今日もご覧になっていただきありがとうございます。
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた けんぞう です。
糖尿病治療薬の開発を行っていた私が言うのも何ですが、
糖尿病の治療では食事療法と運動療法が基本なのです。
今日も科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝えいたします。
はじめに
糖質制限食という言葉を良く聞きますが、糖尿病の血糖値が下がるのでしょうか?
糖質制限で糖尿病の血糖値は確実に下がります。
糖尿病の血糖値を上げているのは糖質だからです。
糖質を取り過ぎている間は血糖値は下がりません。
糖質制限食とは
糖質制限という言葉を良く耳にしますが、糖質とはなんでしょう?
糖質とは
炭水化物 = 糖質 + 食物繊維
|
|・ 単糖(単糖が1個) ブドウ糖(グルコース)、ガラクトース
|・ 小糖(単糖が2~20個) 麦芽糖(マルトース)、ショ糖(砂糖)
|・ 多糖(単糖が21個以上) デンプン、グリコーゲン、セルロース(イヌリン)
糖質とは炭水化物から食物繊維を除いたもので、ブドウ糖や果糖が結合したものです。
糖質制限食とは具体的に
糖質制限食とは、三大栄養素の内、
- 炭水化物 : 食べない
- 蛋白質 : 自由に食べる
- 脂質 : 自由に食べる
蛋白質と脂質には全く制限を加えない代わりに、
炭水化物の糖質をできるだけ摂らないのが糖質制限食です。
上に書きましたように、糖質とは炭水化物から食物繊維を引いた残りの栄養素で、糖質と聞くと砂糖やお菓子を思いうかべるでしょうが、糖質はご飯やパン、麺、じゃがいも、かぼちゃ などにも多く含まれています。
具体的には、主食であるご飯やパンは食べないでおかずだけを食べる食事だと思ってください。
糖質制限食ではカロリー制限は全くありませんので、肉、魚、脂質は自由に食べてもかまわず、お酒も糖質を含まないウイスキーや焼酎、糖質フリーのビールなどを自由に飲むこともOKなのです。
糖質制限食の提案者は江部医師
書店に行くと糖質制限食の本がたくさん並んでおり、健康関係の雑誌でもしばしば糖質制限食の特集が組まれます。
糖質制限食は、1990年代にアメリカのロバート・アトキンスが提唱した低炭水化物ダイエット(ローカーボダイエット、low-carbohydrate diets)が始まりと言われています。
国内では、高雄病院(京都市右京区)の江部康二理事長が自らの病院で糖尿病患者への治療法の一環として実施し、糖質制限食の著書も多いのです。
江部氏は、「炭水化物を減らした食事を開始すると糖尿病患者の血糖値は数ヶ月で、コレステロール値や尿酸値、体重などの指標も多かれ少なかれ改善する」として、多くの実績があると述べています。
高雄病院における糖質制限食プログラム
種類 | 内容 |
スーパー糖質制限食 | 朝食、昼食、夕食の三食とも主食を抜く。効果は抜群で早く、糖尿病や肥満、メタボリック症候群を速やかに解消したい方にオススメします。 |
スタンダード糖質制限食 | 朝食と夕食は主食を抜き、昼食のみ主食をとるパターン。糖尿病や肥満の解消を目指したいが、どうしても昼食に糖質制限食を行うのが難しい方へ |
プチ糖質制限食 | 夕食だけ主食を抜く、ダイエット目的として行う場合や、嗜好的にどうしても炭水化物が大好きでやめられない方に。糖尿病患者様にはスーパー糖質制限食もしくはスタンダード糖質制限食をオススメします。 |
詳しく見る ⇒ 高推病院の糖質制限食
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血糖値を上げるのは糖質だけ
糖尿病で問題になるのは『高血糖』です。
高血糖は血液中のブドウ糖濃度が高くなることですが、高血糖状態が長く続くと血管系に様々な悪影響を及ぼすのです。
糖尿病の治療は血糖を下げること
したがって、糖尿病の治療では血糖値を下げることに終始します。
第一段階として、
- 食事療法で血糖を下げる
- 運動療法で血糖を下げる
しかし、それでも血糖値が下がらないときには、薬物療法になりますが、
糖尿病の治療薬の作用は、
- 糖の吸収を阻害する
- 組織の糖取込みを促進する
- 血糖の体外への排出を促進する
というものなのです。
血糖を上げるのは炭水化物(糖質)だけ
私達が摂取する食物の栄養素は3つです。
- 炭水化物
- 蛋白質
- 脂質
その他にも、ミネラル、ビタミンなどがありますが、それらは体の機能を整える成分です。
この3大榮要素の中で、血糖値を上げるのは、炭水化物だけなのです。
食品群 | 栄養素 | 血糖値 |
穀類 芋類 |
