糖尿病の食事療法はカロリー制限です。
毎日の摂取カロリーを決められた範囲に抑える必要があることから、毎食のカロリー計算が面倒です。
糖尿病の食事療法が長続きしないのはカロリー計算が面倒だからだともいわれています。
カロリー制限は日本糖尿病学会が提唱しているのですが、
イギリスでは、食品のカロリー計算は間違った指導をしてきたとの見解が出されています。
糖尿病のカロリー計算は面倒
日本糖尿病学会の「糖尿病治療ガイド2014-2015」における糖尿病の食事療法はカロリー制限です。
糖尿病のカロリー制限食
カロリー
男性1,400~2,000kcal
女性1,200~1,800kcal
栄養素の割合
炭水化物 60%
蛋白質 20%
脂質 20%
摂取カロリーを守り、なおかつ、栄養素の比率も守らなければならないのですが、これを毎日3食について実行するためには、細かいカロリー計算をしなければならず、非常に面倒です。
糖尿病学会では、食品交換表を出しており、これに基づいて計算すれば良いというのですが、基本的には1日3食を摂取し、何品もの種類の食品を食べるのですから、その都度、使用されている食材の重量と、カロリーを計算して、自分に決められた1日の摂取カロリー量を守ることは容易なことではありません。
1単位(80kcal)あたりの目安量
- 白飯 : 小さい茶碗に1/2程度(50g)
- 6枚切り食パン : 1/2枚(30g)
- 卵 : 小1個(50g)
- 魚(アジ) : 中1尾分(60g)
- 絹ごし豆腐 : 1/2丁(140g)
- 牛乳 : コップ1杯(120g)
- バター・マヨネーズ : 大さじ軽く1杯(10g)
ご飯やパン、麺類などの炭水化物の量を量るのであれば簡単にできますが、アジフライの魚の大きさ、油の量、タルタルソースのマヨネーズの量、、、など栄養士でカロリー測定が専門の方でも難しいと思います。
私は幸運にも糖尿病ではありませんが、糖尿病の義父に習ってカロリー計算をしてみましたが、2日で挫折しました、、、。
糖尿病のカロリー制限の計算は面倒で仕事を持ち外食も多い方ができるものでは有りません。
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面倒なカロリー計算は不要
カロリー計算はもう止めよう
医師はあまりにも長く間違った指導をしてきた
と、カロリー計算によるカロリー制限を止めようとの動きが有ります。
2015年8月27日に英国の有力な医学誌であるBMJ誌に、 「食品のカロリー計算を止めよ」との論文が3人の研究者によって掲載されました。
ただ止めれば良いというのではなく、カロリー計算に使う手間や注意を、食品の栄養価に向けるべきだと提唱しているのです。
そして、摂取カロリーに注意を払うよりは、摂取する栄養素に向ける方が、肥満を抑え、心臓や血管の病気による死亡を減らすことができる述べています。
詳しく見る ⇒ Shift focus from calorie counting to nutritional value of foods for heart health, say experts
英国においても、肥満などの生活習慣病による心血管系の疾患予防においては、摂取カロリーにばかり過剰な注意を払ってきたが、魚油に含まれているオメガ3多価不飽和脂肪酸、オリーブ油、ナッツなどの栄養素の摂取により心臓や血管の病気による死亡を数ヵ月で削減できることが判明しており、医者は余りにも長い間行動を誤ってしまったと、過激な指摘をしています。
摂取カロリーよりも摂取する栄養の質が重要
英国の研究グループは、栄養の質、つまりどのような栄養素を摂るかが重要だと主張しています。
すなわち、
- 砂糖入り飲料を毎日の飲むと2型糖尿病のリスクが高まる が、
- 手の平一杯のナッツや小さじ4杯のエキストラバージンオリーブオイルは心臓発作と脳卒中のリスクを下げられる
2回/週、ナッツを食べることにより9万人のアメリカ人の死亡を減らすことができる、として栄養素の大切さを挙げている。
イギリスにおける、
肥満に伴う医療費は年間9,000億円以上
糖尿病に伴う医療費は年間4兆円
