今日もご覧になっていただきありがとうございます。
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた けんぞう です。
糖尿病治療薬の開発を行っていた私が言うのも何ですが、
糖尿病の治療では食事療法と運動療法が基本なのです。
今日も科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝えいたします。
はじめに
女性には生理があるため、鉄分が不足しがちで貧血に原因になります。
鉄分は妊娠中にも欠かせないミネラルです。
妊婦は鉄不足になりがちで、サプリメントを服用している妊婦さんも多いようです。
しかし、
アメリカの国立小児保健発育研究所の研究グループは、
鉄分の過剰摂取で妊娠糖尿病リスクが増加する
との論文を発表しました。
鉄不足は妊娠に悪影響を与えるのですが、摂りすぎも問題のようです。
では、どうしたら良いのでしょうか?。
鉄分の摂りすぎは妊娠糖尿の原因になる
妊娠糖尿病は妊娠中に高血糖になる症状で、妊婦の10%程度が妊娠糖尿病になると言われています。
妊娠糖尿病の原因は、
- 妊娠に伴うホルモンの影響
- 炭水化物の摂り過ぎ
- 運動不足
などと考えられてますが、
アメリカの国立小児保健発育研究所(NICHD)の研究グループは、
鉄分の過剰摂取で妊娠糖尿病リスクが増加する
との論文を発表しました。
妊娠中には、鉄分不足により貧血になる妊婦が多く、アメリカにおいても鉄分サプリメントの摂取が推奨されているのですが、はたして、鉄分サプリの摂取は続けた方が良いのでしょうか?。
A longitudinal study of iron status during pregnancy and the risk of gestational diabetes: findings from a prospective, multiracial cohort.
Conclusions/interpretation
Our findings suggest that elevated iron stores may be involved in the development of GDM from as early as the first trimester. This raises potential concerns for the recommendation of routine iron supplementation among iron-replete pregnant women.
詳しく見る ⇒ Diabetologia 10 November 2016
研究グループは、
- 妊娠糖尿病の妊婦 : 107人
- 妊娠糖尿病でない妊婦 : 214人
について、
血中マーカーである、
- ヘプシジン
- フェリチン
- 可溶性トランスフェリン受容体
を測定し、
- 体内の鉄分量を計算
したのです。
その結果、
妊娠初期や中期に鉄分マーカーが高い妊婦は妊娠糖尿病リスクが高い
ことが判明したというのです。
具体的には、
- 妊娠初期に、体内の鉄分量を示すフェリチン値が高い妊婦は低い妊婦に比べて妊娠糖尿病リスクは2倍以上
- 妊娠中期にフェリチン値が高い妊婦は低い妊婦に比べて妊娠糖尿病のリスクは4倍
だったというのです。
研究グループは、
今回の成績から、鉄分が不足していない妊婦にも鉄分サプリメントの摂取が推奨されていることは妊娠糖尿病を引き起こす懸念がある
と述べています。
なお、今回の研究からでは、鉄分量と妊娠糖尿病の因果関係は明らかになっていませんが、
鉄分の増加と妊娠糖尿病については、
- 鉄分は酸化ストレスを上昇させる
- 酸化ストレスは膵β細胞にダメージを与える
- 膵臓が機能不全を起こす
- インスリン分泌が低下する
との可能性が考えられると述べています。
鉄分の不足は妊婦のみならず、胎児に対しても悪影響を及ぼすことが知られており、
妊婦は鉄のサプリメントを摂取した方が良いのでしょうか、、、。
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妊婦は鉄不足になりやすい