炭水化物(糖質) 蛋白質 |
上げる |
果物 | 炭水化物(糖質) 蛋白質 |
上げる |
牛乳 | 炭水化物(糖質) 蛋白質 脂質 |
あげる |
野菜 | 炭水化物(糖質) 蛋白質 |
上げる |
肉 | 蛋白質 脂質 |
無影響 |
魚 | 蛋白質 脂質 |
無影響 |
油脂 | 脂質 | 無影響 |
食べ物は消化吸収され、糖質は100%血糖に変わりますが、蛋白質や脂質は血糖には変わらないのです。
糖質は食後すぐに血糖値を上昇させ、2時間以内にほとんどすべての糖質が吸収され、食後の急激な血糖値の上昇はグルコーススパイク(食後高血糖)とよばれ、グルコーススパイクが大きいほど、リアルタイムに大血管の内皮が傷害されて動脈硬化になりやすいといわれています。
糖質を摂取しなければ血糖は上昇しない
糖質制限食は単純ですが非常に理にかなった糖尿病の食事法なのです。
詳しく見る ⇒ 糖尿病の食事療法は糖質制限がベスト
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アメリカでは糖質制限が主流
糖質制限食は単純ですが非常に理にかなった糖尿病の食事法なのですが、当初は受け入れられませんでした。
その理由としては、
- 脳のエネルギー源としてブドウ糖が重要
- 低炭水化物ではケトージスになる
などがその反対理由でした。
しかし、肝臓からの糖新生(アミノ酸からグルコースが作り出される)により、脳のエネルギーが確保されることや、脳はエネルギー源としてケトン体をも利用していることや、糖質制限食により血液中のケトン体が上昇しても健康には全く関係が無いことなどが次々に分かってきたのです。
米国糖尿病学会も糖質制限食を承認
米国糖尿病学会は2013年10月に、Diabetes Careオンライン版に成人糖尿病患者の食事療法に関する声明を発表ました。
2013年の声明では、『全ての糖尿病患者に適した「唯一無二の食事パターン」は存在しない』との見解を表明し、
患者ごとにさまざまな食事パターンがあり、
- 地中海食
- ベジタリアン食
- 糖質制限食
- 低脂質食
- DASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食
が受容可能であるとし、米国糖尿病学会は糖質制限食を公的に受容したのです。
日本では依然としてカロリー制限食
一方、日本糖尿病学会は、2013 年 3 月に「糖尿病における食事療法の現状と課題」を表明し、
体重の適正化を図るためには、運動療法とともに積極的な食事療法を指導すべきであり、総エネルギー摂取量の制限を最優先とする。総エネルギー摂取量を制限せずに、炭水化物のみを極端に制限して減量を図ることは、その本来の効果のみならず、長期的な食事療法としての遵守性や安全性など重要な点についてこれを担保するエビデンスが不足しており、現時点では薦められない
と糖質制限食を否定しているのです。
詳しく見る ⇒ 糖尿病における食事療法の現状と課題
日本糖尿病学会が推奨する糖尿病の食事療法とは、
- 腹八分目とする
- 食品の種類はできるだけ多くする
- 脂肪は控えめに
- 食物繊維を多く含む食品(野菜、海藻、きのこ など)をとる
- 朝食、昼食、夕食を規則正しく
- ゆっくりよくかんで食べる
として、
エネルギー摂取量の目安の計算法は、
エネルギー摂取量(kcal)=①標準体重 × ②身体活動量
①標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22
②身体活動量の目安
少ない(デスクワークが多い職業など) : 25~30kcal/kg標準体重
平均的(立ち仕事が多い職業など) ; 30~35kcal/kg標準体重
多い(力仕事が多い職業など) ; 35~ kcal/kg標準体重
さらに、栄養素摂取比率については
糖尿病における三大栄養素の推奨摂取比率を、
- 炭水化物 : 50~60%
- 蛋白質 : 20%
- 脂質 : 残り全て
として、総エネルギーの50~60%を炭水化物で摂取するように勧めているのです。
日本糖尿病学会の勧告の変更も間近い
総エネルギーの50~60%を炭水化物で摂取するように勧めている日本糖尿病学会の考え方は古いとの批判もたくさん有るのが現状です。
糖尿病患者では血糖値が高いことが問題であるにもかかわらず、
食事の50~60%を血糖値を上げる炭水化物に、、との指示が理にかなっていないことは医療関係者でなくても気付くことでしょう。
詳しく見る ⇒ 糖尿病でおすすめの食事法
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