アルカリ性食品の摂取が少ない男性は糖尿病になりやすい
ということを国立がん研究センターの研究グループが明らかにしました。
50歳未満の男性は食事のバランスに注意する必要があるそうです。
アルカリ性食品の摂取が少ない男性は糖尿病になりやすい
国立がん研究センターでは、生活習慣と、がん、脳卒中、糖尿病などの病気との関係を調査し、生活習慣病の予防や健康寿命の延伸に役立てるたる研究を行っているのですが、
酸性食品の摂取が多く、体をアルカリ性にする食品の摂取が少ない男性では糖尿病発症のリスクが高いことを明らかにしました。
High Dietary Acid Load Score Is Associated with Increased Risk of Type 2 Diabetes in Japanese Men: The Japan Public Health Center-based Prospective Study.
J Nutr. 2016 May;146(5):1076-83. doi: 10.3945/jn.115.225177. Epub 2016 Apr 6.
国立がん研究センターでは、がん、循環器疾患、糖尿病などの発症には、食習慣や運動量、喫煙や飲酒などが深く関わっており、生活習慣を改善すればこれらの発症を防げるとして、具体的にどのような生活改善を行えばそれらの疾患を防ぐことができるかの研究を行っています。
その一環として、JPHC Studyといわれる大規模な疫学調査を行っています。JPHC Studyには、国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、および全国11の保健所と大学や研究機関などが参加し、全国の約10万人を10年間にわたって追跡調査しているのです。
そしてこの度、その成果の一つとして、食事の酸塩基バランスと糖尿病発症の関係が明らかになったのです。
食事の酸性度が高い男性ほど糖尿病のリスクが高い
今回の研究の対象になったのは、
国内11カ所の保健所管内に住み、調査参加時とその5年後に、糖尿病、がん、循環器疾患がなかった45~75歳の64,660人(男性2万7809人、女性3万6851人)です。
調査参加5年後に、食事の内容に関する詳細な調査を行い、各栄養素やミネラルの摂取量、PRALスコア、NEAPスコアを測定しました。
さらに、その後5年間に亘り糖尿病発症の有無を調べるという非常に長期に亘る調査です。
その結果、5年間に男性692人と女性499人が糖尿病を発症しました。
そこで、PRALスコアとNEAPスコアに基づいて、対象者を4つのグループに分けて比較検討したのです。
PRALスコアは、体の酸塩基のバランスを表す数字でスコアが高いと体が酸性に傾いています。
NEAPスコアは、推定内因性酸産生量といい、体の酸性度を示す指標です。
その結果,
男性では、PRALスコアが高い、すなわち、体が酸性に大きく傾く食事を取っている人ほど、糖尿病になるリスクが高い
ことが明らかになったのです。
下図のように、PRALスコアが最も高い群は低い群に比べて糖尿病のリスクが約25%高いのです。
さらに、年齢、体格や運動量、喫煙習慣、飲酒習慣などに加えて、野菜、果物、肉、魚介類、米、コーヒー、ソフトドリンクの摂取量の違いも考慮して分析したところ、PRALスコアが最も高い群では低い群より糖尿病のリスクが61%高いと推定されたそうです。
男性群を50歳未満と50歳以上に分けて、PRALスコアと糖尿病の関係を調べたところ、
- 50歳未満でのみPRALスコアが高い群で糖尿病リスクの上昇が認められた
- 50歳未満でPRALスコアが高い群では糖尿病リスクが50%高い
と推定されました。
すこしややこしくなってきましたが、
50歳未満の男性でPRALスコアが高いと糖尿病のリスクが50%高い
というのが最終結論のようです。
なお、男性のNEAPスコア、女性のPRALスコア、女性のNEAPスコアと2型糖尿病の間には、関係を見いだすことはできなかったそうです。
国立がん研究センターの研究グループは、
50歳未満の男性は、肉や魚、チーズなどの摂取を減らし、野菜、果物、豆類といった食品を多く摂取すれば、糖尿病を予防できるかもしれない
と述べています。
