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    Categories: 糖尿病とは糖尿病と睡眠

不眠の女性は糖尿病のリスクが高い

糖尿病の人は不眠に悩む人が多く、糖尿病の40%は睡眠に問題があると言われています。

糖尿病で不眠になるのではなく、不眠が糖尿病の原因だとして注目されています。

そして、不眠の女性では糖尿病のリスクが特に高い研究結果が報告されました。

不眠の女性は糖尿病になりやすい

糖尿病と不眠との関係が次第に明らかになりつつありますが、慢性的に睡眠不足の女性は糖尿病になりやすいという研究結果が報告されました。

この研究は、アメリカのハーバード大学の公衆衛生大学院公衆衛生学部のYanping Li氏らの研究グループが行ったもので、1月28日のDiabetology(糖尿病)という雑誌に投稿されました。

Association between sleeping difficulty and type 2 diabetes in women.

  詳しく見る ⇒ Diabetologia. 2016 Jan 28(英文論文)

 

研究グループは、2000~2010年と2001~2011年の看護師健康調査(Nurses’ Health Study;NHS)に参加したアメリカ人女性13万 3,000人のデータを解析したものです。

各10年間の追跡期間中に、約6,400人が2型糖尿病を発症しましたが、

  1. 睡眠に関する問題が1つの女性は糖尿病の発症リスクが45%上昇
  2. 睡眠に関わる問題が2つの女性は糖尿病の発症リスクが2倍に上昇
  3. 睡眠に関わる問題が3つの女性は糖尿病の発症リスクが3倍に上昇

と、睡眠に関わる問題の数が増えるほど女性の糖尿病発症リスクが高まることが分かったのです。

ここでいう睡眠に関わる問題とは、

 

  • 入眠困難
  • 中途覚醒
  • 睡眠時間が6時間未満の慢性的な睡眠不足
  • 頻繁ないびき
  • 睡眠時無呼吸
  • 昼夜交代勤務

など、様々な睡眠に関わる問題ですが、それらの数が増えるほど糖尿病発症リスクが上昇するのです。

この結果について専門家は、

睡眠障害があると身体のホルモンバランスが崩れるため糖尿病のリスクが上昇するのは妥当な結果

だとコメントしています。

さらに、

  1. テレビ、パソコン、スマートフォンの操作に時間を費やすために良質な睡眠をとれていない
  2. 日中に活動し、夕方にはリラックスした時間を過ごし、夜は十分な睡眠をとる活動サイクルが崩れている
  3. 生活サイクルの乱れによってホルモンとインスリンの関連に乱れが生じ糖尿病や肥満の原因になる

と述べています。

不眠や睡眠不足は糖尿病の原因

最近の研究によって、糖尿病だから不眠になるのではなく、不眠だから糖尿病になるという考え方がはっきりしてきました。

不眠や睡眠不足は生活リズムを乱し、それによって、ホルモンバランスの乱れが生じ、糖尿病へと進むのです。

ホルモンのバランスが乱れると、インスリンの分泌が乱れたり低下し、同時にインスリンの聞き方が悪くなるインスリン抵抗性を引き起こすのです。

イスリン抵抗性が高まると、インスリンが分泌されても血糖値が低下しなくなるために、膵臓からさらにインスリンの分泌が必要になり、その結果、膵臓は疲弊してインスリンの分泌が止まってしまうのです。

前にもご紹介しましたが、Vgontzas ANらによる、不眠症と糖尿病との関係について調べた研究(Diabetes Care. 2009 Nov;32(11):1980-5.)でも、不眠により糖尿病のリスクが上昇することが報告されています。

研究グループは、1年以上にわたって不眠が続く、なかなか寝付けないなどの睡眠障害を持つ1,741人を、

  1. 正常群 : 睡眠時間が6時間以上
  2. 睡眠不足群 :睡眠時間が5~6時間 
  3. 不眠群: 睡眠時間が5時間以下

の3群に分けて糖尿病の発症を追跡調査したところ、

1年以上不眠が続いている人は正常な人よりも1.7倍も糖尿病になりやすいことが分かったのです。

研究グループは、慢性的な不眠症は糖尿病など代謝循環器系の疾患のリスクを高めるとコメントしています。

  詳しく見る ⇒ 睡眠不足や不眠は糖尿病の原因


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大阪市立大は糖尿病と不眠を解明

これもすにご紹介しましたので、お読みになられた方も多いかと思いますが、

大阪市立大学の稲葉教授らの研究チームは、糖尿病と不眠との関係を明らかにしています。

糖尿病で、血糖コントロールが悪化すると、

  • 睡眠の質が悪くなる
  • 不眠になる
  • 睡眠障害が早朝高血圧を引き起こす
  • 早朝高血圧は心血管障害を引き起こす

という関係にあることが明らかになりました。

  詳しく見る ⇒ 糖尿病と不眠の関係を解明:大阪市立大

多くの研究者が明らかにしているように、不眠は生活バランスやホルモンバランスの乱れを引き起こすのですが、

  1. 不眠は生活のリズムを乱す
  2. 生活リズムの乱れはホルモンバランスの乱れを起こす
  3. ホルモンバランスの乱れはインスリン分泌を乱す
  4. インスリン分泌を乱れは高血糖を引き起こす

ということで、糖尿病のリスクが高まるのです。

睡眠は時間ではなく睡眠の質

睡眠には、レム睡眠とノン・レム睡眠という二つの質の違う睡眠があることをお聞きになったことが有ると思います。

  • レム睡眠 : からだの眠り (睡眠の80%)
  • ノン・レム睡眠 : 脳の眠り (睡眠の20%)

ノン・レム睡眠は入眠後直ぐの睡眠第1相といわれる時間帯に多く、いわゆる熟睡状態で、身体も脳も休んでいます。

レム睡眠は夢を見ているような時間帯の水門のことで、身体は眠っていても脳は休んでいないのです。

大阪市立大学の研究チームは、

糖尿病患者の睡眠の質を測定し、

糖尿病患者では、

  1. 入眠直後のノン・レム睡眠が短縮している
  2. 脳を休息させる深睡眠である徐波睡眠が短縮している

ということも明らかにしています。

 

睡眠不足と不眠との判別は非常に難しく個人によって異なります。

1日8時間寝なければ体調が悪いという人もいますが、睡眠時間は4時間で大丈夫という人も少なくないからです。

毎日の睡眠時間が8時間の人を4時間しか寝かせないで、翌朝に血糖値を測定すると、睡眠時間が8時間の時よりも血糖値が高く、インスリン抵抗性も高まっていたという実験結果があります。

  しかし大事なことは、睡眠不足と不眠とは違うということです。

睡眠は時間ではありません。どれだけ質の高い睡眠をとるかが重要なのです。


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