今日もご覧になっていただきありがとうございます。
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた けんぞう です。
糖尿病治療薬の開発を行っていた私が言うのも何ですが、
糖尿病の治療では食事療法と運動療法が基本なのです。
今日も科学的根拠に基づいた糖尿病関連の情報をお伝えいたします。
はじめに
歯周病は糖尿病の合併症だとも言われています。
歯磨きの回数が少ないと糖尿病になる、といわれるほどです。
糖尿病では歯周病を併発しやすく、歯周病は糖尿病を悪化させます。
歯周病を治すと血糖値が下がることは多くの研究報告があります。
歯周病と糖尿病はどんな関係にあるのか?
歯周病が糖尿病を悪化させる新たな理由が分かりました。
歯垢の沈着が歯周病の原因
歯周病というのは、歯垢(しこう、プラーク)の中の細菌によって歯肉(しにく、歯茎)が炎症や出血を繰り返し、やがては歯を支えている歯槽骨(しそうこつ)を溶かし、最終的に歯が抜けてしまう病気です。
厚生労働省による、平成23年度歯科疾患実態調査では、
- 45~54歳 : 約30%
- 55~59歳 : 約50%
に歯周病が認められたとしています。
(財)8020推進財団の、平成17年永久歯の抜歯原因調査において、
54歳以上の人で、歯を失う最大の原因は歯周病だとしています。
歯周病の原因は歯垢の沈着
歯周病の原因になるのは、歯垢ですが、歯垢は食事の食べカスだと思っている人が多いのですが、歯垢は歯菌や歯周病菌の塊で、1gの歯垢の中には約1,000億個以上の菌がいる、菌の塊なのです。
歯垢は、
- 約75% : 歯周病菌
- 約20% : 粘着物質(菌が作り出した多糖類のグルカンやフルクタン)
なのです。
歯磨きをサボったときに良く経験する歯の表面のネバネバが、菌が作り出したグルカンやフルクタンなどの粘着物質なのですが、この粘着物質は菌を唾液などから守るバリアーの役目をしており、バリアーの内側では菌が産生した酸によって歯の表面のエナメル質が溶かされ虫歯が作られているのです。
さらに、歯垢を放っておくと唾液からのカルシウムやリンが沈着して硬くなり、歯石となって歯ブラシでは取り除くことができなくなってしまいます。
歯垢の中に含まれている細菌は歯周病を起こすのですが、最近の研究では、歯垢の中の一部の細菌は心臓や脳などの病変部でも発見されており、歯周病は口の中の病気だけではなく、心臓や脳の病気の原因にもなっていることが明らかになってきています。
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歯周病は糖尿病の合併症
歯周病は糖尿病の合併症だといわれ、このサイトでも糖尿病と歯周病については度々、書いてきました。
詳しく見る ⇒ 歯磨き回数が少ないと糖尿病になる
詳しく見る ⇒ 歯周病を治すと糖尿病も治る
長年、歯周病と全身疾患の関係を研究してきた新潟大学歯学部の山崎和久教授は、
糖尿病患者が歯周病を発症するリスクは正常者に比べ約3倍も高い
と報告しています。
さらに、
糖尿病患者では、この歯周病のリスクが増加するだけでなく、歯周病の程度もひどくなると述べています。
歯周病は血糖値を上げる
歯周病は糖尿病の合併症だとする一方で、歯周病が原因で糖尿病になっているとする多くの論文もあるのです。
糖尿病が歯周病を悪化させるのと同様、歯周病により糖尿病も悪化する
というのです。
福岡県久山町で行われた大規模疫学調査では、
中~重度の歯周病患者は糖尿病予備群になる確率が10年間で2~3倍も高い
というのです。
これは、
歯周病患者ではインスリン抵抗性が増しインスリンの効果が弱くなり血糖値が上がる
からなのです。
新潟大学歯学部の山崎和久教授は、
歯周病でインスリン抵抗性が増す理由としては、
- 歯周病では正常の口腔内にはほとんど存在しない菌や炎症を誘発する物質が増加する
- 菌や炎症誘起物質は歯周ポケットから血管に入り全身に行き渡る
- インスリンが効果を示す組織で炎症が起きる
- 炎症はインスリンの作用を減弱させる
というのです。
さらに、
大量の歯周病菌が腸内環境を悪化させて血糖値を上昇させる可能性もある
と述べています。
動物を用いた実験で、
実験動物に歯周病菌を飲ませたところ、
- インスリンの効きが悪くなる
- 腸内細菌の分布バランスが変化した
ことが確認されています。
そして、細胞レベルの「肥満」が観察され、脂肪細胞や肝細胞で、肥満した動物と同じような変化が確認されたのだそうです。
肥満は炎症と同様に、インスリンの効果を悪くする大きな原因であるのです。
歯周病菌は腸内細菌のバランスを崩し、細胞レベルの隠れ肥満になる結果、インスリンの効果が悪くなり、血糖値が上がると考えられるのです。
なんと、
歯周病患者は、歯周病菌だけでも1日に10~100億個もの菌数を飲み込んでいるのだそうで、ゾッとしてしまいます、、、。
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歯周病の初期でも糖尿病に悪影響
歯周病による血糖値の上昇は歯周病のごく早期から始まるとと新潟大学の山崎教授は指摘しています。
歯槽骨が傷害されて歯がグラつくなどの症状が見られるのは歯周病がかなり進行してからですが、それまでには歯周病は余り自覚症状がないのです。
従って、自分が歯周病だとしても気付いていない人が多いのですが、その段階の歯周病でも既に血糖値に影響を与えているのです。
歯周病が初期の段階でも、血糖値の上昇が密かに進みつつあるのです。
糖尿病だと診断されたら、直ぐに歯科を受診して歯周病の有無を検査してもらう必要があります。
以前に、「歯周病を治すと糖尿病が治る」という話を紹介しましたが、歯周病を治療したらHbA1cが0.4%低下した例もあると山崎教授は述べています。
5つの臨床試験データを併合した成績から、歯周病治療を受ければ糖尿病ではHbA1cが0.4%下がることが明らかになっています。
中には、1%以上のHbA1c低下を報告する試験も含まれている。歯周病の治療だけでこれだけの血糖低下作用が期待できるのであれば、歯周病の治療を試みない手はない。
というのです。
「なた豆茶が歯周病に有効だとの記事も合わせてお読みください」
糖尿病の基本療法は食事療法です。
歯周病が進めば「偏食」が進み、「食事療法」を実行できなくなってしまう可能性があるのです。
歯周病が進むと歯茎の炎症や、歯のぐらつきにより柔らかいものしか食べられなくなってしまいます。
歯周病では、肉、魚介、食物繊維など、噛むのに力が必要な食材の摂取が減り、芋や穀物類を多く食べることになってしまいます。
糖尿病の食事療法では、エネルギー摂取量に占める炭水化物の割合を減らし、食物繊維や肉類を摂取できなければ、糖尿病治療の基本である食事療法が困難になってしまうのです。
いかがでしょうか、
- 糖尿病では歯周病のリスクが3倍高い
- 歯周病では糖尿病予備軍になるリスクが3倍高い
ことが明らかになっています。
歯周病は糖尿病の合併症と言われますが、歯周病は糖尿病の原因でもあるのです。
さらに、歯周病で歯を無くすことは痴呆症の原因でもあるのです。
定期的な歯科検診は非常に重要なのです。
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