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食事はアルカリ性と酸性のバランスが大事
1980年代の前半頃だったでしょうか、健康法ブームの1つに、「アルカリ性の食品を食べると健康になる」というものがありました。
梅干しは酸っぱいけどアルカリ性食品だから体に良いなどと、積極的にアルカリ性食品を摂ることが流行ったのです。
しかし、私達の体では食べた食品の酸性度、塩基性度(アルカリ性)に関わらず、常にほぼ一定(pH7.4±0.05)に保たれているという栄養学者らのコメントもあり、ブームは廃れたのです。
しかし、最近、再び、
摂取した食品の酸塩基バランスが偏ると病気になる可能性があるという新たな仮説が提示されたのです。
これらの仮説では、
食事のバランスが酸性に傾いた場合には、
腎臓などへの負荷が高まって血液のpHが7.35未満の代謝性アシドーシス(酸性血症)の状態になることがあり、これが慢性化すると、糖尿病などを発症する
という考え方で、この仮説を支持するいくつかの研究結果が報告されています。
アメリカにおいて行われた研究では、
食事の酸性度が高いほど糖尿病発症のリスクが上昇する
ことが報告されています。
しかし、
スウェーデンで高齢者(70~71歳)を対象にした研究では、
食事の酸塩基バランスと糖尿病発症との関連は認められない
という結果でした。
研究によって結果が異なる理由のひとつとして、対象とした年齢の違いが挙げられます。
上でご紹介した、国立がん研究センターの研究でも、
50歳以上と50歳以下に分けて分析したところ、
50歳以下でのみアルカリ性に傾くと糖尿病のリスクが上がる
ことが分かったのです。
50歳以下でも女性では糖尿病のリスクが上がらない理由として、研究グループは、女性は男性に比べて野菜や果物の摂取量が多いことから食事の酸性度が低いことによるのではないかとしています。
が考えられます
研究グループは、
疫学研究からのエビデンスなど科学的根拠はまだ十分とはいえないのでさらなる研究が必要だとしながらも、野菜、果物、豆類といった血液のアルカリ度を高める食品を多く摂取することは糖尿病予防に役立つのではないかとしています。
アルカリ性食品と酸性食品
食品の、酸性食品やアルカリ性食品とは、その食品が酸性かアルカリ性かで決まるものでは有りません。
梅干しは酸っぱいですがアルカリ性食品です。
アルカリ性食品、酸性食品とは、食べた後に生体内で燃焼した結果、アルカリ性になるか酸性になるかによって決めるのです。
実際には、その食品を焼し、残った灰分が酸性やアルカリ性の度合いを調べて決められまするのですが、灰分中にリン、硫黄、塩素などの陰性イオンのミネラルが多ければ、リン酸、硫酸、塩酸などとして酸性に傾き、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの陽イオンのミネラルが多ければアルカリ性に傾くのですが、私達の体内でも消化された後に残ったミネラルが同様の結果になると考え、アルカリ性食品、酸性食品としているのです。
具体的に、アルカリ性食品、酸性食品とは下記のような食品になります。
アルカリ性食品は、野菜類、海草類、きのこ類、豆類、いも類など、酸性食品に、肉類、魚介類、穀類、卵黄などがあります。
牛乳は中性に近いアルカリ性食品ですが、チーズにすると酸性食品になります。
豆類にはアルカリ性、酸性の両方があります。
酒類でも日本酒やビールは酸性食品ですが、ワインはアルカリ性食品です。
食品の酸やアルカリ性によって血液などの体液の酸アルカリ度が大きく変わることはありません。
血液については、pHを調節のための絶妙な生理機能が働いてお、pHは常に、pH7.35~7.45の範囲に保たれています。
しかし、最近の研究では、食事のバランスが酸性に傾いた場合には、腎臓などへの負荷が高まって血液のpHが7.35未満の代謝性アシドーシス(酸性血症)の状態になることが明らかになっており、アルカリ性食品だけが体に良いとは言えないものの、アルカリ性食品、酸性食品のバランスが重要だということは間違いありません。
食品は、アルカリ性食品も酸性食品もバランスよく取るのがベストです。
特に50歳未満の男性では酸性食品の摂取が多いので、糖尿病に気をつけてください。
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