に達し、今後20年ではその倍になると試算されているが、アメリカでは2012年には26兆円と、過去5年間で4割も増加したとして警鐘を鳴らしているのだ。
カロリー制限から摂取する栄養素の制限
肥満や糖尿病の予防では、
カロリーとダイエットではなく、食物の量から質に視点を移すべきだ、と、
食物の質を見直せば肥満のみならず糖尿病なども予防できる
としているのです。
さらにストレートに、
食事の質の低下は、運動をしないこと、喫煙、飲酒を合わせた影響よりも体に悪影響を与える
との見方をする研究者さえおり、
「カロリー計算を止め、栄養の質を見直すと食事療法に変更することが心臓・血管系に起因する死亡率を削減できる」と強調しています。
そして、 「食品は最も強力な薬だが、最も効果発現の遅い毒薬でもある」 との標語を発表し、
「砂糖入りの飲料に課税し、果物、野菜、ナッツの価格を下げる政府助成金と、ジャンクフードの販促を監視すべき」といった提案をしています。
なかなか過激は提案ですが、栄養疫学的にはこれが真実なのです。
糖尿病の食事療法はカロリー制限より糖質制限
日本糖尿病学会「糖尿病治療ガイド2014-2015」では、糖尿病の食事療法では、「カロリー制限」を基本としています。
1日の摂取カロリーの制限は、
- 男性1,400~2,000kcal
- 女性1,200~1,800kcal
とし、そのカロリーを得る食品の比率として、
- 炭水化物 : 60%
- 蛋白質 : 20%
- 脂質 : 20%
と指示しているのですが、「炭水化物:60%」が問題なのです。
血糖値を上げるのは炭水化物だけ
1日の摂取カロリーを1,200kcalよりも低く抑えれば高血糖は下がるのでしょうか?
このサイトでは何回も書いていますが、
血糖値を上げるのは三大栄養素のなかで炭水化物だけなのです
蛋白質、脂質をいくら多く摂っても食後血糖値が上がることはありません。
炭水化物だけが食後血糖を上げる
食後血糖値を上げるのは炭水化物だけです。
炭水化物 = 糖質 + 食物繊維
炭水化物の糖質が血糖値を上げます。
1gの糖質は血糖値を3mg上昇させます
茶碗1杯の白米(150g)は、
- エネルギー : 252kcal
- 糖質 : 55.3g
- 血糖値 : 食後血糖を166mg上昇
させます。
和牛サーロインステーキ(脂身つき)を200gは、
- エネルギー : 1,000kcal
- 糖質 : 1g以下
- 血糖値 : 食後血糖上昇は3mg以下
いかがでしょうか、、、。
血糖値を上昇させるのは炭水化物の糖質なのです。
アメリカもカロリー制限から糖質制限に
いかがでしょうか、、、
このような研究成果が明らかになるにつれて、糖尿病の食事療法はカロリー制限から糖質制限に変わりつつあるのです。
アメリカの糖尿病学会は、2013年10月に「栄養療法に関する声明」を発表し、それまでのカロリー制限の方針を大幅に変更したのです。糖尿病の食事療法は、
- 糖質制限食
- 地中海食
- ベジタリアン食
- DASH食
- 低脂質食
などと、唯一無二の食事療法はないとして「糖質制限食」も正式に受容したのです。
糖質制限は理にかなっている
糖質制限食の基本的な考え方は、食後血糖を上げる栄養素は糖質だけだとして、
できるだけ糖質の摂取を低く抑えて食後高血糖を防ぐ
という、栄養学的にも生理学的にも非常に理にかなっているものです。
「糖質制限」と聞くと、「糖質ゼロ」、「主食を食べてはいけない」ということをイメージしますが、それは極端な例です。
日本人がご飯を食べないで一生を過ごせるわけはありません
糖質制限は、「糖質の摂取を正常に戻す」というものです。
炭水化物の摂取量が多すぎたために血糖値が上がりすぎているので、
- 炭水化物の量を見直す
- 炭水化物の質を見直す
ということなのです。
具体的には、
- ご飯やパンの摂取量を減らす
- 白米を玄米に、全粒粉のパンにする
ということなのです。
無理な糖質制限は長続きしません
主食の量と質を見直すだけで良いのです
詳しく見る ⇒ 糖尿病の血糖値を下げるのは糖質制限がベスト
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