妊婦に限らず、女性は鉄分が不足しがちです。
鉄分が不足する原因は、
- ダイエットや偏った食事による摂取不足
- 月経による出血
- 激しいスポーツ
などが大きな原因で、
- 女子中学生 : 8~15%
- 女子高校生 : 15~17%
- 成人女性 : 約17%
で貧血の疑いがあるという調査報告もあります。
妊婦では胎児への鉄分の供給もあり、
- 妊婦の約30~40%が鉄欠乏性貧血
だとの報告もあります。
胎児は母体から鉄分を受け取って成長していきます。
妊娠初期には母胎の肝臓に蓄えられた鉄分が利用されるので鉄欠乏にはなりにくいのですが、胎児の成長に伴って鉄欠乏になる妊婦が増えていきます。
胎児が最も成長する妊娠8~9ヵ月頃に最も鉄分を必要とするので、妊娠8~9ヵ月頃に鉄欠乏症の貧血になる妊婦が多いのです。
女性の鉄分の必要量
厚生労働省による、日本人の食事摂取基準によれば、
1日の鉄の摂取量の推奨量は、
- 成人女性(18~29歳) : 10.5mg
- 成人女性(30歳以上) : 11.0mg
となっています。
妊娠中には、
- 妊娠初期 : + 2.5mg
- 妊娠中後期 : + 15.0mg
を増やす必要があるとしています。
しかし、
推奨量を摂れていない妊婦も多く、鉄欠乏性貧血が起こってしまい、
鉄欠乏では、
- 赤ちゃんの発育不足
- 分娩時の微弱陣痛
- 出産時の出血が止まらない
などの危険があるのです。
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鉄分が多く含まれる食品
チョット難しい話になるのですが、
鉄には、
- 二価のイオン
- 三価のイオン
があります。
そして、
鉄分には、
- 非ヘム鉄
- ヘム鉄
があるのです。
非ヘム鉄は、
- 三価イオンの鉄で、
- そのままでは吸収されず、
- ビタミンCや消化酵素で、
- 二価イオンの鉄になって吸収される
のです。
ヘム鉄は、
二価イオンの鉄が蛋白質に結合しておりそのまま吸収されます。
鉄分が多い食品
食品には非ヘム鉄とヘム鉄が含まれますが、
- 非ヘム鉄 : 植物性食品や乳製品に含まれる鉄
- ヘム鉄 : 動物性食品に含まれる鉄
ということで、
動物性食品に含まれるヘム鉄は体内へ吸収されやすいのですが、
植物性食品や乳製品に含まれる非ヘム鉄率は吸収率が低く、
吸収を高める食品と一緒に摂取して吸収率を高める必要があるのです。
吸収されやすいヘム鉄を含む食品
ヘム鉄を多く含む食品は動物性食品で、
- 肉
- 魚
- 貝類
などです。
鉄分を多く含むといえばレバーを思い浮かべますが、牛肉、豚肉、鶏肉にも鉄分は多く含まれ、牛肉や豚肉の赤身は吸収の良いヘム鉄が多く含まれます。
魚でも、マグロ、カツオ、イワシなどにヘム鉄が多く、あさり、赤貝、カキなどの貝類にもヘム鉄が多く含まれます。
一方、
大豆類、野菜類、海藻類などの植物性食品、卵、乳製品などに鉄分が多いのですが、非ヘム鉄です。
ほうれん草、小松菜、ブロッコリーなどの緑黄色野菜や、ひじき、青のりなどの海藻類にも非ヘム鉄が多く含まれています。
非ヘム鉄の吸収を高めるには、
- ビタミンCを一緒に摂る
- 蛋白質を一緒に摂る
ことが大事ですが、
ほうれん草、小松菜、ブロッコリーなどには赤血球の生成に必要な葉酸も多く含まれていますので積極的に摂って下さい。
また、豆類に含まれる鉄も非ヘム鉄ですが、酸素を運ぶヘモグロビンと鉄分を結びつける働きのある銅が含まれ、貧血の予防に効果的です。
今回のアメリカの研究グループは、
鉄分の過剰摂取で妊娠糖尿病リスクが増加する
との論文を発表しましたが、
鉄は妊婦や胎児にとって重要なミネラルで、
鉄が不足すると母体にも胎児にも悪影響を与えます。
医師から鉄不足でサプリメントの摂取を指示されたら服用する必要がありますが、
できるだけ食品から摂るように心掛けたらいかがでしょうか?
鉄分を含む食品を多く摂っても鉄の過剰摂取にはなりません。
サプリメントが心配であれば,
- 医師に相談する
- 食品からの摂取に切り替える
のが良いでしょう。
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