
先日、AGEについてお話ししましたがお読みいただけましたでしょうか。
詳しく見る ⇒ 糖尿病ならAGEが多い食品を避けてください
詳しく見る ⇒ AGEは糖尿病の高血糖が原因です
AGEは、英語のAdvanced Glycation End Products の略で、日本語では「糖化最終産物」 といわれます。
AGEは蛋白質と糖が結合し、熱によって変化した、体にとっては有害物質で老化の原因なのです。
皮膚の蛋白質に付着してハリや弾力を失わせてシワやタルミの原因になったり、血管壁に付着して弾性を失わせ高血圧や脳梗塞、心筋梗塞の原因に、そして脳細胞に付着してアルツハイマーの原因にもなるのです。
島根大学の杉本利嗣教授は、
2型糖尿病における骨折多発の主な要因は骨質の劣化で、中でも注目すべきはコラーゲンの劣化だ
と報告しています。
骨はコラーゲンが複雑に結合て骨基質を作りそれにカルシウムが沈着して作られているのですが、
骨の基質になるコラーゲンにAGEが付着して骨の強度を低下させる
というのです。
杉本利嗣教授その他にも、
- 高血糖はAGEの産生を亢進しAGE受容体であるRAGEの発現も促進する
- AGEはAGE受容体受容体を介して骨芽細胞の分化を抑制する
ということも述べていますが、やや専門的になるので省略しますが、
高血糖はAGEをたくさん作って骨を弱くするということです。
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糖尿病の骨折を防ぐには
糖尿病での骨折を防ぐのは簡単です!
- 高血糖を下げる
これだけです。
でも、あなたは「高血糖を下げるのは難しい」と思っていらっしゃるのでしょうね、、、、
血糖値を下げるのは簡単
血糖値を下げるのは簡単です。
血糖を上げる食べ物の量を減らせば良いのです
血糖値を上げるのは炭水化物だけなのです。
- 蛋白質は血糖値を上げない
- 脂肪は血糖値を上げない
- 血糖値を上げるのは炭水化物の糖質だけ
このことを分かっていない人が多すぎるのです。
炭水化物を減らすというと、「糖質ゼロ」、「主食を獲らない」などのキャッチコピーを思い浮かべますが、そこまでやる必要は全くないのです。
詳しく見る ⇒ 糖尿病の食事療法は糖質制限がベスト
血糖値を下げるには、
- 朝食のパンを半分にする
- 夕食のご飯を半分にする
これだけで充分なのです。
そして、肉や魚は満腹するまで食べても良いのです。
糖尿病を治せるのはあなたの食事療法だけです
糖尿病の食事療法は健康食、長寿食です
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